雨天時の外壁工事対策と工程管理術

現場で増える「雨待ち」問題をどうさばくか

梅雨〜秋雨の時期、外壁工事は「雨で止まる」が常態化します。サイディングのシーリング打替え、外壁塗装、モルタル補修はいずれも湿潤に弱い工程。工程表どおりに進めようとしても、降雨1〜2時間で足場は濡れ、下地の含水率が上がり、乾燥時間は倍増します。結果、人工の遊び・再養生・手戻りが発生。「雨天時 外壁工事 対策」を仕組みで回すのが施工管理の腕の見せどころです。

施工管理の勘所:天候リスクを工程表に織り込む

降雨予測の使い方とバッファ設定

降水確率だけでは不十分。1時間ごとの降水強度(mm/h)と露点を見ます。実務目安は以下。

  • 降雨強度1mm/h以上が連続2時間予報 → 含水率回復に半日〜1日バッファ
  • 気温−露点差(露点差)が3℃未満 → 表面乾燥遅延、シーリング打設は見送り
  • 気温5〜35℃の範囲外 → シーリング・塗装は原則中止(メーカー仕様を優先)

工程表には週あたり0.5〜1.0日の「天候バッファ」を固定で積み、クリティカルパス(足場解体日)手前にもう1日分の遊びを置くと安定します。

仮設足場と雨養生の工夫

足場メッシュだけでは吹込みを止められません。作業帯外側に「雨養生シート」を必要面のみ張る可動式が効率的です。

  • 局所雨養生:ジョイント部周長(m)+開口周り(m)を基準に必要枚数を拾う
  • 庇・水切り上部は逆流対策で立ち上がり300mm以上を確保
  • 排水はシート下端を勾配5/100で誘導し、溜まり水を作らない

仮設は「最小面の雨養生」で可動化し、晴れ間で一気に面を稼ぐのがコツです。

シーリング・塗装の雨天対策と乾燥時間管理

シーリング打替え:可使時間と露点管理

2成分と1成分で管理が変わりますが、共通の肝は「露点差」と「可使時間」。

  • 露点差3℃以上を確保(温湿度計と露点表で確認)。差が小さいとブリード・白化のリスク。
  • 可使時間(ポットライフ/スキンタイム)は30〜90分が一般的。降雨の気配がある日は短い製品に切替え。
  • 表面乾燥は24時間目安、完全硬化は3〜7日。降雨予報が48時間以内にある面は先行打設しない。
  • プライマーは「乾燥後1〜4時間以内に打設」の仕様が多い。雨でズレるなら打設日を分離。

製品の性能区分や施工条件はメーカー仕様書(例:建築用シーリング材のJIS区分)を必ず確認し、現場ごとに適合を再チェックします。

下地の含水率と施工可否の判定

塗装・シールの可否は見た目の乾きでは判断不可。含水率計が早い。

  • 窯業系サイディング:表面乾燥後もジョイント内部が湿る。含水率12〜15%以下で再開目安。
  • 木下地:18%以下を目安。20%を超える場合は送風+時間で下げる。
  • モルタル補修:打設後24〜48時間の養生、以降の塗装は含水率8〜10%以下を目安。

朝露対策として、朝一は南面高所から着手、北面・1階は午後に回すと乾きの待ち時間が減ります。

事例・数字で見る「雨天対策」の効果

対象:3階建・延床2,400m²、外壁1,200m²、窯業系サイディング、シーリング打替え780m、外壁塗装1,000m²。梅雨期4週間。

  • 対策なし:雨天停止6日、手戻り2日(白化・気泡補修)。実作業14日、総日数22日。
  • 対策あり(局所雨養生+露点管理):雨天停止3日、手戻り0.5日。実作業14日、総日数17.5日。
  • コスト:雨養生シート9尺×30枚+吊りバンド=約120,000円、可動取付人工8人工=約160,000円、計280,000円。
  • 効果:工期短縮4.5日。足場賃料8,000円/日×4.5日=36,000円、人工待機の削減(5名×2日×25,000円)=250,000円、手戻り材料・人工80,000円回避。合計約366,000円の効果。

純差益は約86,000円+工程安定化。足場解体の遅延リスクも低減できました。

数量拾いの勘所(雨養生・シーリング)

雨養生シート必要枚数の拾い方

  • 対象面の幅W(m)÷シート幅0.9m×高さH(m)÷1.8m=必要枚数の概算
  • 例:幅18m×高さ9m=18/0.9×9/1.8≒20×5=100枚(可動運用で1/3を用意→約34枚)

シーリング材料の拾い方(打替え)

  • 延長L(m)×目地断面(幅mm×深mm)から容量を算出。例:L=780m、10×10mm(100mm²)→総積算78,000cm³=78L
  • 廃材処理・プライマー・マスキングテープは各5〜10%上乗せ

雨天時 外壁工事 対策チェックリスト

  • 天気:1時間雨量・露点差・風速を前日と当日朝で確認
  • 工程表:週0.5〜1日分の天候バッファを明示、クリティカル前に予備日
  • 材料:可使時間の短い製品を雨期用に確保、ロット混在を避ける
  • 養生:可動式雨養生シート・テープ・排水経路の事前計画
  • 測定:含水率計・温湿度計・非接触温度計を常備
  • 手順:プライマー塗布→打設の間隔を仕様どおり管理、打設後48時間は散水厳禁
  • 記録:気象・測定値・写真を日報に残し、手戻り時の説明材料に

まとめ:明日から使えるTips

  • 露点差3℃ルールと含水率閾値(サイディング12〜15%、木18%)で「やる・やらない」を即断
  • 雨養生は面でなく「線(ジョイント)」に張る。可動化で材料を1/3に圧縮
  • 工程表に天候バッファを固定化し、足場解体の前に1日遊び
  • 可使時間の短いシール材を雨期の標準品に設定
  • 朝は南面高所から着手、北面は午後回しで乾燥待ちを削減

雨は止められませんが、天候リスクは管理できます。数字と道具で判断を標準化すれば、「雨待ち」のストレスは確実に減らせます。

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