仮縫い
2008年05月14日
モノゴコロがついた頃には、
既に母が仕立て屋みたいな洋装店(洋装店みたいな仕立て屋)を経営してたので、
幼い時から母がお客様の仮縫いをしているのをずっと見てきました。
だが記憶の中でも母にマンツーマンで教えて貰ったことがない。
うちのスタッフ達には少しずつ教えていますよ。
自分が20年近くも仮縫いをしてきた中で、
自分の仮縫いの極意というか特徴について考えてみた。
極意と言っても基本的な簡単な補正から、
ちょっとだけレベルの高いものまであるので、
当然ながら様々なんですが、ある程度まで進んでいくと
基本を少しだけずらしていくことがオリジナリティーのある
パターンやデザインの始まりであることにきずく。
それは自分が良く出来たなぁと思う仮縫い補正やフィッティングなどは、
基本通りのサイジングやパターンではないことがよくあるからだ。
基本的な教えを自分流にアレンジしていくと
それはその人なり手法に変わるのですが、
勿論基本が大事なことに間違いはないのです。
今になって何となく気づいていたことを辿りながら、
仕立ての学校時代の教科書を見ると、
やはり納得出来る正しいと思える理論とちょっと笑えてくる理論に遭遇する。
教科書に書いてあるような理論の服はハッキリ言ってどこにも売ってないし、
仮にその服を買ったとして満足するお客様は限りなく少ないと思われます。
教科書通りに仮縫いするとまずオーダーしたようなスーツには見えないし、
既製品にも見えないようなへんな感じになります。
前にあるデザイナーの方と仕事をしていた時に、
「袖はいせこみを少なくして直線的なラインで…」と言うので、
「初めて作りましたよ!な感じの袖」で良いのかな?と僕が訊ねると、
「そうですねぇ~そうして下さい(笑)」と言われた。
結局実はどんな感じになるのかと半信半疑ではあったのだが、
請け負いな仕事だから責任を持ち直して作ってみると、
それがなかなかカッコ良かったし、
外国人の有名なクリエイターやデザイナーの方にまあまあ売れたみたいでした。
振り返って見るとその時期は、クラシコイタリア全盛な時代だったので、
イセコミ量の多い袖が流行っていたのだが、
あえて直線的な雰囲気を加えることによって、
斬新なカッコ良さに繋がったんだと僕の中では理解しています。
ちょっと極端な話をしましたが、
オーソドックスなスーツ=教科書的基本的なスーツでは必ずしもなく、
当店の既製品のモデルのオリンピアやバンクなどにしても
絶妙にバランスを崩したパターンです。
オリンピアは肩幅を狭くしても胸回りに空間を作り、
袖回りはゆとりをとりながら、
肘から袖口を細くしてスリム感を持たせることに成功した。
一般の体型からアスリートの方まで幅広くカバー出来る。
またバンクはスリムな都会人にストリートなサイジングの
タイトなスーツスタイルを提案しました。
今の時代の銀行やその関連する場所では、
あっさりとしたバンカーストライプの1つ釦や
優しいグレーのスーツが良く似合うと思います。
胸ポケットに分厚い財布を入れたダブルのスーツが
金融ではないような気がして考えました。
仮縫いに極意とはこれ如何に
自分で研究していくことなんでしょうね
仮縫いを見せてくれたが、決して何も教えなかったうちの母親が、
やはり僕の仮縫いの師匠なんでしょうかね。

