導入|雨天時 外壁工事の“止める勇気”と“進める工夫”
最近の現場で増えている相談が「にわか雨で外壁がやられた」。塗装の白化、膨れ、シーリングの気泡・離れ、タイル目地の色ムラ——いずれも雨天時の判断と養生不足が原因のことが多い。とはいえ工程は待ってくれない。この記事では「雨天時 外壁工事 対策」を現場目線で掘り下げ、止める/進めるの線引き、外壁の雨養生、最新の気象ツール活用まで、施工管理の実務に落とし込む。
本論|判断基準・雨養生・最新ツール
施工条件の基準値(塗装・シーリング・タイル)
迷ったら数値で判断するのが施工管理の基本。
- 塗装:相対湿度85%以上は原則中止。素地温度が露点温度+3℃未満も中止(例:気温18℃・RH90%の露点は約16℃、素地17℃なら差1℃でNG)。5℃未満も中止。
- シーリング:被着体が濡れている/結露時は中止。降雨予報がある場合、打設後24時間は雨避け必須。プライマーのオープンタイムは2〜8時間(製品による)を厳守。
- タイル張り(セメント系接着):張り込み中の降雨は中止。初期硬化まで24時間は雨避け。目地詰めは張付け後24時間以降、降雨の見込みがない時間帯で。
- ALC外壁のシーリング目地:目地幅10mm前後、バックアップ材の選定(例:φ15発泡ポリエチレン)、雨天時は目地内含水が多く剥離リスク大のため中止。
「降雨量1mm/h超の予報→中止」など、社内ルールを数値化しておくと現場で迷わない。
外壁 雨養生の設計(シート・キャノピー・二重化)
飛散防止ネットだけでは雨は止められない。目的別に使い分ける。
- 面養生(垂直):養生ポリ0.15mmをネット内側に縦連続で張る。重ね幅は最小100mm、上下は胴縁で押さえ、ハトメ+結束バンドで離脱防止。二重張りが効果的。
- 局所養生(作業帯):開口部やシーリング打設箇所には張り出しキャノピー(単管+コンパネ+防水シート)。出幅600〜900mmで雨だれを逃がす。
- 排水計画:足場最下段に仮設樋や水返しを設け、跳ね返りで仕上げが汚れない流路を確保。
- 換気:密閉すると結露→塗膜白化。上部に50〜100mmの逃しを設け、風下側を開放気味に。
最新ニュース・ツール活用(ナウキャスト/XRAIN)
段取りは天気の精度で決まる。気象庁「高解像度降水ナウキャスト(250m格子)」や国交省のXRAIN(レーダ雨量)を使えば、1分〜5分更新で直近1〜2時間の降雨強度が読める。前日15時・当日6時・作業開始前・午前午後の切り替え時に必ず確認。シーリングや上塗りは「降雨予想0〜0.5mm/hの2時間窓」を狙って組むと歩留まりが上がる。働き方改革で土曜振替が難しい今、天気で勝つ計画が工程短縮の鍵だ。
事例・数字で見る雨天対策の効果
案件:RC造8F・L=50m・H=24m、外壁タイル+シーリング、総外装面積約1,200㎡。梅雨入り直後、降雨予測多め。
- 計画:外壁仕上げ20日、足場延長費200,000円/週。
- 雨養生設計:養生ポリ0.15mm(W=1.8m×L=50m)をネット内側に二重張り。必要縦枚数=50m÷1.8m≒28枚。二重で56枚。
- 材料数量:1本で長さ50m→高さ24mに2本分切り出し可。必要本数=56枚÷2=28本。単価1,800円/本→材料約50,400円。
- 人工:張り・撤去歩掛0.10人工/枚×56枚=5.6人工+改修・押さえ等1.0人工=6.6人工。労務単価25,000円/人工→約165,000円。
- 効果:雨天5日発生見込み→従来は遅延7日→養生+ナウキャストで遅延2日に圧縮。足場延長1週間回避=200,000円削減。純コスト差引:約200,000−(50,400+165,000)=−15,400円だが、手戻りゼロ・クレーム回避・工程短縮の付加価値が大。
露点チェックの現場計算例:気温18℃・相対湿度90%→露点約16℃(簡便式:Tdp≒T−(100−RH)/5)。素地温度17℃→差1℃で塗装NG、シーリングも結露リスク大。養生と送風で素地20℃まで上げれば差4℃でOK。
手順・チェックリスト(施工管理 チェックリスト)
前日(15:00まで)
- ナウキャスト/XRAINで翌日の時間別降雨強度を確認、1mm/h超の時間帯を「中止枠」として工程表に反映。
- 外壁 雨養生の数量を拾い、材料(養生ポリ・テープ・結束・胴縁)をスパン別に段取り。
- シーリングはプライマー塗布〜打設〜養生24hの雨避けを確保できる面から着手計画。
当日朝
- 気温・湿度・素地温度を非接触温度計と湿度計で測定→露点差3℃以上を確認。
- 風向を見て雨だれの侵入面を優先して二重養生。開口部はキャノピーを先付け。
作業中
- 10時・13時のタイミングでナウキャストを再確認。降雨予兆(レーダ回波接近)で「塗り広げ停止→養生強化」に即切替。
- シーリングは1スパンあたり「プライマー→30〜60分→打設→形成→即時雨避け」のリズム。オープンタイム超過はやり直し。
終業前
- 打設・上塗り部の上部に水みちがないか貫通確認。水返しテープで応急の垂れ止め。
- 翌日の降雨予報を踏まえ、局所養生は残置、面養生は必要部のみ残置で結露抑制。
まとめ|明日から使えるTips
- 判断の基準は数値化(RH85%、露点差3℃、降雨1mm/h)。迷わない現場を作る。
- 外壁 雨養生は「二重+換気+排水」の三点セットで設計する。
- シーリングはプライマーのオープンタイム管理と24h雨避けが品質の分かれ目。
- ナウキャスト/XRAINを一日4回見るだけで工程の無駄が減る。
- 数量拾いを習慣化(シート本数=長さ/1.8m×二重÷2)し、材料切れをゼロに。
雨は敵でもあり味方でもある。数値で判断し、養生で守り、天気を味方に付ける。これが「雨天時 外壁工事 対策」の最短ルートだ。
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