導入(課題提示・なぜ今)
「長尺シートの数量拾い、余るか足りないかの振れが大きい…」そんな声を現場でよく聞く。原因の多くは、巾1820mmの割付と巾継ぎ・端部見切りの見込みが曖昧なこと。結果、材料追加や納期遅延、コスト超過に直結する。今は材料価格も上がり気味。だからこそ、ロス率を含めた拾いの型を、監督が現場視点で標準化しておく価値が高い。この記事では、長尺シート 数量拾いを「誰が拾っても同じ答え」に寄せる手順と数値を、保存版としてまとめる。
本論:長尺シート 数量拾いの型を作れ
結論から言うと、拾いの再現性は「有効巾で割付→巻長で集計→付属材を線で拾う」の3ステップで決まる。ポイントは次の5つ。
- 有効巾の前提:1820mm幅は計算上1800mmを有効巾とする(左右トリミング各10mm前提)。
- 端部余尺:壁際トリミング50mm、出入口見切り30mm、立上げ(必要時)100mmを基本。
- 巾継ぎ位置:光・動線に直角にジョイントが来ない割付を優先。
- ロス率:整形平面で7〜12%、柱・開口が多いと12〜18%で仮置き。
- 巻仕様:多くは1820mm×20m巻(製品により15m/30mもあり)。
手順・段取り(長尺シート 数量拾い)
- 図面整理:仕上表で品番・厚み(例:2.0mm)、下地(乾式/湿式)を確認。部屋ごとに区画し、動線方向と光源をマーキング。
- 採寸の基準化:レーザー距離計で長辺L(m)・短辺W(m)を取得。出入口・立上げ要否、端部見切りの種類をメモ。
- 割付方向の決定:基本は長辺方向に流す。歩行方向と同一にすると巾継ぎが目立ちにくい。
- 有効巾で本数算定:必要本数N=天端W ÷ 1.80(m)。端数は切上げ。例:W=8.4 → 8.4/1.80=4.66 ⇒ N=5本。
- 1本当たり長さ:条長ℓ=長辺L+端部余尺(両端各0.05m=0.10m)。立上げがあれば片側+0.10m。湿室の場合は基本片側立上げ100mmを追加。
- 総条長の合計:Σℓ=ℓ×N。20m巻なら必要巻数R=切上げ(Σℓ ÷ 20)。
- 巾継ぎ(ジョイント)長の算定:ジョイント本数=N−1。ジョイント延長J=(N−1)×L。溶接棒はJ×1.05(5%余裕)。
- 端部見切りの拾い:見切りアルミ・ステン、または見切りバーの必要長E=周長−(巾木納め部+敷居等接続部)。材は2m/3m定尺で切上げ。
- 接着剤の拾い:使用量q=0.25〜0.35kg/m²(エポキシ/アクリルで差)。必要重量Q=仕上面積A×q。16kg/缶等の定量で切上げ。
- 副資材:プライマー(必要時)、メタルローラー、溶接棒(50m/巻)、パテ。溶接棒は色品番と径を必ず合わせる。
道具リスト(現調/拾い補助):レーザー距離計、墨出し器、スケール、曲尺、カッター、掃除機、熱風溶接機、ピンポンチ、メタルローラー。
コストと工期の目安(前提つき)
- 前提:全国相場ベース、一般的な2.0mm厚PVC長尺、乾式下地、整形平面での参考レンジ。
- 材料単価:3,500〜6,000円/m²(グレードで変動)。
- 副資材:接着剤300〜600円/m²、溶接棒50〜120円/m、端部見切り1,200〜3,500円/m。
- 施工手間:1,500〜2,500円/m²(ジョイント・役物増で上振れ)。
- 歩掛(2人1班):整形40〜60m²/日、切欠き多い現場20〜35m²/日。
- ロス率の置き目安:整形7〜12%、曲面・柱型多い場合12〜18%。拾い時は高めに置き、実行予算で微修正。
事例・数字(具体計算)
ケース:事務室 L=12.6m、W=8.4m、整形、乾式、立上げ無し、1820mm×20m巻を使用。出入口2カ所は見切りバー納め。
- 仕上面積 A=12.6×8.4=105.84m²
- 必要本数 N=8.4÷1.80=4.66 ⇒ 5本
- 条長 ℓ=12.6+0.10=12.7m(両端トリム各50mm)
- 総条長 Σℓ=12.7×5=63.5m ⇒ 必要巻数 R=切上げ(63.5÷20)=4巻(80m)
- 実際に使う総面積(毛):A’=1.82×12.7×5=115.57m² ⇒ ロス率=(115.57−105.84)÷105.84=約9.2%
- ジョイント延長 J=(5−1)×12.6=50.4m ⇒ 溶接棒=J×1.05=53.0m ⇒ 50m巻×2
- 端部見切り:周長P=(12.6+8.4)×2=42.0m。巾木納めで見切り不要と仮定、出入口2カ所のみ各1.0m ⇒ E=2.0m ⇒ 2m定尺×1
- 接着剤:q=0.30kg/m² ⇒ Q=105.84×0.30=31.75kg ⇒ 16kg/缶×2=32kg
- 参考工期:2人1班で40〜60m²/日 ⇒ 105.84m²は2日弱(下地調整量で±)
湿室(片側立上げ100mm)なら、ℓに+0.10m/本を加算。今回だと12.8m/本、Σℓ=64.0mとなり、巻数は同じ4巻だが、ロス率がわずかに増える。
チェックリスト(保存用)
- 1820mm幅は有効1.80mで割付したか(トリム各10mm想定)。
- 端部余尺:壁50mm、見切り30mm、立上げ100mmを計上したか。
- 巾継ぎ位置が動線・採光に対して目立たない方向か。
- 巻長(20m/15m/30m)の仕様確認とロット差の有無。
- ロス率は整形7〜12%、不整形12〜18%で事前見込みを置いたか。
- ジョイント延長=(本数−1)×条長で溶接棒を算定(5%余裕)。
- 端部見切りは周長から巾木納め部を除外して線材で拾ったか。
- 接着剤は面積×0.25〜0.35kg/m²で缶割に切上げたか。
- 副資材(プライマー、パテ、見切りビス・プラグ)の数量と規格を一致させたか。
- 現物幅・巻長・色品番・溶接棒径の整合を最終図面と発注前に再チェック。
まとめTips
長尺シート 数量拾いは「有効巾1.80mで割る」「条長はL+余尺」「付属材は線で拾う」――この3点でブレが激減する。拾いのシートに前提(巾継ぎ、端部見切り、ロス率、巻長)を明文化しておけば、発注・施工チーム間の齟齬も抑えられる。最後に、拾いは必ず割付スケッチを残す。次回の見積・VEにも効くからだ。今日の現場から、この型でいこう。
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