06 土工事|段取り
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杭工事の終わりごろ、掘削の打合せ前の詰所で。
杭もそろそろ終わりですね。根切り幅の余掘りって、とりあえず広めに掘っておけばいいですよね?
広く掘るほど、残土も埋戻しも増えるんだ。逆に狭いと、中で型枠も防水もできなくなる。
幅は中で作業するやつに聞いとけ。掘ってから狭いって言われても、もう遅いぞ。
メモしました! じゃあ、何mm取ればいいんですか?
積算の決まりと、僕が現場で取っていた幅は分けて話すね。そのあと、職人さんとの相談と隣地が近いときの話をしよう。
根切り幅は「基礎の外形+余掘り」で決まります。僕の現場では、深さ2m程度なら基礎の面から600mmを取り、そこから45°で法(のり)を付けていました。ただ、最後に幅を決めるのは、その中で作業する職人さんと、隣地までの距離です。
この記事で分かること
- 積算の「余幅」と、現場で取る余掘り幅の違い
- 僕が取っていた余掘り(600・45°、作業するなら800)と、安衛則の掘削面の勾配との関係
- 職人さんとの決め方、隣地が近いとき・基礎が大きいときの判断
根切り幅は「基礎の外形+余掘り」で決まる
根切りは、基礎や基礎梁をつくるために地面を掘ることです。基礎の外形ぴったりに掘っても、型枠を組む人が入れないので、外側に余分に掘ります。この余分が「余掘り」で、根切り幅=基礎の外形+両側の余掘りと考えると整理しやすいです。
ややこしいのは、似た言葉が2つあることです。積算(数量の計算)では「余幅」という決まった言い方と標準値があり、現場では職人さんと「余掘り何mm」と話します。数量を拾うときの幅と、実際に掘る幅は、同じとは限りません。
積算基準の余幅で根切り幅を計算する
まず一般則です。国土交通省の「公共建築数量積算基準」(令和5年改定)は、根切りの数量を、計算上は根切りの側面を垂直とみなし、根切り面積と根切り深さによる体積とする、としています。根切り面積は、基礎の底面の各辺に「余幅」を加えて求めます。
余幅の定義は、作業上のゆとり幅に、土質と根切り深さに応じる係数を乗じた法幅(根切り基準線における根切りのひろがり)の1/2を加えた幅です。標準の値は次の表のとおりです。
| 項目 | 標準の値 | 補足 |
|---|---|---|
| 作業上のゆとり幅 | 0.5m | 土間・犬走り等は0.1m |
| 法幅の係数(根切り深さ1.5m未満) | 0 | 法を設けない |
| 法幅の係数(1.5m以上5.0m未満) | 0.3 | 指定のない場合の普通土 |
| 法幅の係数(5.0m以上) | 0.6 | 指定のない場合の普通土 |
| 山留め壁と躯体の間の余幅 | 1.0m | 山留めがある場合 |
出典:国土交通省「公共建築数量積算基準」令和5年改定 第3編 第1章 第2節 2(2)3)。たとえば根切り深さ1.5m未満なら係数が0なので、余幅は作業上のゆとり幅の0.5mだけになります。コンクリートや型枠の数量と一緒に拾うなら、コンクリートの数量拾いの記事も合わせて読んでください。
僕が現場で取っていた余掘り幅:600・45°、作業するなら800
ここからは僕の現場での話です。深さ2m程度の根切りなら、基礎の面から600mm離したところを根切り底の端にして、そこから45°で法を付けて掘っていました。45°なので、深さ2mなら上端は基礎の面から600+2,000=2,600mm外まで広がります。
基礎の外側で型枠を組む、防水をする、という作業があるなら、深さ1.5mを超えるところでは800あると間違いない、というのが僕の感覚です。どちらも一般則ではなく、僕の現場での目安です。最終的な幅は、次の節のとおり職人さんと決めます。

45°と安衛則の掘削面の勾配
45°は、法令の数字をそのまま使ったものではありません。労働安全衛生規則の第356条は、手掘りで地山を掘るときの掘削面の勾配の上限を、地山の種類と掘削面の高さで決めています。砂の地山と、発破等で崩れやすくなっている地山は、第357条で別に決められています。
| 地山の種類 | 掘削面の高さ | 勾配の上限 |
|---|---|---|
| 岩盤または堅い粘土からなる地山 | 5m未満 | 90度 |
| 岩盤または堅い粘土からなる地山 | 5m以上 | 75度 |
| その他の地山 | 2m未満 | 90度 |
| その他の地山 | 2m以上5m未満 | 75度 |
| その他の地山 | 5m以上 | 60度 |
| 砂からなる地山(第357条) | — | 35度以下、または高さ5m未満 |
| 発破等で崩壊しやすい地山(第357条) | — | 45度以下、または高さ2m未満 |
出典:労働安全衛生規則 第356条(掘削面のこう配の基準)・第357条。いずれも手掘りの場合の規定です。数字だけ見ると、僕の45°はこの表の上限以内に収まります。ただ、上限は地山の種類で変わるので、「45°なら必ず大丈夫」ではありません。第355条は、掘る前に地山の形状・地質・地層、き裂・含水・湧水・凍結、埋設物などを調べ、その結果で掘削の時期と順序を決めるよう求めています。
