型枠工事 段取りの基本と実務チェック

型枠工事 段取りを整えると、手戻りが減り、打設も安全に進みます。最初に迷いや抜けを減らすのがいちばんの近道です。この記事では、つまずく原因と対策、実務の手順をやさしく整理します。

型枠工事が滞る原因を見える化

原因が分かると、段取りは軽くなります。多くは「情報」「物」「人」「安全」の四つに分かれます。どれも少しずつのズレが、後半で大きなロスになります。

情報不足(図面・納まり・先行)

図面差異や納まり(部材どうしのおさまり)の曖昧さが初動を鈍らせます。先行スリーブ(貫通用管)やインサート(金物埋込み)の指示が遅いと、型枠の加工が止まります。墨出し(基準線の表示)の精度が低いと、通りと寸法で揉めやすいです。

資材・金物の手配遅れ

面木(角を取る木材)や目地棒、セパレーター(型枠間の締結金物)、パネル不足はありがちです。支保工(型枠を支える仮設)の単管や鋼製支柱も数量がぶれます。搬入動線と仮置き場の計画がないと、運ぶだけで半日消えます。

人員配置と手順のミスマッチ

梁先行か壁先行かで、必要な技能が変わります。段取り替えの回数が読めないと、型枠大工の手が遊びます。検査待ち時間を見ていないと、打設までの工程が詰まります。

安全計画の抜け

足場の先行と養生(保護)の不足は、転落や落下の芽になります。支保工計算(許容荷重の検討)や倒れ止めの計画が遅れると、作業を止めざるを得ません。安全は「先に用意」が鉄則です。

具体策:段取りの型を作る

毎回いちから考えないために、型(テンプレ)を決めます。現場の条件に合わせて微調整すれば、精度が上がります。習慣にすると、情報共有も早くなります。

段取りカレンダーと逆算

打設日から逆算して、マイルストーンを線で結びます。例)D-10図面確定、D-7資材確定、D-5搬入、D-3建込み着手、D-1清掃・検査。各日に「責任者」と「完了条件」を明記します。

事前確認リスト

  • 墨出し:通り芯・レベル(高さ基準)・開口位置
  • インサート・あと施工アンカー:型番・ピッチ・位置
  • 先行スリーブ:径・本数・立上り高さ・固定方法
  • 面木・R面木(角を丸める材):サイズ・数量
  • セパ・フォームタイ:長さ・座金・穴位置
  • 止水テープ:継ぎ・交差部の納まり

リストは紙一枚にまとめ、朝礼で指差し確認します。迷いを現場に持ち込まないことが大切です。

調達の締切と代替案

品薄が続く資材は早めに押さえます。代替材の承認ルート(監理者・設計)を先に決めておくと、止まりません。数量は「拾い(数量算出)」の根拠を簡単に書き残すと、再発注が楽になります。

標準手順:スラブ・梁・壁の一体現場

ここでは一般的なRCの1フロアを想定します。安全と品質は言い切ります。近道はしないで、段階を守ります。

0日目:キックオフと図面レビュー

施工図・配筋図・設備図を重ね、干渉を洗います。特に梁下インサートとダクトスリーブは要注意です。検討結果はスケッチで共有し、現場に貼ります。

1–2日目:墨出しと材料搬入

通り芯とレベルを二重チェックします。パネルは区画ごとに束ね、目印を大きく書きます。搬入は重い物から奥へ、軽い物を手前へ置くと動線が楽です。

3–5日目:建込み・締固め・検査

  1. 壁・柱の建込み:通りと直角を都度確認(下げ振り・スコヤ使用)
  2. 梁せい確認:ハンチ(梁の根元の増厚)や段差を実測
  3. セパ組みと締付け:トルクは均一に。締め過ぎ注意
  4. ラス張り・隙間止め:モルタル漏れの芽を潰す
  5. 中間検査:第三者の目で歪みと通りを点検

検査は「記録写真(撮影位置・方向・スケール)」を残します。後で効きます。

打設前日:清掃・止水・安全

ジャンカ(豆板)防止のため、内部を清掃します。打継ぎ面はブラシで目荒らし、止水材の重ねを再確認します。開口周りの養生と落下防止は、手を抜かないでください。

脱型と後処理

脱型(型枠外し)は強度と気温で判断します。支保工の存置期間は構造計算の指示に従います。欠けは早めに補修し、セパ穴は止水モルタルで確実に詰めます。

具体例:RC3階建て 1スパンの段取り

延べ300㎡、梁せい600、壁厚200を想定します。型枠大工6名、手元2名、揚重はクレーン1日1回です。保守的に見て、建込み4日+検査0.5日+打設1日が目安です。

  • 資材:パネル90枚、根太(支え材)120本、セパ900本、面木120m
  • 搬入:D-5一括、D-2不足分追加。仮置き20㎡確保
  • 検査:D-1午前社内、午後監理者。是正箇所はその場でマーキング
  • リスク:梁下インサートの位置ずれ、設備スリーブの忘れ

数字を出すと、資機材と人の手配が揃いやすくなります。迷いが減り、会話が要点だけになります。

注意点:品質・安全・コストの落とし穴

寸法と通りの管理

通り芯ずれは仕上げで消せません。3メートルごとに通りを見直し、対角で歪みを測ります。記録は野帳に残し、日付と測点を明記します。

セパ穴と漏水対策

セパ穴は外構や仕上げで隠れても、水は正直です。止水コーンと止水モルタルの組合せを標準にします。外壁は二重止水を基本にし、検査は散水で確認します。

コールドジョイント防止

打設間隔が空くと継ぎ目が出ます。人員と台数を先に確保し、打設手順を一本化します。バイブレータ(締固め機)の本数と担当を決め、合図を統一します。

支保工と荷重の考え

支保工は積載荷重と打設時の動荷重を見ます。倒れ止め、火打ち(斜材)を適切に入れます。安全はやり過ぎくらいでちょうどよいです。

まとめと次のアクション

段取りは「先に決めること」を習慣にすると、現場が落ち着きます。今日の打合せで、打設から逆算したカレンダーと事前確認リストを配りましょう。写真と記録を残し、次のフロアでまた楽をしましょう。

  • 原因は「情報・物・人・安全」に分けて潰す
  • 逆算カレンダーと一枚リストで迷いを減らす
  • 標準手順を守り、検査と記録をセットにする
  • 品質・安全は言い切って守る。近道はしない

次の一歩として、自分の現場版リストを5分で作り、朝礼で共有してみてください。きっと明日の段取りが軽くなります。

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