雨天時の外壁工事で起きる典型トラブル
ここ数年、突発的な豪雨や長雨で「外壁工事が進まない」「シーリングが流れた」「塗装が白化した」という相談が増えています。現場監督・施工管理の悩みは、工程遅延と品質低下の同時発生。特にサイディングのシーリング、ALCの目地処理、モルタル・塗装など湿式工程は、雨天時の判断と対策がダイレクトに効きます。本稿では、雨天時 外壁工事 対策を“止めない施工管理”の視点で掘り下げます。
施工管理の要点(判断基準と手を打つ順)
Go/No-Goの気象・含水率基準
まずは「やる・やらない」を数値で決めるのが肝。経験則に依存しすぎないこと。
- 降雨:小雨でも表面が濡れる場合は湿式工程(シーリング・塗装・モルタル)は基本中止。予報で1mm/h以上が連続する場合も原則見送り。
- 湿度:相対湿度85%以上は塗装・シーリングの硬化遅延と白化リスクが高い。
- 気温:5℃未満は硬化不良。冬季は露点差を確認(表面結露が起きる条件は避ける)。
- 下地含水率:木下地8〜12%以下、ALC・モルタルは表層含水率6%目安。赤外線水分計やピンタイプで測定。
- 風速:10m/s超は足場・養生の安全リスク。外壁施工は原則中止。
これらを朝礼前に「気象API+現場計測」で見える化。No-Go判断なら、即座に屋内工程へ切り替えるプランBを発動します。
養生・仮設の工夫(足場・テント・送風)
外壁工事を完全に止めないための現実解は「仮設で環境を作る」こと。
- 足場メッシュ+防炎シート二重張り:吹込み雨の侵入を約50〜70%低減。ファサード風圧を考慮し、ジョイントは重ね200mm、端部はタイバンド300mmピッチ。
- 仮設テント屋根(軒先延長型):庇の短い面で有効。軒出600mm追加でもシーリング目地の直接濡れを大幅抑制。
- 送風機+除湿機:密閉養生内でRHを70%以下に制御。12畳相当(50m³)に1台目安。温湿度・露点をデータロガーで監視。
- 加熱養生(赤外線ヒーター):下地温度を+5〜10℃。ただし過加熱で塗膜にピンホールが出るため距離は600mm以上を確保。
ポイントは「濡らさない」「乾かす」「汚さない」を同時に回すこと。足場の水切り(踏板の勾配1/100)やドレン確保も忘れずに。
工程調整とプレファブ化で稼ぐ
雨を避けるだけでは工程は縮まりません。発注・段取り段階から「雨に強い工程」を組むのが施工管理の腕所。
- 乾式化:モルタル塗り外壁を最小化し、サイディング・ALCパネル+シーリングに寄せる。
- 先行加工:金物穴あけ、開口役物のカットを工場・倉庫で前倒し。現場は「張るだけ」。
- シーリング先行の面分け:南・西面を優先、午前中に充填→午後は室内や下屋配下で別作業。
- 可変工程表:雨天時プランBとして、天井下地・設備配管・内装下地をいつでも差し替え可能に。
事例:1,000㎡サイディング現場の梅雨対策
延床2,800㎡、外壁サイディング1,000㎡、周長120m・高さ10m(足場正味面積約1,200㎡)の現場。梅雨時期(6月)に外壁張り・シーリング・上塗りを計画。
- 対策仮設:足場二重シート1,200㎡×220円/㎡=264,000円/週
- 仮設テント屋根:軒先延長120m×1,500円/m=180,000円
- 除湿機4台×3,000円/台日×5日=60,000円
- 温湿度ロガー2台×15,000円=30,000円(購入)
効果:通常の梅雨入り週は完全中止2〜3日が通例。本件では「午前中はRH80%、午後は70%」に制御。サイディング張りの生産性は通常80㎡/班日→養生下で50㎡/班日に低下したものの、停止ゼロで5日間継続。結果、6日分の遅延リスクを2日に圧縮。足場延長費(150,000円/週)と人件費(1班3名×2.5万円/人日×2日=150,000円)を勘案しても、仮設強化は費用対効果◎。
品質面:シーリング10mm×10mmの一般目地で、スキンタイム45分(23℃・50%RH)。養生下で硬化24〜48hを確保し、塗装上塗りは72h後に実施。含水率はALC表層で5〜6%を安定維持。白化・膨れのクレームゼロ。
雨天時 外壁工事 チェックリスト
- 気象確認:降雨レーダー、1〜3時間降雨量、風速、露点差
- 環境測定:相対湿度、表面温度、下地含水率(木8〜12%、ALC6%目安)
- 仮設:メッシュ+防炎シート二重、テント屋根、ドレン確保、結束間隔300mm
- 機材:送風機、除湿機、赤外線ヒーター、温湿度ロガー、赤外線水分計
- 材料:低温・高湿対応のシーリング材、速乾プライマー、雨養生用テープ
- 手順:乾式先行→シーリング→硬化確認→塗装(再塗装間隔は製品規定順守)
- 安全:足場スリップ対策(滑り止めマット)、風速10m/s超は作業中止、感電・漏電チェック
- 記録:施工写真(温湿度・含水率付き)、材料ロット、硬化時間ログ
よくあるNGと対処
・「小雨だから続行」→目地内に水が残り、シーリング付着不良。対策:エアブロー+アルコール拭き+十分乾燥。
・「養生はメッシュのみ」→吹込みで濡れ、朝一番の結露も影響。対策:防炎シート二重+朝は露切れ待ち30〜60分。
・「硬化前に上塗り」→塗膜膨れ・白化。対策:メーカー規定の再塗装間隔(例:23℃・60%RHで4〜6h、低温時は倍)を厳守。
まとめ:明日から使えるTips
- 朝礼で「降雨・RH・露点・風速・含水率」の5点を掲示し、Go/No-Goを即決。
- 足場二重シート+テント屋根を標準仕様化。費用は200〜300円/㎡で工程短縮に寄与。
- 除湿機とロガーを常設し、RH70〜75%をキープ。データは品質記録として活用。
- 屋内プランBを常備し、雨天切替に5分もかけない段取りを作る。
- シーリング・塗装は「濡らさない・乾かす・待つ」を徹底。再塗装間隔と硬化時間を見える化。
雨天時 外壁工事 対策は、単なる中止判断ではなく「環境を作って前に進める」施工管理。品質管理・安全管理・工程調整を一体で設計できれば、梅雨でも現場は止まりません。現場監督の一手で、工程短縮とクレームゼロを両立させましょう。
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