安全に関わるところ
法面の勾配と山留めの要否は、地山の調査結果で決まります。現場監督の判断で済ませず、監理者に報告して、必ず構造設計者・監理者(山留めは専門業者も)の指示を仰いでください。
余掘り幅は、作業する職人さんと一度相談して決める
余掘りの幅は、そこで作業する職人さん、たとえば型枠屋さんと一度相談して決めています。中で動くのは職人さんなので、必要な幅をいちばん知っているのも職人さんです。掘る前に「この幅で作業できますか」と聞くだけで、掘り直しや「狭くて組めない」を防げます。
相談するときは、掘削の打合せの前に、基礎伏図に余掘りの線を入れておくと話が早いです。図面に線があると、土工さんは掘る位置が分かり、型枠屋さんは作業できるかを判断できます。重機の配置や手すり・はしごの段取りは掘削の段取り(重機・手すり・はしご)の記事にまとめています。
掘る前に、型枠屋さんに先に聞いとけよ。テツさん(職長)
隣地が近いときは、境界に矢板を打って垂直に掘る
45°で法を付けると、深さ2mでも上端は基礎の面から2,600mm外まで広がります。隣地が近いと、それ以上は掘れません。そういうときは、分かっていれば敷地境界に矢板を打って、垂直に掘っていました。
Konyの現場メモ
敷地境界に打った矢板は、抜かずに埋め殺しにしました。隣地が近いと前もって分かっていれば、矢板を打ってから垂直に掘る段取りが組めます。
矢板などの山留めは、土の崩れを止める仮設備で、深さや地山によって必要な仕様が変わります。山留めの要否と仕様は、専門業者に検討してもらい、構造設計者・監理者に確認してください。積算の上でも、山留め壁と躯体の間の余幅は1.0mが標準と、法を付ける場合とは別に決められています。
基礎が大きいときは総掘り|条件別の根切り幅の決め方
基礎が大きく、塊のような形の建物では、杭と杭の間に土を残せないことがあります。そういうときは、基礎ごとに掘るのではなく、全体を掘る「総掘り」になりました。積算基準も、根切りを基礎・基礎梁の構造により「つぼ・布掘り」と「総掘り」に分けています。
ここまでの判断を、条件別に並べると次のようになります。数値の列は、積算基準と僕の現場での目安を分けて書いています。どの条件でも、最後は確認先の列の人と決めてください。
| 条件 | 取り方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 浅い(根切り深さ1.5m未満) | 積算:余幅0.5m(法の係数0)。現場の幅は作業内容で決める | 作業する職人さん |
| 深さ2m程度・外側の作業が少ない | 僕の現場:基礎の面から600、そこから45° | 職人さん、地山の調査結果 |
| 深さ1.5m超・型枠や防水の作業あり | 僕の現場:800あると間違いない | 型枠屋さん・防水屋さん |
| 隣地が近く法を付けられない | 敷地境界に矢板を打ち、垂直に掘る(矢板は埋め殺し) | 専門業者・構造設計者・監理者 |
| 基礎が大きく杭の間に土を残せない | 総掘り | 構造設計者・監理者 |
準備物チェックリスト(印刷して使う)
掘削の打合せの前に通します。現場によって要らないものは消して使ってください。
- ☐ 断面図で根切り深さ(基礎の底の深さ)を確かめた
- ☐ 基礎伏図に余掘りの線(基礎の面から何mmか)を入れた
- ☐ 余掘りで作業する職人さん(型枠・防水など)と幅を決めた
- ☐ 法の上端が敷地境界・隣地にかからないか、図面上で確かめた
- ☐ かかる場合、矢板・山留めを専門業者・構造設計者・監理者と協議した
- ☐ 地山の調査結果(地質・湧水・埋設物など)を確かめた
- ☐ 杭の間に土を残せるか(総掘りになるか)を確かめた
- ☐ 重機・手すり・はしごの段取りを決めた
根切り幅は、広ければ安心というものではなく、残土・埋戻しと作業のしやすさの釣り合いで決まります。積算の余幅と僕の600・800は別物として、掘削の打合せの前に、基礎伏図に余掘りの線を入れて型枠屋さん・土工さんと幅を決めてください。掘ったあとは、捨てコンと砕石地業の段取りに進みます。
参考にした基準・資料
- 国土交通省「公共建築数量積算基準」令和5年改定(最終改定 令和5年3月29日 国営積第8号)第3編 土工・地業 第1章 土工 第2節 2 土の処理の計測・計算(2)根切り 3)余幅
- 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)e-Gov法令検索(2026年10月15日確認)第355条(作業箇所等の調査)、第356条(掘削面のこう配の基準)、第357条
基準の数値は版によって変わることがあります。実際の工事では、特記仕様書と最新版の基準を確認してください。
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