コンクリート打設 段取りが整うと、ムラや手戻りがぐっと減ります。品質と安全を両立しやすくなり、工程の遅れも防げます。この記事では、原因から手順までを一気に確認できるようにまとめました。
なぜ段取りで品質差が出るのか(原因)
打設は時間との勝負です。人と機械と生コン(現場へ届くコンクリート)のテンポがずれると、コールドジョイント(打継ぎ不良)が出やすくなります。
材料の性状が設計とずれることもあります。たとえばスランプ(やわらかさの指標)が大きいと流れやすい反面、分離しやすくなります。逆に小さいと締固めに力が要ります。
さらに、型枠や配筋の事前チェック不足も原因です。開口周りや梁成の深い場所は、バイブレータ(締固め用の振動機)の届き方にムラが出ます。照明や通路が足りないと、作業が遅れ、品質も落ちます。
具体策(打設計画と体制)
打設計画の作り方
まず、打込み量と時間を見積もります。1時間あたりの圧送(ポンプで送る)能力、生コン車の回転数、作業員の人数でテンポを決めます。打設順路は高い位置から低い位置へ、遠い位置から近い位置へが基本です。
配合は図面と整合させます。スランプや空気量(耐久性に関わる空気の割合)、呼び強度を事前に確認します。必要に応じて試験練り(事前の性能確認)を行います。
受入検査と品質管理
現場到着後は必ず受入検査をします。スランプ、空気量、温度、単位水量の確認は外せません。試料を採取し、圧縮強度試験体も確実に作ります。
記録はその場で残します。予定値から外れたら、無理に受け入れず、製造所と相談します。微調整は現場での加水ではなく、原則として工場側で行います。
人員配置と役割分担
ポンプオペ、先棒(先端を誘導する人)、バイブレータ、ならし、仕上げ、交通誘導、品質記録、写真の役割をはっきり分けます。初動の5分は人を厚めに置き、リズムを作ります。
安全担当を一人固定します。合図は音と手信号を統一します。危険な合図は使いません。バックやブーム旋回時は立入禁止を徹底します。
天候・気温のリスク対応
高温時は打込み速度を少し上げ、締固めと押さえを途切れさせません。散水ミストや日よけを準備します。低温時は保温材と加温養生(温度を保つ養生)を計画に入れます。
雨が予想される日は、雨仕舞い(雨を避ける覆い)と表面水対策を準備します。豪雨の恐れがあれば、無理にやりません。打設は安全と品質が折り合う時に行います。
手順(開始前〜養生まで)
- 朝礼で計画共有。打設順路、避難経路、合図を全員で確認します。
- 型枠・支保工の最終点検。締め付け、根太・大引のたわみを確認します。
- 配筋のかぶり(鉄筋表面からのコンクリート厚)とスペーサー位置を再確認します。
- 打設機械の試運転。ポンプの圧送試験、バイブレータの動作確認を行います。
- 生コン受入検査。スランプ、空気量、温度、試料採取を確実にします。
- 遠い箇所から打込み開始。層厚は30〜40cm程度を目安にします。
- バイブレータは挿入間隔50cm前後、1点5〜15秒。前層へ10cmほど食い込ませます。
- 天端(上面)はすり切り→トンボ→金ごての順でならします。仕上げ時に加水はしません。
- 初期養生。直射日光・風を避け、散水やシートで水分を保ちます。
- 打設後は見回り。漏れ、ひび、沈下跡がないかをチェックし、記録します。
数値の目安と小さな工夫(具体例)
打込み速度は、スラブで10〜15m3/h、梁柱・壁で6〜10m3/hがひとつの目安です。人員は100m3で8〜12名が目安ですが、形状と搬入距離で調整します。
暑い日は打込み開始を30分早め、休憩を短く刻みます。バイブレータは軽いモデルを予備含め2台以上準備します。電源は別回路に分け、トラブル時も止まらないようにします。
梁天端の止水テープ(継ぎ目の防水材)は、打込み直前に再確認します。コーナー部は人を厚くし、短いピッチで締固めます。写真は部位ごとに「前・中・後」をそろえます。
よくある失敗と予防(注意点)
- コールドジョイント対策:打継ぎ時間を空けない。人手が薄い区画を作らない。合図は一元化します。
- ジャンカ(豆板)対策:鉄筋密集部は先行モルタルやトレミー(縦管)で充填性を上げます。
- 表面ひび対策:強風や高温時は散水とシート養生を増やし、仕上げのタイミングを早めます。
- 騒音・近隣対策:始業時刻の配慮、誘導員の配置、洗浄水の飛散防止を徹底します。
- 安全:ブーム直下は立入禁止。バック時は指差し呼称。墜落・挟まれの恐れがある場は監視を置きます。
まとめと次アクション
段取りのカギは、テンポと情報の見える化です。受入検査、打設順路、役割、合図を事前に固め、当日は「止めない・焦らない・戻らない」を意識します。数字の目安と記録を揃えると、品質も安全も安定します。
次の現場では、この記事の手順を朝礼資料に落とし込み、チェックリスト化してみてください。終業後に良かった点・詰まった点を3つずつ書き出し、次回の段取りに反映させましょう。
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