コンクリート打設 段取りで品質と安全を両立する実務ガイド

コンクリート打設 段取りが整うと、品質と安全がいちどに安定します。無理のない流れを作れれば、手戻りや残業も減ります。この記事では、原因→具体策→手順→例→注意点の順で、現場でそのまま使えるコツをまとめます。

なぜ段取りで不具合が起きるのか(原因)

原因はたいてい「情報のズレ」と「人と物のタイミング」です。配合やスランプ(やわらかさ)の共有が足りず、レミコン(生コン車)と圧送の呼吸が合わないことが多いです。
また、気温や風、日照の読みが甘く、打重ね時間(層の間の許容時間)を超えがちです。安全では、足場の通路や逃げ道が不足し、搬入動線が交錯するのもよくある要因です。

具体策:段取りの4本柱(人・物・時間・情報)

  • 人:責任の所在を一目で。指揮者、圧送、締固め、押さえ、試験体(供試体)担当を名札や腕章で明確化。
  • 物:予備を1セット。バイブレーター(締固め機)、ホース、こて、ホースバンド、温度計はバックアップを用意。
  • 時間:30分先読み。打重ね時間の目安を区画ごとに設定し、遅れたら区切り変更の合図を決める。
  • 情報:一枚シート。打設計画(数量、配車、配合、スランプ、打継ぎ位置、試験)をA3一枚で全員に共有。

標準手順(前日〜当日〜打設後)

前日:計画と試走

  1. 配合・スランプ・空気量の確認。設計値と現場の求める仕上がりをすり合わせます。
  2. 配車計画を10〜15分ピッチで作成。渋滞や現場進入の余裕も入れます。
  3. 圧送機の立ち位置とホース長を現地合わせ。届かない箇所を先に洗い出します。
  4. 避難ルートと通路巾を再確認。片側通行での誘導員を配置します。
  5. 試験体の型枠、番号札、記入用ペンをセット。3本1組を基本に余分を用意。

当日開始前:品質と安全のスタート確認

  1. 朝礼で役割と合図を共有。中止基準(雨量・気温)もここで確認します。
  2. 先行打継ぎ面の清掃。レイタンス(白い粉膜)を除去し、湿潤状態に整えます。
  3. 初便で受入試験。スランプ、空気量、温度を測定し、温度は記録します。
  4. バイブレーター予備機の始動確認。電源・燃料も再点検します。

打設中:流れを切らさない運用

  1. 打込みは層厚30〜50cmを目安。バイブレーターは20〜30秒、前層へ10cmほど挿し込みます。
  2. コールドジョイント(打継ぎ不良)を避けるため、打重ね時間のカウントを係が通告します。
  3. 角と柱周りは先に細かく。鉄筋密度が高い箇所は細径ノズルでゆっくり入れます。
  4. 暑い日は打込み速度を上げすぎず、日陰養生と散水で表面乾燥を防ぎます。

打設後:仕上げと養生

  1. 天端はトロウェル(仕上げ機)が入る前に、沈みを見て追い押さえします。
  2. 表面が乾きやすい場合はシート養生や散水。気温30℃超では特に早めに行います。
  3. 供試体は24時間以内に脱型し、所定の水中または封かん養生へ。
  4. 打継ぎ面の仕上がりを点検。蜂の巣(空洞)があれば早期補修を検討します。

具体例:夏場32℃、柱300×600で20m³のケース

条件が厳しい夏場は、スランプ18±2cm、AE減水剤(空気入りの流動化剤)を使うケースが多いです。配車は10分ピッチで12台、初便を早めに入れて受入試験と流動性の確認を先行します。
圧送は5.5インチ→3インチの段変換を短めにし、圧損を抑えます。柱周りは細径ホースを追加し、密な鉄筋でも詰まりを防ぎます。

打重ね時間は30分を目安に区画割り。万一遅れが出たら、打継ぎ位置を梁際に変更し、レイタンス除去とエポキシ系接着剤(接着用樹脂)を準備してリカバリーします。
養生は散水+シート。午後の直射を避けるため、風上側からシートをかぶせ、めくれ防止のテープを多めに貼ります。

注意点と安全:圧送・バイブレーター・打継ぎ

  • 圧送ホースの振れ止めは必須です。人通りの上は通さないでください。やむを得ない場合は防護と立入禁止を徹底します。
  • バイブレーターは型枠(型の板)に強く当てません。型枠の浮きやはらみの原因になります。先端を垂直に入れて、ゆっくり引き上げます。
  • 打継ぎ面は濡れ過ぎも乾き過ぎも避けます。しっとり湿潤が基本です。レイタンスは必ず除去してください。
  • 雨天は5mm/h以上の降雨が続く予報なら中止も検討します。無理をせず、養生材と覆いで次回へつなぐ判断が安全です。
  • 冬期はコンクリート温度5℃未満に注意。加温や配合調整を事前に協議します。

よくあるつまずきと小ワザ

  • スランプ低下:配車間隔が空くと下がりやすいです。ピッチ短縮か、現場流動化剤(指定の可使剤)を事前申請します。
  • 表面のひび(プラスチック収縮):風速3m/s超で起きやすいです。打設中から霧状散水と早めのシート養生で抑えます。
  • 蜂の巣:鉄筋密集部は先行して細骨材リッチな部材周り用の流し込みを検討。過振動も避けます。
  • 出来形の波:天端ビード(盛り上がり)は早めにつぶし、レーザーや水糸で基準を見える化します。

まとめ:明日の打設に向けたチェック

  • 一枚シートで役割・配車・品質条件を共有する
  • 予備の機材と養生材を1セット多く用意する
  • 打重ね時間の目安を区画ごとに決め、合図も決める
  • 受入試験・温度・天候の記録を残す
  • 無理はしない。安全最優先で中止基準を持つ

段取りが整うと、現場はぐっと楽になります。次は、配筋の事前確認と型枠の逃げ寸法も合わせて点検すると、打設当日の詰まりや手戻りがさらに減ります。

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