コンクリート数量拾いで迷わない:原因から手順・例題・注意点まで

コンクリート数量拾いの結論とメリット

コンクリート数量拾いは、図面読みと端数処理をそろえればブレは小さくなります。最初に単位や基準を合わせるだけで、発注のムダと不足が減ります。結果として配車と打設(生コンを流す作業)がスムーズになり、残コンや手待ちも抑えられます。この記事は原因から手順、形状別の例までひとまとめにします。

なぜ数量がズレるのか(原因)

いちばん多いのは、厚みや勾配の読み違いです。出来形(完成寸法)の基準面がどこか、かぶり厚(鉄筋から外面までの保護厚さ)を含むかで差が出ます。次に端数の切り方がばらばらで、配車単位に合っていないことです。さらに、型枠(コンクリートの形を作る枠)の残しや欠き込みの見落としもあります。

ずれを防ぐ具体策(チェックリスト)

  • 基準統一:厚みは出来形基準、勾配は高低差で確認。単位はすべてm、m2、m3に統一。
  • 図面層の整理:意匠・構造・設備の食い違いを3点見。優先順位を事前に決めます。
  • 端数ルール:0.25m3刻みで繰り上げなど、配車単位に合わせて固定。
  • 歩留まり(ロス見込み):小規模は2〜3%、複雑形状やポンプ初期ロスは3〜5%を目安。
  • 当日調整枠:現地実測で増減が出ても、最後の1台で吸収できる順番を組む。

数量拾いの手順(ステップ)

1. 図面と条件の確認

構造図で厚みと形状を確定し、意匠図で見付けの納まりを確認します。設備スリーブ(配管の通し穴)や開口は差し引き方法を決めます。スランプ(柔らかさの指標)、骨材サイズ、ポンプ車の有無も先に押さえます。ここで拾いの前提を書面化し、共有します。

2. 形状別の計算式を用意

  • スラブ(床版):面積×厚み。勾配は平均厚=(厚い側+薄い側)/2で近似。
  • 立上り・壁:長さ×厚み×高さ。控え壁や欠き込みは別計算。
  • 柱:断面積×高さ。角欠きや面取りは基本は無視、精度要求で調整。
  • 階段:踏面×段数×幅+踊場。斜辺体積は「投影面積×平均厚」で近似。

捨てコン(基礎下の薄いコンクリート)は、面積×厚みでシンプルに出します。スロープは長辺と短辺の厚みから平均厚を出すと早いです。

3. 余裕と端数処理

拾い合計に歩留まりを掛けます。小規模なら+2%、複雑なら+3〜5%で試算が無難です。配車は4m3や6m3など車種単位に合わせ、0.25m3刻みで繰り上げます。端数は最後の1台に集約し、現地で微調整できるようにします。

4. 発注と当日の調整

打設順に沿って配車を並べます。先行部位は少なめ、後半部位に余力を置くと安心です。初荷はポンプのプライム(配管内に生コンを通す準備)で0.2〜0.3m3ほど余分に見ます。現場配車表と工場への注文控えは同じ数値でそろえます。

具体例で理解を深める(数値あり)

例1:スラブ100m2、厚み150mm、勾配なし

基礎式:V=面積×厚み=100×0.15=15.0m3。歩留まり+3%で15.45m3。配車は6m3×2台+3.5m3×1台=15.5m3で手当て。端数0.05は現地調整で吸収します。

例2:立上りL=40m、厚み200mm、高さ600mm

V=40×0.2×0.6=4.8m3。開口差引0.2m3で4.6m3。歩留まり+3%→4.738m3。配車は4m3+1m3=5.0m3で安全側。型枠の通りと継ぎ目の漏れ止めも合わせて点検します。

例3:階段 12段、踏面300mm、蹴上170mm、幅1.2m、踊場1.2×1.2m

投影面積=踏面0.3×12×1.2=4.32m2。平均厚は蹴上分を考え0.17m相当と近似し、V≒4.32×0.17=0.734m3。踊場は1.44×0.12(厚み)=0.173m3。合計0.907m3。歩留まり+5%→0.952m3。配車は1.0m3で発注します。

見落としやすい注意点(安全・品質)

  • かぶり厚の取り方:外周部は型枠面から、スラブは上下面の両方で確認。鉄筋との干渉は先に解消します。
  • ポンプ車の選定:配管径と水平・垂直距離で能力が変わります。余裕のある機種を選びます。
  • 残コン対策:最後の1台は遅着でも回るよう、打設区画を可変に。洗い水の処理場所も事前確保。
  • 暑中・寒中の補正:スランプ変化や打継ぎ時間に影響。打設時間帯と人員を増やしてリスクを下げます。
  • 出来形確認:見付け基準で厚みを打設前にマーキング。レーザーで通りと高さを小まめに確認します。

比較でわかる効率化の勘所

同じ100m2スラブでも、端数の切り方で配車が1台変わることがあります。0.25m3刻みでそろえるだけで、余りと不足の両方が減ります。複雑形状は分割拾いが効きます。四角形に近いブロックに分け、最後に合算するだけで、計算ミスも減ります。

打設計画と連動させる(配車・段取り)

配車は「先薄・後厚」で組むと現地調整が楽です。ミキサー車(生コンを運ぶ車)は交通事情で遅れます。余裕時間を1台ぶん見ておきます。打設の山は2時間を越えないよう、人員とバイブレータ(締固め工具)を増減します。安全上、足場と照明は十分に確保します。

社内標準を作る(ひな形と共有)

拾い表のテンプレを作り、単位、端数、歩留まり欄を固定します。現場ごとの補正値は備考に残します。打設後は出来形と打設量を突合し、次現場に反映します。こうした小さな標準化が、全体のムダを確実に減らします。

まとめと次アクション

  • ズレの主因は「基準不統一」と「端数処理」。ここをまずそろえる。
  • 形状別の式と歩留まりを先に決め、配車単位で繰り上げる。
  • 打設順と配車を連動。最後の1台で現地調整できる計画に。
  • 打設後は実績を記録し、次の拾いに活かす。

次アクションとして、直近3現場の拾いと実績を1枚にまとめ、端数と歩留まりの傾向を見える化しましょう。チームで共有すれば、次回からの配車判断がぐっと楽になります。

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