現場DXで残業削減|施工管理効率化術

最近の現場で起きている「非効率」の正体

図面はBIM、日報は紙、写真は各員のスマホ、出来形はExcel……。この「情報の分散」が、施工管理のムダ時間を生んでいます。特に多いのが、写真整理と工程のズレ。1現場で写真1万枚、打合議事録は週3本、設計変更は月2回。二重入力と検索に追われ、気付けば毎日20時を回る——これが多くの現場監督の実感でしょう。

本記事では、「施工管理 効率化」を主軸に、現場DXのコアである工程管理アプリ、電子黒板、写真整理、出来形管理の実装法を、私の現場経験と数値を交えて解説します。

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工程管理アプリでボトルネックを潰す

WBS設計とタスク粒度の決め方

最初にやるべきはWBS(作業分解構成)の見直し。タスクの粒度は0.5〜3日で統一し、担当・前後関係・制約条件を明記。例えば「7F内装 軽量下地 LGS立込み 300㎡」は2日タスク、前提は「配管50m完了」「墨出し完了」。これを工程管理アプリに登録し、クリティカルパスを可視化します。粒度が荒いと遅延の早期検知ができません。

ガント連動の進捗管理とKPI

日次で進捗率を更新し、週次で「PPC(作業達成率)」をレビュー。PPC85%以上を目標に、未達タスクは原因を「資材・人員・設計・外部要因」でタグ付け。タグ別の遅延時間を見える化すれば、対策投資(応援1名×10日など)の判断が早まります。

写真整理と電子黒板の命名規則

写真の迷子を防ぐコツは、命名規則とフォルダ設計。推奨は「工区_階_部位_工種_YYYYMMDD_連番」。例「A-2_7F_天井下地_LGS_20250312_003」。電子黒板は「工事名/工区・階/工種/測点・方角/検査区分」をテンプレにして、撮影時に自動挿入。Exifの位置情報はON、解像度はFHD(1920×1080)を標準、出来形や配筋など読み替え必要な場面のみ4Kに切替え。これで容量を50%以上圧縮できます。

出来形管理×BIM/CIM連携

BIMモデルの属性に検査項目を紐づけ、現場で入力した実測値をモデルへ同期。許容差は部位別に登録し、例えば「床スラブ±5mm」「壁垂直±3mm/2m」「開口芯±10mm」。アプリ側でNGが赤、OKが緑でマップ表示され、是正指示が即時に発行できます。高さ基準はGL±0のほか、階基準+3000mmなど現場基準を併記するのがコツ。

材料発注と原価の一体管理

工程タスクごとに必要数量を紐づけます。例:PB12.5mm 3450㎡、LGS天井下地 900m、シール材 120本。進捗率×出来高で自動的に使用想定量を更新し、在庫が閾値(例:3日分)を下回ればアラート。原価は「材料単価×出来高」と「手待ちロス時間」を別計上し、損益の見える化を徹底します。

数字で見る効果:中規模RC現場の事例

対象:RC造8F・延べ床6,000㎡。工期14か月。監督3名+作業所事務1名。月間写真12,000枚、協力会社25社。

導入前:写真整理と配布に1日90分/人、出来形集計に週4時間、工程更新に週2時間。月残業は1人平均40時間。

導入後(工程管理アプリ+写真管理クラウド+電子黒板):写真整理45分→15分/日、出来形集計240分→60分/週、工程更新120分→30分/週。月残業は40時間→15時間に削減。人件費5,000円/時で試算すると、3名×25時間×5,000円=月375,000円の削減。ツール費が月90,000円でも、差引285,000円のプラス。年間で約340万円の効果です。

品質面でも、配筋写真の撮り漏れは月3件→0〜1件に低減。是正のムダ打設(1回50万円規模)はゼロ化しました。

導入手順チェックリスト

  • 現状のムダ時間を可視化(写真、出来形、工程の3領域で時間測定)
  • WBS粒度を0.5〜3日に統一、前後関係と制約条件を洗い出し
  • フォルダ階層と命名規則を決定し、全社テンプレ化
  • 工程管理アプリにWBS一括登録、担当と締切を紐づけ
  • 電子黒板テンプレを作成(必須項目・方角・測点を固定)
  • 出来形の許容差と測定点を部位別に定義(mm単位)
  • 週次レビューのKPI(PPC、遅延タグ)をダッシュボード化
  • オフライン運用テスト(圏外で撮影→帰所同期の挙動確認)
  • 端末ルール(画質・位置情報・バックアップ)を文書化
  • 試行棟または1フロアで2週間のPoC→全体展開

日次運用のポイント

  • 17時までに当日分の写真をアップロード、タグ付けと電子黒板の整合を確認
  • 出来形の実測値を入力、NGはその場で是正タスク発行
  • 当日のタスク進捗を更新、翌日の段取り(人員・資材)をコメントで共有
  • 協力会社の作業日報をアプリに集約、残材と搬入計画を見直し
  • クレーム・安全指摘は写真+位置情報で記録し、是正期限を設定

注意点と落とし穴

  • 提出用写真は発注者の様式要件を満たすこと(電子黒板の記載項目・写真方向)
  • 4K撮影の乱用はNG。容量が膨らみ同期が詰まる。FHD基準で十分な場面が大半
  • 権限設計は最小限付与。協力会社は撮影と自社タスクのみ編集可に
  • 屋内圏外は想定内。オフライン撮影→帰所同期の手順を徹底
  • 命名規則を守らない写真は差し戻す運用にする(例外を作らない)

まとめ:明日から使えるTips

  • 命名は「工区_階_部位_工種_日付_連番」に固定し、全員のショートカットに登録
  • WBSタスクは3日を超えない粒度。超えるなら分割
  • 出来形の許容差を部位別に明文化し、現場と事務所の掲示に貼る
  • PPCを週次で可視化。「原因タグ」ごとに対策を即決
  • 画質は原則FHD、重要部のみ4K。位置情報は常時ON

「現場DX」は高価なツール名ではなく、作業の標準化と見える化の総称です。工程管理アプリ、写真整理、電子黒板、出来形管理を一本化すれば、残業は確実に減り、品質と安全も底上げされます。まずは1フロア・2週間の小さな実験から始めましょう。

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