はじめに:コンクリート打設 段取りで品質と安全を両立
コンクリート打設 段取りが整うと、当日の迷いが減り、品質と安全がぶれません。要点は、計画の見える化と人・物・時間のそろえ方です。むずかしい道具より、前日の確認と当日の合図(合図者の明確化)が効きます。今日はスラブ打設を例に、原因から手順まで、実務の流れで整理します。
なぜ段取りで不具合が起きるのか(原因)
不具合の多くは、情報の断片化と連絡の遅れです。打設計画書が現場に届いていても、版(床面)ごとの打設順序や台数配車が口頭のまま、ということがあります。天候と搬入時間の読みもずれると、コールドジョイント(打ち継ぎ不良)が起きやすいです。さらに型枠の剛性や足場の通路が曖昧だと、安全側に寄せた動線が取れません。
解決の具体策:前日までの準備と見える化
前日チェックリスト(品質と安全の要点)
- 打設計画書の要点を1枚に集約(面積、厚さ、打設順序、配車、待機場所)
- スランプ(軟らかさの指標)・空気量・温度の指定と受入検査の手順を全員で共有
- ポンプ車の設置位置と吐出口、圧送ルート、退避場所を図示
- バイブレータ(棒状振動機)本数と予備、発電・延長コードの確認
- 仕上げ道具と養生(保温・保湿)資材の数量を見積+余裕1~2割
- 合図者・指揮者の指名と合図方法(手旗・無線)のすり合わせ
- 雨天・高温・低温の代替手順(遅延剤、散水、保温マット)の判断基準
当日の体制づくり(人・物・時間)
- ローテーション表を作る(圧送口、均し、端部、階段、仕上げ、片付け)
- 生コン車の到着間隔を15~25分に設定(交通と打込み速度で調整)
- 試験体と受入検査の場所を安全で平らな位置に確保
- 打ち継ぎ位置の合意(目地・梁上など目立ちにくい位置)
- 写真撮影の流れを決める(受入、配合票、開始時刻、打設区画、仕上げ、養生)
終了後フォロー(次工程を早めるひと手間)
- 沈下クラック対策の再押さえ時間を記録(30~90分目安)
- 養生開始・終了の実時刻、温度、風の強さを記録
- 型枠外側のモルタルはねの清掃と安全通路の回復
標準手順:スラブ打設の流れ(例)
- 朝礼で全体周知。危険ポイントと合図方法、退避場所を具体に伝えます。
- 受入検査:スランプ・空気量・温度・塩化物を測定。配合票を写真で保存します。
- ポンプ試し打ち:管内の水・モルタル量を確認し、充てん不足を防ぎます。
- 端部・梁際から開始。型枠・配筋の密な所を先に埋めて流動を安定。
- バイブレータは挿入間隔40~50cm、1点5~10秒を目安に過振動を避けます。
- 均しはトンボで水平を出し、レベル(高さ基準)をこまめに再確認します。
- 打設順序は一方向に流す片押しが基本。逆流を作らず、打ち継ぎは短時間に。
- 仕上げ:タンピング→金ゴテ1回目→再押さえのタイミングを担当者で共有。
- 養生:散水や養生シートで乾燥を抑え、風当たりの強い面を優先します。
- 終了点検:たわみ、ひび、端部の充てん、立上り境界を全員で確認します。
具体例:30m³・ポンプ1台・5人編成のタイムライン
条件は、床厚150mm、面積200m²、30m³、スランプ18cm、気温20℃、生コン車到着20分間隔です。編成は指揮1、圧送口2、均し1、仕上げ1の計5人。1車4m³換算で約8車、正味打設120~150分が目安です。
開始0~15分は端部の充てんに集中し、柱・梁際を先に固めます。15~60分は片押しで中央へ進み、均一にバイブレーション。60~120分で全面を均しきり、金ゴテ1回目。沈下が落ち着く90~150分に再押さえを行い、風上から養生を開始します。
比較として、配車が30分間隔に延びると、待機で打ち継ぎリスクが上がります。この場合は打設区画を小さく切り、見切り材で段差を抑えると無理がありません。逆に15分間隔で人手が不足なら、圧送口を1か所に絞り、搬入導線の交錯を減らすのが安全です。
注意点・失敗しやすいポイント
- 天候急変:雨雲レーダーで30~60分先を確認。通り雨なら一時停止と表面保護、長雨なら配車見直しを早決断。
- 高温乾燥:仕上げ遅延よりも早期乾燥がリスク。散水と日よけ、遅延剤の活用を検討。
- 型枠の膨らみ:側圧は打込み速度に比例。立上り付近は層状打込みと支保工の再点検を必ず。
- 過振動:骨材分離を招きます。浅く短く、多点で丁寧に。棒先が前回の範囲に少し重なる程度。
- 安全動線:ポンプホース下は通路にしない。振れ幅と反力を見込んで立入禁止帯を設定。
まとめと次アクション
段取りの肝は、前日の見える化と当日の合図、そして養生までを含めた一連の流れです。数字で合わせ、写真で残し、手で確かめる。この三つをそろえると、品質と安全は安定します。
- 計画を1枚化し、全員で共有する
- 配車と打設順序を時間で合わせる
- 合図者と退避場所を明確にする
- 仕上げと養生のタイミングを記録する
次の現場では、まず自分の「打設計画書テンプレ」を作り、チェックリスト化してみましょう。小さく始めて、気づきを毎回1つずつ足していくと、段取りはぐんと楽になります。
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