導入:雨天の外壁工事対策は段取り力で決まる
最近の現場で増えているのが、にわか雨と高湿度による外壁工事の品質トラブル。シーリングが泡を噛む、塗装が白化する、ALC目地で付着不良が起きる――原因の多くは「施工可否の判断」と「段取り替えの遅れ」です。この記事では、現場監督・施工管理技士が雨天時でも品質と工程を両立させるための即断基準と、実務で使える外壁工事対策を深掘りします。狙いの検索キーワードは「雨天 外壁工事 対策」「施工管理 現場監督 判断基準」です。
本論:雨天・高湿時の施工可否と段取り替え
塗装の判断基準(JASS系ガイドの実務目安)
塗装は以下の条件を一つでも満たせば基本中止。可否は露点で即断します。
- 気温:5℃未満不可
- 相対湿度:85%以上不可
- 基材表面温度:露点温度+3℃未満不可
- 降雨・結露・霜:不可(塗布後も乾燥完了まで降雨NG)
露点の目安はスマホの気象アプリでOK。例えば気温12℃・湿度80%のとき露点は約8.6℃、外壁表面温度が11℃なら露点+2.4℃でアウト。迷ったら「表面温度−露点≧3℃」で線を引きましょう。
シーリングの判断基準(打設・養生)
- 気温:5℃未満は硬化遅延・付着低下リスク
- 降雨・結露:プライマー乾燥前後とも不可
- 含水:目地内が濡れている場合はエアブロー+乾燥(30〜60分)後に実施
- 養生:打設後24〜48時間は降雨遮蔽、低温時は延長
プライマーは所定量を確保(例:0.05〜0.1kg/m²相当、目地幅10mmなら片側刷毛1〜2往復)。雨を読んで「午前は目地清掃・バックアップ材調整、午後はプライマー→打設」など細分化するとロスが減ります。
ALC/サイディングの段取り替え
ALC目地・乾式サイディングは雨天での表層施工は避け、以下に切替。
- 下地調整:不陸のパテ埋め(屋内で練り場確保)、ビス座金増し締め
- 入隅・開口部:シールバックアップ材のサイズ確認・交換
- 付帯:水切り・笠木の納まり確認、逆水リスクの是正
養生・仮設の工夫(簡易屋根と乾燥の作り方)
- 簡易ひさしユニット:アルミ桁+ターポリンでW1.8m×L2.7mの可搬屋根を複数面に回す
- 二重シート養生:外層メッシュ+内層防炎シートで風抜けと飛沫遮断を両立
- スポット送風+温風:低温多湿時は温風機(50〜60℃)を離隔1.5m以上で循環、表面温度を露点+5℃に持ち上げる
- ウェザーログ:気温・湿度・表面温度を写真+数値で記録。品質証跡とクレーム予防に有効
事例・数字:8階建てRC、梅雨時の外壁工程最適化
物件:8F RC、外壁面積3,200m²、シーリング総延長5,800m、塗装2,400m²。足場は周囲全面、工期は外装30日。標準はシール2班(各3名)で400m/日、塗装1班(4名)で200m²/日。
梅雨入り後、降雨日3日/週の予報。従来なら雨天中止で1日あたり労務15万円(6名×2.5万円)+足場延長8万円=23万円/日が浮く。今回は「雨天 外壁工事 対策」を適用し、仮設を強化。
- 仮設費:二重シート養生120m²×900円=10.8万円/面×2面=21.6万円
- 簡易ひさし:可搬8基×1.2万円/日=9.6万円
- 温風機・送風:レンタル一式2.4万円/日
合計仮設強化費:約33.6万円/日。ただし、雨天でも「目地清掃→プライマー→限定打設(南面)」と「付帯部ケレン→錆止め」を進め、実稼働を確保。結果、週あたり可動延べ2日相当を確保し、外装工程は▲2日短縮。足場延長ゼロ、養生強化費はトータル3日=約100.8万円。一方、中止を選ぶと23万円×6日=138万円+工程遅延リスク。品質面でもシールの気泡ゼロ、塗膜白化ゼロを達成しました。
数値メモ:塗装時の現場計測は「気温11.5℃、湿度78%、露点7.7℃、外壁表面温度12.9℃」。露点差+5.2℃を確保し可施工判定。乾燥時間を標準比1.3倍に補正し、次工程を2時間後ろ倒しで吸収。
チェックリスト:現場監督の即断・段取り替え
前日までの準備
- 天気API/アプリで降水強度(mm/h)と湿度の時系列を確保、露点を予測
- 作業メニューを「乾式・室内化・検査類」と「湿式・外部」に二分して指示書化
- 仮設計画:二重シート、簡易ひさし、送風・温風の配置図を作成
- 材料:シーリング材は低温硬化型を用意、塗料は推奨希釈率の範囲で試験塗り
当日朝の判定(5分で可否)
- 気温・湿度・表面温度を非接触計で測定、露点差を算出(+3℃以上で可)
- 降水強度1mm/h以上の確度が高い時間帯は湿式を回避、段取り替えを宣言
- 可搬屋根・二重シートを必要面に移設、写真で証跡化
作業中の監視
- 各1時間ごとに露点差を再判定、閾値割れで直ちに中断→別メニューへ
- シーリングはプライマー乾燥をタイマー管理(例:10〜20分)、雨雲接近なら打設を切り上げ
- 塗装は乾燥時間を温湿度で補正(低温高湿なら1.2〜1.5倍)
終業時の保全
- シール新規打設箇所は降雨遮蔽を再確認、端部テープ浮きの是正
- 塗装面は雨筋対策で下端に水切り養生、翌朝の白化点検リストを作成
- ウェザーログ(数値+写真)をクラウド共有し、品質証跡を蓄積
まとめ:明日から使えるTips
- 露点差+3℃ルールを全員の合言葉にする(塗装・シールの共通基準)
- 作業を「濡れて困る工程」と「濡れても進む工程」に常に二分しておく
- 簡易ひさし・二重シートは面ではなく「点」で使い回す(出面効率を最大化)
- ウェザーログで可施工の根拠を残し、クレーム耐性を上げる
- 仮設強化費と足場延長・再施工リスクを比較し、数字で意思決定する
雨天の外壁工事対策は、勘ではなくデータと段取り。現場監督の即断基準をチームで共有すれば、「止める勇気」と「進める工夫」の両立ができます。明日の朝から、露点差の計測とメニュー二分化を始めてみてください。
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