コンクリート打設 段取りを整えると、品質と安全、工程が安定します。今日は原因から具体策、手順まで一気に整理します。明日の段取りにそのまま使える形でお伝えします。
なぜ段取りで品質がぶれるのか(原因)
ぶれの多くは、打設計画のあいまいさにあります。数量の読みや配車間隔、打設順の擦り合わせが弱いと、待ちやダマが出ます。
次に、用語の解像度です。スランプ(やわらかさ)や打ち継ぎ位置の理解がずれると、現場で判断が割れます。
さらに、機材の準備不足も響きます。バイブレーター(締固め機)の台数、ホース長、予備電源が足りないと、詰まりや遅れにつながります。
環境も大きいです。高温や低温、風や雨への配慮が薄いと、仕上げや強度に影響が出ます。
打設を安定させる具体策(計画と事前決め)
- 配合とスランプの合意:仕様書と施工計画書を確認し、例としてスラブは18±2cm、壁は12±2cmを目安に合わせます。
- 配車計画:トラック到着間隔は10〜15分、現場滞留は90分以内を基準にします。遅延時の待避案も決めます。
- 打設順路:離れた隅から奥→手前へ。一層の厚みは50cm以下、リフト高は1.5m以下で無理をしません。
- 役割分担:受入検査、圧送、締固め、レベリング(高さ調整)、安全監視を人で固定します。合図員を1名置きます。
- 代替案:ポンプ不調時の中止判断、ミキサー振替、スランプ調整の限界を事前に決めておきます。
手順とチェックリスト(打設前・中・後)
打設前:受入と準備
- 受入検査:納入伝票、配合、スランプ、空気量、温度を確認します。標準の抜取頻度で試験をします。
- 型枠と配筋:かぶり、スペーサー、フォームタイ、貫通部の塞ぎを目視します。天端(上面)の基準マークも出します。
- 動線と安全:ホース経路、足場、照明、退避路を確保します。転倒や挟まれ防止の養生をします。
- 機材:バイブレーターは2台+予備1。延長コードは容量に余裕を持たせます。レーザーレベルは電池を予備含め用意します。
打設中:安定流動と締固め
- 圧送:ポンプ車のストロークを一定に保ちます。詰まり時は無理押しをせず、すぐ逆送・清掃をします。
- 締固め:バイブレーターの挿入間隔は30〜40cm、1か所5〜10秒。前層に10cmほど重ねます。鉄筋や型枠に接触させません。
- 打ち継ぎ:やむを得ず切るときは、水平ならレイタンス(弱い層)を後で除去できる位置に。鉛直では隅や開口を避けます。
- レベリング:天端マークを基準に、トンボやスクリーードで均し、すぐ表面の泌水を見ます。過度なこて押さえはひびの原因です。
打設後:仕上げと養生
- 初期仕上げ:泌水が収まってから押さえます。早すぎははがれのもと、遅すぎは凹凸になります。
- 養生:気温5〜35℃を目安に、乾燥や急冷を避けます。散水やシート養生で湿潤を保ちます。最低5〜7日は保ちます。
- 翌日点検:天端レベル、ジャンカ(豆板)、ひび、型枠のはらみ痕を確認します。必要なら補修計画を立てます。
数値で見るミニモデル(床スラブの例)
たとえば200m²、厚さ120mmのスラブです。必要数量は約24m³、余裕を見て25m³を手配します。ポンプは3〜4時間で計画します。
配車は10台と仮定し、15分間隔で流します。先行班は配管と打設、後追い班は締固めと均し、仕上げ班は天端を見ます。
スランプは18cm、空気量4.5%で指定します。夏場は遅延材(凝結を遅らせる薬剤)を使い、到着温度は30℃以下を目指します。
バイブレーターは軸径30mmを2台、深い部位は40mmを用意します。ホースの曲げ半径は無理をせず、作業半径を可視化します。
よくあるつまずきと注意点
- コールドジョイント(打継ぎ不良):到着遅延や人手不足で起きます。切るなら計画的に、再開時は表面処理と再締固めを徹底します。
- 圧送トラブル:配管の上がりすぎや急角度は詰まりやすいです。曲がりは少なく、吐出の立上げは低速から行います。
- 天候リスク:雨は表面の粉化、高温は急乾燥のひびを招きます。雨天はブルーシート、高温は打設時間を前倒しします。
- 型枠のはらみ:支保工の間隔や締付不足が原因です。事前の見回りと、打設中の監視を欠かしません。
- コミュニケーション:合図が飛び交うと誤解が出ます。手旗や無線の合図を一本化し、誰が止めるかを決めておきます。
安全のポイント(言い切り)
- 合図員を1名置き、合図以外で機械を動かしません。
- 配管下に人を入れません。吊り荷の下も同様です。
- PPE(保護具)はヘルメット、手袋、長靴、保護メガネを必ず着用します。
- 足場の開口や段差は先に塞ぎ、照明は影が出ない位置に設置します。
まとめと次アクション
段取りの鍵は、配車と順路、役割の三つです。数値の目安で会話を合わせ、代替案を先に決めておくと、現場は落ち着きます。
まずは次の打設で、受入チェック表と役割表を1枚にまとめて持ち込みましょう。終わったら、良かった点と詰まった点を30分でふりかえります。
- 配車は10〜15分間隔、滞留は90分以内
- バイブ挿入は30〜40cmピッチ、5〜10秒
- 養生は5〜7日、温度と乾燥を管理
- 合図員を固定し、合図以外で動かさない
次アクションとして、現場仕様に合わせた「打設前・中・後のチェック表」をつくり、朝礼で共有してみてください。小さなズレが先に消え、当日の判断が楽になります。
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