施工管理向けタイル工事数量拾い術

最近の現場で増える「タイル数量のズレ」をどう防ぐ?

仕上げ工事の中でも、タイル工事は「数量拾い」の精度でコストと工期が大きく揺れます。特に300角・600角の床タイルは、目地幅や実寸、割付の取り方で枚数と材料ロスが数%単位で変動。見切り金物や巾木、接着剤・目地材の拾い漏れも起きがちです。本稿では「タイル工事 数量拾い」「タイル 施工管理」「タイル工事 見積」の検索キーワードで探している方に向けて、実務で使える拾い方・歩掛・注意点を具体的にまとめます。

数量拾いの基本手順とポイント(床タイル300角を例に)

1. 図面から面積を拾う:控除・追加は粒度を決める

床仕上げ図・平面詳細図・断面詳細を突き合わせ、仕上げ範囲を色分け。開口やピットは1.0㎡未満は切り捨て、1.0㎡以上は控除など現場ルールを先に決めるとブレません。巾木タイルの有無、見切り金物(L=3,000mm定尺など)の位置も合わせてマーキングします。

2. 割付で「モジュール」を確定する

タイルは呼称300×300でも、実寸297×297が一般的。目地幅3mmならピッチ300mmで、1㎡あたり約11.11枚(=1/0.3/0.3)。ただし実寸が298や296の場合もあるため、仕様書・サンプルで実測し、目地幅(2〜5mm)を決定後に枚数を出します。柱型・壁際の端数割り(半端タイル)をどちらに寄せるかでロス率が変わるため、通り芯基準で中心合わせか、出入口側を見た目優先で決め、図上で1スパン分は割付を引いておくのが安全です。

3. 材料ロス率の設定

ロスは平場で3〜5%、斜め貼り・小割りが多い場所で7〜10%が目安。柱周りやR壁が多い場合は事前に+2%を上乗せ。エレベーターホールやエントランスなど見切りが多い部位ほどロス増を見込みます。

4. 付帯材の拾い(見落とし注意)

・接着剤(弾性またはセメント系):3mmクシ目で約3.0kg/㎡、5mmで4.5〜5.0kg/㎡。
・目地材:300角・目地3mmで約0.5kg/㎡。濃色は余剰を多めに。
・見切り金物・ノンスリップ:開口・段差・端部の周長で拾う(定尺3,000mm)。
・巾木タイル:壁周長×巾木高さで㎡換算(例:高さ100mm→0.1m換算)。

5. 歩掛と人工・機材

300角床タイルの一般的歩掛は、1班(職長1+手元1)で40〜60㎡/日が目安。下地調整が多い場合は30〜40㎡/日に低下。機材はカッター、撹拌機、レベリング治具、レーザー、吸盤などを想定。養生は貼り付け翌日以降、通行荷重を見て段階開放します。

事例で学ぶ:数量・コスト・工期の試算

【条件】オフィス1階床:平場180㎡、300角タイル(実寸297)、目地3mm、平滑下地、見切り金物は出入口2カ所、巾木タイル高さ100mm、周長は60m。
・枚数:180㎡×11.11枚/㎡=約2,000枚。ロス5%→約2,100枚発注。
・接着剤:180㎡×3.0kg=540kg。20kg/袋→27袋。予備5%→29袋。
・目地材:180㎡×0.5kg=90kg。5kg/袋→18袋+予備2袋=20袋。
・見切り金物:出入口幅各1.6m×2=3.2m→3,000mm定尺×2本(余り使用)。
・巾木タイル:周長60m×0.1m=6㎡。ロス3%→6.2㎡。

【コスト想定(概算・地域差あり)】
・タイル材料:2,100枚=約189㎡換算(0.09㎡/枚)→189㎡×2,800円/㎡=約529,200円。
・接着剤:29袋×4,400円=127,600円。
・目地材:20袋×1,800円=36,000円。
・金物:2本×5,500円=11,000円。
・巾木タイル:6.2㎡×3,200円=19,840円。
・施工手間:床180㎡×4,500円=810,000円/巾木6.2㎡×5,000円=31,000円。
・下地調整(軽微):180㎡×1,000円=180,000円。
合計概算:1,745,640円(税別)

【工期】
・貼り付け:1班50㎡/日→床180㎡で約4日。巾木別途1日。養生・クリーニング1日。
・合計:6日+予備1日(天候・搬入調整)

数量拾いチェックリスト(現場用)

  • タイル実寸・目地幅をサンプルで確定したか(297/298/296の差を確認)
  • 割付図を1スパン分でも作図し、端部の半端寸法を確認したか
  • 開口・スリット・段差・R壁のロス上乗せをしたか(+2〜5%)
  • 接着剤・目地材の使用量を目地幅とクシ目で補正したか
  • 見切り金物の定尺取り(3,000mm)と端部キャップを拾ったか
  • 巾木タイルの周長・高さ・入隅/出隅役物を拾ったか
  • 養生材・保護シート(㎡あたり単価)を計上したか
  • 歩掛(㎡/日/班)と班数から工期を逆算し、搬入計画に落としたか
  • 検査モック(1㎡)で仕上りと清掃性を事前確認したか

施工方法のコツと注意点

割付は「見える側優先」かつ通り芯基準

エントランスや通路の見せ場は目地を通すのが鉄則。扉中央・柱芯に目地を合わせ、半端は壁側へ逃がす。斜め貼りはモジュールが崩れやすいので、基準線をレーザーで必ず通す。

下地調整は1回で終わらせない

±3mm/2mを超える不陸が多い場合、軽量モルタルで先行調整→接着剤厚で微調整の二段構え。無理に接着剤だけで吸収すると空洞・剥離の原因に。

材料ロットは「合番」で揃える

色ブレ対策としてロット番号を揃え、フロアや区画ごとに使い切る。予備は同ロットで3〜5%確保し、竣工時の差し替えに備える。

まとめ:明日から使えるTips

  • 数量拾いは「実寸×目地幅×割付」で決まる。サンプル確認をルーチン化。
  • ロス率は平場3〜5%、複雑部7〜10%。根拠をメモに残す。
  • 接着剤・目地材はクシ目と目地幅で再計算。袋数まで割り戻す。
  • 歩掛は40〜60㎡/日/班をベースに、下地条件で±20%補正。
  • 見切り・巾木・養生の拾い漏れがコスト超過の温床。周長ベースで必ず拾う。
  • 割付図は最低1スパン作図。現地通り芯に墨出ししてから着手。

「タイル工事 数量拾い」は慣れればパターン化できます。上記の手順書をそのまま現場のチェックリストに落とし込み、見積・工程・発注を一気通貫で回すのが施工管理の近道です。

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