コンクリート打設 気を付けるポイントを先に押さえれば、暑い時期でも品質を安定させられます。結論は、温度管理と段取り前倒し、そして養生の徹底です。ここでは原因から具体策、手順、実例、注意点までを一気通貫でまとめます。
暑中打設で品質が乱れる原因
暑い日ほどスランプロス(やわらかさ低下)が早く進みます。バイブレーター(締固め機)の効きもムラになりやすく、ジャンカ(豆板)を招きます。表面は早く乾き、内部はまだ水が多いというバランス崩れが起きます。
受入温度が高いと水和反応(硬化の化学反応)が加速し、打ち重ね時間(前層と次層の許容時間)が短くなります。運搬や待機が長いと、コールドジョイント(不良な継ぎ目)の原因になります。風が強い日は蒸発が増え、ひび割れの芽が増えます。
具体策:計画・人員・材料・設備の見直し
計画(時間と区画)
- 早朝着工に切り替え、直射が強い時間帯を避ける。
- 打設区画を小割にして、打ち重ね時間を20〜30分以内(外気35℃目安)に収める。
- ポンプ車位置とホース動線を短くし、待ち時間を減らす。
人員(人数と役割)
- 先行ならし、締固め、均し、仕上げに役割分担。交代制で疲労と熱中症を防ぐ。
- 監督は先行温度計測と打重ねのタイムキーパーに専念。
材料(配合と添加剤)
- 呼び強度は設計どおり。スランプ(軟らかさ)は過大にせず、遅延剤(凝結を遅らせる薬剤)を検討。
- 受入温度は35℃以下を目安。プラントへ「暑中仕様(低温出荷・遅延剤)」を事前指示。
設備(冷却・散水・遮熱)
- 型枠と鉄筋に散水して素地温度を下げる(過水は避ける)。
- 日覆いシートで直射を遮る。ホースや配管の直射も避ける。
- 表面養生はシート養生+散水を組み合わせ、乾燥を抑える。
当日の手順:段取りから養生まで
前日〜当日朝の準備
- プラントへ到着時刻を再確認。車列間隔を10〜15分に設定。
- 温度計とスランプコーン(流動性の試験器具)、打重ね計時のタイマーを準備。
- 散水ラインと日覆いシートを設置し、鉄筋・型枠温度を事前に下げる。
受入検査(品質の入口)
- 受入温度、スランプ、空気量を確認。温度が高ければ遅延剤追加の是非を即判断。
- 所定外なら無理な加水はしない。配合調整はプラント判断で再手配。
打設中(スピードと一体化)
- 打込みは層厚30〜40cm程度を守る。各層でバイブレーターは垂直に素早く、過振動は避ける。
- 打ち重ねは前層がまだ塑性(やわらかい)状態で行い、インターバルを短く保つ。
- 表面が乾く前にトンボで均し、必要に応じて散水ミストで乾燥を抑える。
仕上げと初期養生
- 湿潤シート+散水で表面の水分を保持。風が強い日は蒸発抑制剤(膜形成剤)も検討。
- 打設後の2〜3時間が勝負。光沢が消えるタイミングを逃さず金ごて仕上げ。
- 夜間も乾燥が進むため、翌朝まで連続して湿潤状態を保つ。
現場の具体例と数値の目安
小規模フーチング(厚さ60cm)では、2台回しで車列間隔10分、1区画あたり30分以内で完了が安全です。打込み速度の目安は1.0〜1.5m³/人・時。層厚は35cmで統一すると、締固めのムラが減ります。
中規模スラブ(300m²×厚さ150mm)では、区画を3分割し、ポンプの振り替えを最小化します。遅延剤を標準量の0.5〜1.0倍で試験し、受入温度32〜34℃で運用すると安定します。表面は蒸発抑制剤→シート→散水の三段で守ります。
外気35℃・風速3m/sの条件では、打ち重ね許容は20〜30分が限界目安です。計時役を置き、次層の人員を先行待機させると、コールドジョイントの発生率が目に見えて下がります。
ありがちな失敗と注意点(安全含む)
- 加水でスランプ調整はしない。強度低下とブリーディング(上水)増の原因。
- バイブレーターの横引きは避ける。鉄筋接触は短時間で、かぶり不足も確認。
- 暑さ対策は義務。こまめな給水、塩タブレット、休憩所のミストと送風を準備。
- 型枠・足場の転落・踏み抜き防止に足場板の固定と立入管理を徹底。
- 打設路の段差・ぬかるみは前日に補修。車両誘導は反射ベストで明確に。
まとめ:明日からの実行ポイント
- 受入温度35℃以下、打ち重ね20〜30分以内を合言葉に。
- 早朝開始・区画小割・役割分担でスピードと品質を両立。
- 散水・日覆い・湿潤シートで乾燥を抑え、夜間も養生を継続。
- 加水はしない。配合はプラント連携で正攻法に調整。
まずは次回打設で「受入温度の記録」と「打重ねタイムキープ」を始めましょう。小さな見える化が、品質トラブルの芽をぐっと減らします。
コメント