改修現場で増える「ウレタン防水」──赤字の原因は拾い漏れ
最近の改修現場では、既設アスファルト防水の上に「ウレタン塗膜防水(通気緩衝工法)」でかぶせる案件が増えています。ところが、数量拾いが甘く、立上りや端末金物、改修ドレン、脱気筒の拾い漏れで利益が飛ぶケースをよく見ます。さらに、含水率や露点を無視した施工で膨れ・ピンホールが発生し、手戻りになるのも“あるある”。この記事では、現場監督・施工管理技士向けに、ウレタン防水の数量拾いと施工方法、実務の注意点を一気通貫で整理します。
ウレタン防水 数量拾いのコツ(通気緩衝工法)
基本面積の拾い方:平場・立上り
- 平場(㎡):屋上有効面積から立上り分の食い込みや段差を考慮。通気シートは原則平場に全面。
- 立上り(㎡):周長(m)× 立上り高さ(m)。多くの改修はH=200~300mm。役物(庇、笠木、手摺根元)で増加しがち。
端部・役物の拾い:見落としがちな“儲け”の源泉
- 端末押え金物(m):立上り天端+開口まわり。2.0m単位の既製品本数で算出。
- 改修用ドレン(個):既設ドレン数+補助排水。改修用は内径φ75/100が主流。スリーブ延長の有無も確認。
- 脱気筒(基):目安は100㎡に1基以上+区画毎の端部1基。防水層下の含水状況で増減。
- 入隅・出隅(m):シールや増張りテープの数量根拠。入出隅それぞれ拾うと精度UP。
材料数量の算定(目安値)
仕様で異なりますが、通気緩衝工法(膜厚3.0mm想定)の一般的な消費量は以下が目安。
- プライマー:0.15~0.25 kg/㎡
- 主材(ウレタン):約1.4 kg/㎡/mm → 3.0mmで約4.2 kg/㎡
- トップコート:0.15~0.25 kg/㎡
- 通気シート:平場㎡と同数。1.0m×20m=20㎡/巻でロール換算。
メーカーの設計単価表・仕様書で必ず最終確認してください。
屋上防水 施工方法(通気緩衝工法の手順)
下地確認と環境管理が9割
- 含水率:コンクリート躯体は8%以下が目安。含水高い場合は乾燥期間を確保。
- 露点管理:下地温度が露点+3℃未満なら結露リスクあり。施工を見送る。
- 素地調整:脆弱部撤去、段差不陸はモルタルで調整(厚10~20mm)。
標準手順
- 清掃・下地処理(ケレン、目荒し、プライマー塗布)
- 改修用ドレン設置(押え金物・シール同時施工)
- 通気緩衝シート貼り(目地はシートテープで処理)
- 脱気筒取付(端部・中央付近、シート貫通部は防水処理)
- ウレタン主材1層目(立上り先行→平場)。硬化後にピンホールチェック
- ウレタン主材2層目(所定総膜厚3.0mmを確保)
- トップコート(耐候・色決め、膜厚0.1~0.2mm)
- 端末押え金物・シール仕上げ(10×10mm目地基準)
気温5℃未満、降雨・結露が想定される場合は施工を中止。強風時は通気シートの巻き込みにも注意。
具体事例と数量・コスト・工期
条件:RC造5F屋上、平場600㎡、立上り周長100m×高さ0.3m=30㎡、既設アスファルト露出、改修用ドレン6箇所。
- 面積合計:平場600㎡+立上り30㎡=630㎡
- 通気シート:600㎡ → 20㎡/巻で30巻
- プライマー:0.2 kg/㎡×630㎡=126kg → 18kg缶×7缶
- 主材(3.0mm):4.2 kg/㎡×630㎡=2,646kg。ロス5%加味=約2,778kg → 18kgセットで約155セット
- トップコート:0.2 kg/㎡×630㎡=126kg → 18kg缶×7缶
- 脱気筒:100㎡に1基+端部補強で計8基
- 改修用ドレン:6個(片勾配側に延長部材要)
- 端末押え金物:周長100m → 2.0m物で50本
- シーリング材:断面10×10mm想定。必要量0.1L/m → 100mで約10L。600ml/本で約17本
- 勾配調整モルタル:局部10㎡平均t=20mm → 0.20m³ ≒ 約400kg → 25kg/袋×16袋
工期目安:4人編成で5~6日(下地処理1日、通気シート1日、主材2日、トップ1日、天候予備1日)。
概算コスト:通気緩衝工法 6,500~9,000円/㎡(地域・仕様差あり)。600㎡で約3,900,000~5,400,000円+付帯(ドレン・金物・仮設)。
品質確保の勘所(施工管理の注意点)
- 膜厚管理:ウェットゲージで各層チェック。総膜厚3.0mmを面内で均一に。
- ピンホール対策:1層目硬化後に目視+ピンホール検査、局部補修→2層目。
- 付着確認:試験片または引張試験で付着破壊モードを確認(界面剥離は要是正)。
- 端末処理:金物下のシール充填率、笠木・手摺根元の三角シール形状を写真管理。
- 雨仕舞:改修ドレンの差し込み長さ、逆勾配の有無を通水試験で確認。
改修工事 チェックリスト(保存版)
拾い漏れ防止チェック
- 平場㎡、立上り㎡、入隅・出隅m、端末金物mの4点を必ず別計上
- 改修用ドレン個数・口径、既設管種(VP/SGP)確認
- 脱気筒数の根拠(区画面積、既存含水)を記録
- 架台・設備脚部の増張りテープ、補強布のm数
- 仮設計画(足場・親綱・開口養生)と歩行制限動線
当日施工チェック
- 天気・露点・下地温度の記録(写真+計器値)
- プライマーの開放時間管理(オープンタイム)
- 主材の混合比・撹拌時間(2液型は規定比率厳守)
- 各層の硬化確認(指触乾燥→積層)
- 端末シールの断面(10×10mm)と充填率
トレンドと最新情報
最近は、低VOC・低臭タイプのプライマー/主材が主流化し、屋内近接や学校・病院での改修でも苦情が出にくくなっています。また、BIM連携やドローン実測写真から平場・立上りを半自動拾いするワークフローも普及し始めました。見積段階で「仕様別(2.0/3.0/4.0mm)」の単価差を明記し、付帯(ドレン・脱気・金物)をテンプレ化しておくと、原価ブレが抑えられます。
まとめ:数量と環境を制する者がウレタン防水を制す
ウレタン防水の赤字要因は、拾い漏れと環境管理ミスに集約されます。平場・立上り・端末・役物までを分解して数量化し、消費量は「㎡・mm・kg」で論理立てて算出。施工では含水率と露点を可視化し、膜厚・ピンホール・端末処理を写真と数値で押さえる。これだけで不具合と手戻りは激減し、粗利が安定します。次の見積から、この記事のチェックリストをそのまま使ってください。明日からの現場が、確実に変わります。
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