配筋検査 チェックリストが手元にあると、確認漏れが減り、是正も早くなります。スラブと梁にしぼって、外さない要点を整理します。忙しい朝でも回せる流れを示し、写真と記録までを一気通貫にします。今日から現場でそのまま使えます。
なぜ不具合が起きるか(原因)
図面と現場の差異が、いちばんの原因です。寸法の読み違いと、鉄筋の干渉が重なると、かぶり不足が出やすいです。かぶり厚(鉄筋からコンクリート表面までの距離)が確保できない位置は、早い段階で指摘します。段取り不足や写真不足も、是正に時間をかける理由になります。だから、要点の先読みと、定型の撮り方が効きます。
すぐ効く具体策(チェックの型を作る)
- 図面3点セットを携帯:意匠・構造・配筋詳細。相互確認を徹底します。
- 優先順位を固定:かぶり→位置→ピッチ→定着→継手→補強筋の順で見ます。
- スペーサー(かぶり確保の支持材)は種類とピッチを先に確認します。
- 通し番号のマスキングテープで、是正箇所を現場と写真で一致させます。
- 撮影は「全景→中景→近接→スケール入り」の4点セットで固定化します。
この型に当てはめるだけで、見落としが大きく減ります。誰が回しても同じ品質になります。書式はシンプルで良いです。後で検索できる名前付けにしておきます。
現場での手順(スラブ・梁)
スラブの配筋検査
- 安全確保:転落・踏み抜き防止を最優先にします。通路と足場を確保します。
- かぶり厚:スペーサーブロックの種類と高さ、配置ピッチを確認します。かぶりは図面優先です。
- 鉄筋ピッチ:主筋・配力筋のピッチと交点の結束を見ます。端部の割付も確認します。
- 開口補強:スリーブまわりの補強筋、定着長さ(鉄筋を定着させる必要長さ)を見ます。
- 継手位置:継手(鉄筋のつなぎ)の重ね長さ、同一断面内のずらし配置を確認します。
- あき:鉄筋相互と型枠とのあき(すきま)をスケールで実測します。
- 写真:レベルや通り芯表示と一緒に、全景→近接→スケール入りで撮ります。
梁の配筋検査
- 安全確保:高所は親綱とフルハーネスを使用します。踏み台の安定を確認します。
- 主筋の本数・径:上端・下端の本数と定着位置、フックの向きを見ます。
- スターラップ(せん断用の帯筋):ピッチ、定着、継手の位置を確認します。
- 定着長さ:梁端部や柱梁接合部の必要長さを、図面値で確認します。
- 段差・貫通部:スリーブ・インサートとの干渉と補強筋の有無を見ます。
- かぶり厚:スペーサーの種類と間隔、型枠面からの距離を実測します。
- 写真:梁天端、側面、定着部をそれぞれ近接で押さえます。
例で理解する(数値と判断基準)
図面優先が大原則です。ここでは見方の例を示します。数値はあくまで読み方の手引きです。現場の標準仕様と整合させてください。
- 定着長さの読み方:例「40d」の指定なら、D16は640mm、D13は520mmです。端部の曲げ戻しが必要かも確認します。
- 重ね継手:例「40d」かつ「継手位置ずらし1/3以内」などの指定を見落とさないようにします。
- ピッチ:スラブ@200指定なら、端部の割付寸法が端から半ピッチになることを確認します。
- かぶり厚:屋内スラブ例で40mm指定なら、スペーサー厚と型枠の狂いを合わせて実測で確認します。
- 開口補強:開口辺長が300mm超なら、周囲の補強筋と帯筋ピッチの変更指示を探します。
このレベルの数値感を持つと、図面にない違和感に気づきやすくなります。異常に短い定着、端部の結束抜け、補強筋の省略。小さなサインを写真で残します。
写真管理と記録(通る検査のコツ)
写真は「同定」が命です。どこを、いつ、誰が、どう測ったかを示します。通り芯と階、部位、方向を1枚に入れます。スケールは目盛りが読める角度にします。ファイル名は「日付_階_部位_項目_通番」で統一します。
- 全景:部位全体がわかる高さから。通り芯表示と合わせます。
- 中景:対象部の1〜2メートル範囲。補強筋まで識別できる距離です。
- 近接:ピッチやかぶりの数値が読める距離。スケールを必ず入れます。
- 是正前後:番号札を活用し、前→後の対にします。合否の根拠になります。
帳票は、チェックリストと写真一覧をひとつのPDFにします。検査の場で迷いません。承認が早く進みます。
よくあるミスと注意点(安全含む)
- スペーサー不足:数量が足りないと、かぶり不足が出ます。搬入時に数量と種類を先行確認します。
- 結束忘れ:交点の抜けは打設時に動きます。端部と補強筋は特に重点確認します。
- 干渉未解決:スリーブやインサートとの競合は前日までに是正します。現場判断の切断は避けます。
- 写真不足:測定値のない写真は証拠になりにくいです。スケールと通り芯を入れます。
- 安全軽視:高所での無理姿勢は転落の原因です。足場と照度を必ず確保します。
迷ったら止めます。図面と要領書、監理者の指示を再確認します。打設後は見えません。前日までの是正が最小コストです。
まとめ(現場での回し方)
優先順の型を守るほど、検査は速くなります。かぶり→位置→ピッチ→定着→継手→補強の順です。写真は4点セットで固定化します。記録は現場全員が同じ様式で持ちます。明日からの検査でそのまま使ってみてください。
要点チェック(携帯メモ)
- 図面3点と要領書を持つ
- スペーサー種・高さ・ピッチ
- ピッチと端部割付
- 定着長さと継手位置
- 開口補強と干渉解消
- 写真は全景→中景→近接→是正前後
次アクションとして、現場用の自社チェックリストを1ページで作りましょう。今日の内容を土台に、物件ごとの注意点を追記すれば、チームで共有しやすいです。
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