雨天時の外壁工事で損しない施工管理
ここ数年、にわか雨とゲリラ豪雨で外壁の工程がズレがち。塗装の白化、シーリングの肌荒れ、ALCの含水過多による付着不良…現場監督としては「止める勇気」と「代替の段取り」が勝負です。本稿では、雨天時の外壁工事(シーリング・塗装中心)を、露点・含水率の実務基準、数量拾い、コスト、チェックリストまでまとめます。狙う検索キーワードは「雨天時 外壁工事 施工管理 露点 含水率 シーリング 養生」。
雨天時の施工管理 基本指針
施工可否の判断基準(露点・湿度・含水率)
塗装やシーリングは「濡れていない」だけでは不十分。以下を満たすかを計器で確認します。相対湿度:85%以下を目安。表面温度−露点温度≧3〜5℃(結露防止のマージン)。下地含水率:モルタル・ALCで8〜12%以下を目安。降雨予測:降水強度が0.5〜1mm/h以上見込みなら皮張り前の作業は避ける。気象は「高解像度降水ナウキャスト」「XRAIN」を併用し、5〜10分スパンで更新を確認。温湿度・表面温度・露点は、温湿度計+赤外線放射温度計+露点計算アプリで即時判断が実用的です。
雨を織り込む工程と段取り替え
午前中が降雨なら、午後に「乾燥が必要な工程」を寄せるのがセオリー。逆に、雨中・雨直後は以下に切り替えます。室内側の配線・下地補修。足場の締結・金物点検。シーリング撤去(養生不要な区画)。ケレン・研磨の乾式部分。翌日の塗装に向けた材料練り場・飛散防止の養生強化。工程表は半日単位でリスケ。天気アプリ連携で職人隊に10時・15時の2回通知をルール化するとムダが減ります。
材料・仕様の選定
湿潤面可のプライマーや、速乾型(初期硬化が早い)シーリング材を雨期は優先。シーリングはJIS A 5758の性能区分(例:F-25LM等)を確認し、期待変位と下地に合ったものを。塗装はJASSの一般的な指針にならい、結露・降雨・高湿時は避け、露点差を確保できる時間帯(10〜14時)に主工程を集約。
事例と数字で見る意思決定
モデル:RC4階、外周長92m、高さ12.6m、サイディング+打放し混在。外壁面積は92m×12.6m=約1,159m²。開口等25%を差し引くと有効面約869m²。
養生メッシュシート:足場必要面1,159m²。1枚あたり1.8×5.4=9.72m²なら、必要枚数は約1,159/9.72≒119枚。レンタル単価120円/m²/月で、1,159m²×120円=約139,000円/月。追加でポリシート0.05mm×1,000m巻(@7,800円)×2=15,600円、養生テープ(@180円)×20=3,600円。
シーリング打替え:目地長300m、断面10×10mm想定。材料必要量は1,000ml/袋で約10m施工→30袋。単価1,600円/袋で48,000円。プライマーは0.04L/mで約12L。施工単価1,500円/mなら工賃約450,000円。雨天時は「皮張りまでの時間」を確保できるかが肝。例えば20℃・60%RHで皮張り2時間の材料なら、降雨予測が3時間先で△OK、1時間先で×。
塗装:下塗(シーラー)0.12kg/m²、中塗・上塗0.18kg/m²×2で合計0.48kg/m²。869m²なら約417kg。1缶15kgで28缶。雨で1日中断すると、乾燥待ち0.5日+段取り替え0.5日=実質2日遅れが現実的。逆に、午前撤去・午後塗装の切替運用で日当たり120m²の生産性を維持できた現場では、梅雨期でも工程遅延を1.5日以内に抑制。
数量の拾い方・手順(実務メモ)
- 足場・養生面積=外周長×高さ−大開口面積(CADから面積抽出し、雨期は開口控除を20〜25%で仮置き)
- シーリング長さ=縦目地本数×階高+横目地本数×スパン長+サッシ周り(図面の通り芯で一覧表化)
- 材料換算=断面(mm)→断面積(mm²)→1mあたり容量(ml/m)→袋数へ。10×10mmなら約100ml/mを目安
- 塗装数量=仕上別に面積按分(打放し・サイディング・補修部)し、塗付量×安全率1.05〜1.1
- 雨期係数=養生材+5%、手待ち時間+0.5人日/日で見込むと実勢に近い
雨天対策チェックリスト(施工管理)
- 朝礼前に露点・湿度・表面温度を計測(露点差3℃以上)
- 降雨予測の更新タイミングを全体LINEへ共有(10時・15時)
- 養生の二重化:開口上部はメッシュ+ポリの重ね張り、テープ端部を下向き処理
- シーリングは風下から段取り、皮張り時間を黒板で明示
- 塗装は上から下へ。飛散と雨だれ跡の回収段取りを先に決める
- 足場:踏板の滑り止め、電動工具の防滴、仮設分電盤の防雨を朝一点検
- 雨上がり再開は「表面温度>露点+3℃」「含水率OK」まで待つ
最新トレンドと実務活用
気象データはアプリで見に行く時代から「通知させる」時代に。高解像度降水ナウキャストやXRAINを自動通知する現場アプリを使えば、降雨閾値(例:0.5mm/h)超で即リスケ指示が可能。材料も、低温・高湿に強い速乾型プライマーや高初期タックの養生テープが増えています。シーリングはJIS A 5758の区分をカタログだけでなく試験体で確認し、期待変位に見合うグレードを選びましょう。
まとめ:明日から使えるTips
- 温湿度計+赤外線温度計を腰袋に常備し、露点差で即判断
- 午前=撤去・下地、午後=塗装・充填の半日スイッチを標準運用
- ナウキャストの自動通知を設定し、降雨0.5mm/hで中止基準
- 皮張り時間を書いたホワイトボードを足場に掲示
- 雨期は数量見積に+5%の養生ロス、工程に0.5日/週の手待ちを初期から織り込む
雨は敵ではなく条件。露点・含水率・降雨予測を数値で握り、工程を半日単位で動かせば、梅雨でも工程と品質は守れます。
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