雨天時の外壁工事対策|現場監督の手引き

雨天時の外壁工事リスクと課題(施工管理・品質管理)

最近の現場でよくあるのが、にわか雨での作業中断と再施工の増加。外壁工事は「濡らさない・乾かす・密着させる」が命。雨天時の判断を誤ると、塗膜の膨れ、シーリングの剥離、サイディングの反り、ALCの白華、雨仕舞不良による浸水など、後戻りコストが一気に跳ね上がります。現場監督が握るべきは、気象の先読みと許容条件の線引き、そして雨天対策の手当てです。

雨天時 外壁工事対策の基本方針(工程管理×気象)

高解像度ナウキャストの活用と停止基準

雨雲レーダー(高解像度降水ナウキャスト/XRAIN)で1~6時間先を予測し、作業可否を数値で決めます。現場ルール例:
・塗装・シーリング:予測降雨強度1mm/h以上で開始不可、0.5mm/h以上接近で中止準備。
・透湿防水シート・サイディング張り:本降り(2mm/h以上)接近で中止、弱雨(~1mm/h)は養生・仮設屋根が効く範囲で限定作業。
停止基準は「誰が見ても同じ判断」に数値化しておくのが肝です。

乾燥・含水率管理(品質管理)

密着系工種は基材の乾燥が最優先。
・木下地:含水率15%以下を目安(含水率計で記録)。
・ALC:表面乾燥を目視+含水スポットチェック。
・モルタル下地:養生・乾燥を天候に応じ+1~2日上乗せ。
・露点管理:気温20℃、RH80%だと露点16.4℃。下地温度が露点近いと結露→密着失敗。接触温度計で下地温度を確認し、暖気送風や加熱で露点差3℃以上を確保。

仕様別の具体対策(サイディング・ALC・塗装・シーリング)

・透湿防水シート:タッカー穴は防水テープで補修。重ね代はメーカー基準に従い90~150mmを確保。貫通部は先貼り・後貼りの順序厳守で雨仕舞。
・窯業系/金属サイディング:取り合い部の一次防水を先行。切断面は小口塗装。軒先・開口周りは捨てシールで二次止水を追加。
・ALC:シーラーは希釈率・塗布量を厳守。白華が出たらワイヤーブラシ+中性洗浄で除去後、十分乾燥。
・塗装:素地が湿潤ならプライマー不可。各層の乾燥は20℃で2~4時間目安、低温・多湿時は+50~100%見込み。仕上げ総膜厚は仕様通り(例:下塗40μm+中塗40μm+上塗40μm=120μm)。
・シーリング:目地幅10~15mm、深さ8~10mmを確保。バックアップ材で二面接着にし、プライマーは乾燥を待ってから(概ね30~120分)。降雨予測がある日は打設禁止。養生テープは乾燥後に剥がす。

仮設・養生の工夫(雨仕舞・足場・コスト)

足場はメッシュのみだと吹込み雨に弱い。外側に不燃シート、要所に水平庇(仮設母屋+波板・ターポリン)を追加すると作業可能時間が増えます。軒先・入隅は一次受けの捨て水切りを先付け、縦樋仮設で落水を制御。材料は高床パレット+ブルーシート二重、端部は下向きで水道を作らない。

事例・数字:サイディング1,200㎡の雨天対策

規模:外壁1,200㎡、外周250m、4面足場。梅雨時の2週間工程。
・仮設雨養生(不燃シート+簡易庇):700円/㎡・週 × 1,200㎡ × 1週=約84万円。
・中断コスト:人員8名×2.2万円/日=17.6万円+足場賃料1.5万円/日=19.1万円/日。
・実績:降雨4日中、3日は簡易庇で午前のみ施工継続。純損失は1日分=約19万円。養生なし想定だと4日停止=約76万円。さらに再施工(小口塗装やシールのやり直し)を回避し、材料・手間で約12万円削減。結果、養生費84万円に対し回避コスト約88万円で差引プラス4万円+工程遅延0.5日で引渡し死守。

雨天時 外壁工事チェックリスト(保存版)

作業前(前日~当日朝)

  • 高解像度降水ナウキャストで1・3・6時間先を確認、作業可否をKYTで共有
  • 停止基準(1mm/hなど)と中止時の退避動線・資材保管場所を指示
  • 含水率・下地温度・湿度を測定し、記録(写真+メモ)
  • 取り合いの一次防水と捨てシールを先行施工
  • 材料の待機場所に仮設屋根、床上150mm以上に離隔

作業中

  • 降雨接近で関係箇所を先行で終わらせ、継目はその日のうちに止水完結
  • 切断粉・汚れは即除去、濡れたら作業切替(内業・加工)
  • シーリング・塗装は露点差3℃未満なら延期

作業後

  • 養生の水だまり解消、翌朝の出入り動線を確保
  • 日報に天候・作業範囲・含水率・写真を添付し可視化
  • 次工程(検査・是正・材料手配)を天気に合わせ前倒し・後倒しを即決

最新トレンドと小ネタ

・気象APIと工程表を連動させる簡易仕組み(スプレッドシート+自動通知)で判断を平準化。
・速乾プライマーや低温硬化型シーリングの採用で可働日を拡張(ただしメーカー承認条件を遵守)。
・ドローンで外壁上部の雨仕舞状況を定期点検、見落としゼロへ。

まとめ:明日から使えるTips

  • 可否判断を数値化(降雨1mm/h、露点差3℃、含水率15%)して全員に共有
  • 「その日の継目はその日に止水」で再施工ゼロへ
  • 仮設はコストではなく稼働時間の投資。700円/㎡・週で停止3日を回避
  • 記録(写真・計測値)を残し、トラブル時のエビデンス確保
  • 天気に合わせて工程をモジュール化(内業・加工の代替メニューを常備)

雨天時の外壁工事対策は、気象の先読み+乾燥管理+雨仕舞の三位一体。数値基準と仮設の工夫で、品質不具合と工程遅延を最小化しましょう。

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