現場監督向け 型枠数量拾い完全ガイド

最近増えている「型枠数量の過不足」問題をどう防ぐか

工程が詰まるほど、型枠の数量拾いは一発勝負になりがちです。見積段階と実行段階で前提がズレる、壁開口の控除が揃っていない、梁底の重複計上…結果として、外注単価の交渉も打合せも後手に回り、原価・工期・品質の三方に響きます。この記事では、現場監督・施工管理技士が明日から使える「型枠 数量拾い(型枠積算)」の実務手順とチェックポイント、さらにBIM/Excelでの効率化まで、現場の言葉でまとめます。

型枠数量拾いの基本手順とコツ(型枠面積計算の考え方)

前提は「どこまでを型枠面積に含めるか」を関係者で統一すること。積算基準や社内基準により扱いが異なるため、着手前に必ず合意を取ります。以下は実務で一般的な考え方の一例です。

壁型枠(RC壁)—両面と開口控除

基本式:壁延長(m)× 立上り高さ(m) × 2面 − 開口面積(両面分)
注意:開口の控除条件(例:1.0m²未満は控除なし等)は必ず基準確認。袖壁・垂れ壁の扱い、境界(外周)と躯体内壁の下端レベル差も事前にルール化します。

柱型枠—周長×高さ

基本式:柱周長(m)× 柱高さ(m)
角欠き、柱頭・柱脚の段差やスリーブ周りの補強当て(当て板)に伴う割増の扱いは、見積との整合をチェック。

梁型枠—底+側面×2

基本式:(梁幅 b + 2×梁成 h)× 梁長 L(m²)
ハンチや落し、片持ち(バルコニー)など特記形状は別計上。スラブ底面積との重複は避けます(梁底分はスラブ底から差引)。

スラブ型枠—底と小口

基本式:スラブ底面積(投影面積 − 梁底面積の合計)+ 小口面積(周長+開口周長)× スラブ厚 t
大開口(シャフト等)は小口が効くため、拾い漏れに注意。段付きスラブは段差部の小口も別計上。

境界条件のすり合わせ—「控除」「端部」「重複」

よくある食い違いは次の3点:開口控除の閾値、外周小口の計上(誰が持つか)、梁底とスラブ底の重複。発注前に図示して共有しておくと後戻りが激減します。

デジタル活用—BIM/3DとExcelでミスを撲滅

BIMモデル(IFC)から壁・柱・梁のジオメトリを抽出し、Excel(Power Query)で寸法表を自動整形。開口リストも同時に取り込み、控除ルールをスイッチで切替え可能にしておくと、設計変更に強くなります。3Dスキャンは出来高検収や型枠返しのタイミング検証に有効です。

具体事例:標準階での型枠数量拾い(数字で確認)

条件:RC造、標準階 540m²(30m×18m)、階高3,000mm、壁高さ2,800mm、梁 b=300mm・h=600mm、スラブ厚 t=180mm。壁延長90m、開口は窓・扉で合計18m²(片面)。シャフト開口は1.2m×1.2m×4箇所。

  • 壁型枠:90m × 2.8m × 2面 −(18m²×2面)= 504 − 36 = 468m²(控除ルールにより±調整)
  • 柱型枠:600×600mmが16本 → 周長2.4m × 高さ2.8m × 16 = 107.5m²
  • 梁型枠:
    ・X方向:7.5m×4スパン×4ライン=16本 →(0.3+2×0.6)×7.5×16=180.0m²
    ・Y方向:6.0m×3スパン×5ライン=15本 →(0.3+2×0.6)×6.0×15=135.0m²
    合計=315.0m²
  • スラブ底:投影540m² − 梁底(X:16×7.5×0.3=36、Y:15×6.0×0.3=27)= 540 − 63 = 477m²
  • スラブ小口:外周周長96m × 0.18m = 17.28m² + 開口小口(1.2m×4辺×4箇所=19.2m × 0.18m)= 3.46m² → 合計20.74m²

標準階合計(例):468 + 107.5 + 315 + 477 + 20.7 ≒ 1,388.2m²
開口控除をしない基準の場合は壁が504m²となり、合計≈1,424.3m²。基準差だけで約36m²、単価3,200円/m²なら約11.5万円/階の差。10階で約115万円と無視できません。

原価・工期の目安(社内実績例):
・型枠単価:2,800〜3,600円/m²(材工、地域・時期で変動)
・人工原単位:0.12〜0.18人工/m² → 1,400m²×0.15=約210人工/階
・大工15名体制なら約14日/階(養生・転用段取りを含め工程最適化要)

型枠数量拾いチェックリスト(施工管理・現場監督用)

  • 積算基準・社内基準(開口控除、1m²未満扱い、小口計上範囲)を発注前に合意したか
  • 梁底とスラブ底の重複排除ロジックが表・式に組み込まれているか
  • 壁高さは仕上げGLか躯体GLか、立上り端部の段差を拾っているか
  • ハンチ・落し・片持ち梁・段付きスラブを別計上したか
  • シャフト・大開口の小口周長を拾い漏れていないか
  • 柱頭・柱脚の断面変化部(ドロップ、キャピタル)の面積と数量を明記したか
  • 外周部の端部型枠の持ち分(A棟/B棟、既存・新設)を合意したか
  • 型枠転用回数、セパピッチ・目地割付が見積りと整合しているか
  • BIM/図面の改訂履歴(リビジョン)を数量表に反映したか
  • Excelで根拠セルに名称(Named Range)を付け、ダブルカウント検出用の検算表を持っているか

最新トレンド:BIM連携と自動化で「拾い→発注→出来高」まで一直線

IFCモデルから壁・柱・梁の面積を抽出し、Power Queryで「(b+2h)×L」などの計算列を自動生成。RevitやSolibriの集計表とExcelの数量表を双方向チェックにすれば、設計変更時の差分(±m²)を数分で提示できます。出来高はレーザースキャン点群と干渉照合して、返しの段取り日を前倒し。これにより、型枠材の転用計画と工程短縮(1フロアあたり1〜2日短縮)の事例が増えています。

まとめ:明日から使えるTips(型枠積算の精度を一段上げる)

  • 壁・梁・スラブは「基準の線引き」を先に決め、図示で共有する(言葉だけで合意しない)
  • 数量表に「検算列(概算式)」を必ず入れる(例:壁≒延長×高さ×2、±5%以内が目標)
  • 梁は(b+2h)×Lを基本形にし、ハンチ・落しは別行で管理
  • スラブは「底」と「小口」を分けて拾い、開口小口は周長×tで押さえる
  • Excelに改訂日・図面番号・モデルVerを記録、差分管理で手戻りをゼロに近づける
  • 単価交渉は「基準の一致→数量の根拠→出来高手当」の順で、争点を一つずつ潰す

型枠 数量拾いは、基準の統一と重複排除が8割。残り2割をBIMとExcelの自動化で埋めれば、原価も工程も安定します。明日の拾いから、基準表と検算列を増やしてみてください。

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