現場監督が直面する「2024年問題」とは
最近の現場で増えているのが、残業を減らせと言われつつ、工程は短縮・品質は維持という矛盾。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が全面適用され、現場の回し方は根本から見直しが必要になりました。狙った検索キーワード:建設業 2024年問題、時間外労働上限、36協定、週休二日、工期短縮、施工管理。
原則は「月45時間・年360時間」。特別条項付き36協定でも「年720時間以内」「1か月100時間未満(休日含む)」「2〜6か月平均80時間以内(休日含む)」「月45時間超は年6回まで」。災害応急・復旧では例外もありますが、通常工事はこの枠内で回すのが前提です。
時間外上限に対応する実務:工程・契約・現場運営の三位一体
36協定の設計と現場の運用を一致させる
36協定は「署名して終わり」ではありません。工程表・出来高計画・夜間作業計画と結びつけて初めて機能します。まず、月次の出来高と必要人工を算出し、月45時間内で回る山谷の少ない平準化工程へ再編。特別条項は「雨休・検査集中週」などピークが不可避な月に限定し、年6回を厳守。協力会社にも同等の枠での就労計画を共有し、日報を原票として毎週集計する体制を作ります。
工期短縮のカギ:プレファブ化と日中化
夜間頼みの段取りは限界。効果が大きいのは、(1)ユニット化/プレキャスト化、(2)同時並行の増加、(3)検査・打合せの遠隔化です。例えば、プレキャスト階段を採用すれば、型枠1基あたり約12〜16人工の作業が8〜10人工まで圧縮。天井内はダクト・配管・電気のユニットラック化で1フロアあたり1〜2日短縮。ICT建機とドローン測量で出来形確認を日中に前倒しし、夜間墨出しを廃止。遠隔臨場は監督・設計・発注の移動ロスを削減し、1回あたり60〜90分の削減効果が現場感覚です。
事例・数字:S造5Fオフィス(延べ2,000㎡)の再設計
前提:延べ2,000㎡、基準階400㎡、スパン8.0m、天井高2,700mm。従来工程180日、残業60〜70時間/月。
- 躯体:コンクリート打設を日中2ポンプ体制(80m³/日)へ。調達を午前・午後で振り分け、打設後の養生・片付けを17時までに完了。
- 階段:プレキャスト階段10基(@40万円)=400万円。型枠・配筋・打設の削減で約260万円相当の労務・副資材を圧縮。ネット増140万円。
- 内装:天井設備ユニット化(600×600mmグリッド)。1フロア配管・ダクト・電気の仕込を3日→2日に短縮。吊ボルトピッチ900mm、支持金物を統一。
- 検査:遠隔臨場を週2回導入。監督・設計の移動時間削減で月12時間削減。
結果:総工程180日→152日(−28日、約15%短縮)。月平均残業60h→35h。週休二日(4週8休)を維持。追加コストはプレキャスト差額・ユニットラック等で+240万円。一方、共通仮設(延長月数圧縮)−150万円、労務・諸経費−120万円、工期短縮による間接費削減−80万円で、トータル−110万円の改善。安全面でも夜間作業ゼロでヒヤリハットが月6件→2件に減少。
数量の拾い方が変わるポイント
ユニット化を前提に拾い方を変えると、見積・工程の精度が上がります。例えば天井内ユニットラックなら、ラック長さ=通り芯長(m)×本数+立上り分。600×600mm天井なら1フロアグリッド枚数=有効面積(㎡)÷0.36。配管はメイン150A、副50A中心に、継手数は支持間隔(1.8m)で割り当て。これを出来高計画に直結させ、月45時間の残業枠内で日当たり進捗(㎡/日、m/日)を設定します。
発注者・協力会社との契約面
週休二日と残業上限の実現には契約の裏付けが要点です。工期設定ガイドラインに基づき、(1)週休二日を前提にした工程、(2)ユニット化に伴う材料承認前倒し、(3)遠隔臨場の実施合意、(4)賃上げ・労務単価の改定反映、を特記に明記。週休2日推進工事であれば、出来高払いとペナルティ条件を週休維持に連動させるのが効果的です。
チェックリスト:週休二日・月45時間を守る段取り
- 36協定:原則枠+特別条項の回数・期間を工程表に紐づけ済みか
- 出来高:週単位で㎡/m/本数に分解し、日中完結のタスクに再編したか
- ユニット化:プレキャスト・モジュールの承認図・製作リードタイムを逆算済みか
- 物流:資材搬入時間帯を午前・午後で枠取り、残業ゼロ搬入に切替えたか
- 検査:遠隔臨場の端末・通信と記録方式を標準化したか
- 人員:多能工化(軽天+設備支持、電気+計測)でピーク人員を平準化したか
- 帳票:日報→週報→月報へ自動集計し、超過兆候を週次で可視化しているか
- 安全:夜間作業を原則ゼロ化し、照度・動線・搬入計画を日中仕様に更新したか
最新ニュースの押さえどころ
2024年度以降、国交省は「週休二日・適正工期」を評価する入札・工事成績運用を強化中。BIM/CIM、ICT施工、遠隔臨場の活用は加点や書類簡素化に直結するケースが増えています。自治体でも共通仮設費や労務費の補正が広がっており、見積段階での明記が実務の肝です。
まとめ:夜間頼みからの脱却が最短距離
「時間外上限=足かせ」ではなく、工程の平準化とユニット化で生産性を底上げする好機です。数字で言えば、延べ2,000㎡クラスなら、ユニット化+遠隔臨場+2ポンプ打設で月残業−25h、工期−15%は十分に射程。まずは来月の出来高計画を日中完結に組み替え、36協定と工程を一本化。発注者と週休二日・遠隔臨場・適正工期を合意して、現場のリズムを「昼の高効率」へ。これが2024年問題を乗り切る、現場監督の実務解です。
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