最新動向:低炭素と猛暑対応が重点
最近は低炭素コンクリートの採用や配合のセメント代替(高炉スラグ微粉末など)が増加傾向。受入時は強度・スランプだけでなく、設計要求(環境配慮仕様やマスコン対応の温度上昇抑制)を明確に伝えることが重要です。また夏季の高温下では、コンクリート温度の上限管理(多くは30〜35℃)や打設時間帯の前倒しが標準になりつつあります。
数量拾いの基本プロセス
ステップ1:図面の範囲と単位を確定
- 対象:柱・梁・スラブ・壁・基礎など構造部位別に分ける
- 単位:体積はm3、面積はm2、長さはm。開口や勾配は別途調整
- 打継ぎ位置や一体打ちの範囲を確認(施工区画と一致させる)
ステップ2:開口・欠損・勾配の控除
- 開口は0.5m2以上を控除対象にするなど社内ルールを明確化
- 勾配スラブは平均厚t=(t最厚+t最薄)/2で算定
ステップ3:ロス率を上乗せ
打設ロス・型枠の隙間・残コン等を考慮し、通常は2〜5%を上乗せ。ポンプ配管が長い、複雑配筋など難易度が高い場合は上限側で検討。
実例:中規模オフィス階(1フロア)の拾い方
前提条件:平面30m×20m、スラブ厚150mm、開口合計20m2、梁は外周300×600、二次梁250×500が4本(各20m)、柱600×600が10本(階高3.5m)。
- スラブ体積=(30×20−20)m2×0.15m=580×0.15=87.0m3
- 外周梁体積=0.3×0.6×(30+30+20+20)m=0.18×100=18.0m3
- 二次梁体積=0.25×0.5×(20×4)m=0.125×80=10.0m3
- 柱体積=0.6×0.6×3.5×10=12.6m3
- 小計=87.0+18.0+10.0+12.6=127.6m3
- ロス3%上乗せ=127.6×1.03≒131.4m3→発注目安132m3
ミキサ車8m3車で想定すると、132÷8=16.5台→17台配車が目安。
発注と配車の割付
- 打設能力:一般的なポンプ吐出30m3/hとして、132m3なら約4.5時間+段取り(計6時間想定)。
- 配車ピッチ:8m3車を15分間隔で回すと約32m3/h。現場周辺の待機スペースと道路占用許可を踏まえ、20分間隔に緩めるなど調整。
- 時間帯:夏季は6:00〜開始、正午前に打ち切り。冬季は9:00〜で温度確保。
打設計画:区画・人員・施工手順
区画計画
- スラブは4〜6m幅の帯状に区切り、進行方向を固定して連続打設
- 梁・スラブ一体打設時は梁を先行充填→スラブへ展開(コールドジョイント防止)
- 打継ぎは梁中央付近・スラブはスパン中間など、せん断が小さい位置を基本
人員モデル
- ポンプ1台、ホースマン2、バイブレータ4、均し2、金鏝2、測量1、品質1、連絡・配車1、指揮1(計14名程度)
施工要点(数値の目安)
- スランプ:18±2.5cm(仕様書に従う)。空気量:4.5±1.5%
- 温度:受入時30〜35℃以下を目標(契約仕様で確認)
- 内部振動機:挿入間隔0.5m以下、1点5〜15秒、前打設との重ね挿入10cm以上
- 水平精度:レベルピン1.8〜2.4mピッチで配置、レーザーで常時監視
品質管理と試験
- 受入検査:スランプ、空気量、温度、単位容積質量、塩化物量(必要時)
- 供試体:ロット毎に採取(現場仕様に従う)。一般的には3本1組で7日・28日を基本
- 帳票:ミルシート・配合報告書の確認(呼び強度・水セ比・単位水量・骨材最大寸法)
強度の発現が遅い配合(低発熱型など)は、支保工存置や脱型時期を仕様書で再確認。日平均気温が低い場合は養生期間を延長します。
よくある数量ミスと対策
- 小開口の見落とし:積層すると数m3の差に。開口一覧表を作成して照合
- 梁の隅肉・ハンチ:断面変化部は区間分けして別計算
- 勾配スラブ・巾木・パラペット:平均厚と立上り体積を別立て
- 階段のささら・蹴上げ下コンクリート:立体展開で近似し、余裕率を上げる
- 設備基礎・ピット縁梁:施工直前に最新版図で差分チェック
安全・環境のポイント
- ポンプ車アウトリガー下の敷板・地耐力確認(沈下は事故の主因)
- はね石・飛散対策:洗浄場所の仮設受入槽を事前設置、戻りコン・残コンの処理計画
- 熱中症対策:WBGT計を用い、散水・休憩ローテを明文化
チェックリスト(当日朝までに)
- 配車表・ルート連絡、近隣告知、警備配置
- 配合・呼び強度・スランプの最終確認、試験機器の準備
- レベルピン・型枠緊結・止水版・スリーブの再点検
- 打設区画・順序・避難経路・合図方法の周知
まとめ:数字で語る段取りが品質を守る
数量拾いは「式と前提」を明示し、ロス率まで含めて発注するのがコツです。今回の例では132m3、配車17台、ポンプ30m3/hで約4.5時間という根拠が共有でき、コールドジョイントや過密配車を防げます。低炭素や猛暑対応など最新動向も踏まえ、仕様書と現場条件に即した数値管理で、品質・安全・工期を同時に達成しましょう。
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