結論:配筋検査チェックリストで現場が安定
配筋検査チェックリストを先に整えると、見落としが減り、手戻りと打設の遅れを防げます。
図と写真を添えた短い項目にし、誰が見ても同じ判断になる形にするのが要点です。
安全と品質は分けずに一枚にまとめ、優先度の高い順で並べます。
このやり方なら、1~5年目の監督でも、検査の精度とスピードを両立できます。
なぜ見落としが起きるのか(原因)
図面と現場のズレが、気付きにくい形で積み重なることが多いです。
例えば、スラブ端部のかぶり(鉄筋からコンクリート表面までの厚み)が、型枠の芯ズレで数ミリ変わることがあります。
この小さなズレが、通しの主筋(メインの鉄筋)や定着(鉄筋の埋め込み長さ)に波及します。
時間が押すと、写真と寸法のどちらかが抜けやすく、記録が薄くなるのも一因です。
よくあるつまずき
- 図面の記号読み違い(D13とD16の混在、ピッチP=150/200の取り違え)
- 加工帳の変更が職方へ伝わらず、現場に旧仕様が届く
- スペーサー(かぶり確保材)の数量不足で仮置きのまま固定忘れ
- 開口補強(スリーブ周り)の追加筋が、他 trades の先行作業で抜ける
具体策:チェックリストの設計
一覧に詰め込みすぎず、現場で見る順(足元→腰→目線→頭上)で並べます。
各項目は「見る位置」「OK範囲」「採寸方法」「撮る角度」をセットにします。
記述は短く、数字は範囲で示します(例:かぶり=25±5mm)。
最後に「止め」の総合確認欄を設け、誰がいつチェックしたかを明確にします。
項目例(RCスラブ・梁)
- かぶり厚さ:端部・底部 25±5mm(スケールで直角に測る、写真1枚)
- 主筋径・本数:D13/6本 など図面一致(マーキングで追跡、全景写真)
- ピッチ:P=150±5mm(300mm区間で2ピッチ確認、指差し写真)
- 定着長:梁端部 40d 以上(曲げ先端をスケールで、近接写真)
- 開口補強:四周追加筋あり、継手オフセット 1/4スパン(開口俯瞰写真)
- スペーサー:@600以内、固定済み(連続性が見える角度で)
- 結束:ハッカー(結束工具)で対角締め、緩み無し(拡大写真)
- 安全:番線端部の折り返し、歩行ルートの明示(全景+足元)
手順:現場での運用フロー
- 事前準備:図面の凡例を抜粋し、記号と数値をリストに反映。A3一枚に収めます。
- 朝礼共有:重点3項目だけ口頭で再確認。全員が同じ数字を言える状態にします。
- ゾーン分け:躯体を3ブロックに分け、担当と時間を割り振ります。
- 測る→撮る→記す:各項目で「寸法→写真→チェック」の順を固定します。
- すぐ是正:許容外は赤テープでマーキングし、その場で職方へ依頼します。
- 復旧確認:是正後は青テープに貼り替え、再撮影して台帳に差し替えます。
- 終礼レビュー:未完了とリスクを翌日の先手タスクに落とします。
安全のポイント
- 高所は二丁掛け(フルハーネスの2本使い)を徹底。足場の先行点検を先に。
- 鉄筋の切端はキャップか折り返し。目線や顔の高さは特に注意します。
- 計測は必ず二人一組。読み上げと復唱でヒューマンエラーを抑えます。
例:中規模RC造の梁・スラブでの運用
延べ2,000㎡のオフィスRC造。梁主筋 D25、スラブ D13、ピッチ150。
チェックリストはA3表裏で、片面が梁、裏面がスラブです。
各ブロック30分を目安に回し、午前で全体を一巡。午後は是正と再確認に充てます。
初回は見落としが12件ありましたが、2回目からは3件に減り、打設準備の遅延はゼロになりました。
写真台帳のコツ
- 同じ構図をテンプレ化(足元→中景→全景の3枚セット)
- 寸法が写る位置にスケールを入れる。影にならない角度で。
- ファイル名は「階-通り-項目-連番」。検索性が上がります。
注意点:コストと品質のバランス
項目を増やしすぎると、検査の時間が伸びて、是正の時間が圧迫されます。
まずは重大欠陥につながるものから10項目に絞り、効果を見ながら拡張します。
許容範囲は、構造設計者の意図に沿いながら、現場の実情に合わせて微調整します。
変更履歴は日付と理由を記録し、次の現場でそのまま再利用できる形にしましょう。
よくあるQHSEのすれ違い
- 品質優先で監督が単独で回り、ヒヤリハット(ヒヤリとした出来事)の共有が遅れる
- 安全指摘が多すぎて、品質の核心が埋もれる
- 是正指示が口頭のみで、写真と寸法が台帳に紐づかない
まとめ:明日からの一歩
配筋検査チェックリストは、短く、順路どおり、数字で語る形にします。
まずは重大10項目から始め、写真のテンプレと採寸の手順を固定しましょう。
二人一組での計測、安全の二丁掛け、赤青テープの運用は、必ず徹底します。
次の打設までに一度回して、効果と課題をチームで共有すると、現場がぐっと安定します。
- 原因は図面と現場のズレ、時間圧、記録不足に集約される
- 具体策は「見る位置・OK範囲・採寸・撮影」を1セット化
- 手順は「測る→撮る→記す→是正→再撮」の固定化
- 写真は足元・中景・全景の3点セットで検索しやすく
- 安全は二丁掛けと鉄筋端部処理を最優先
まずは自現場用に10項目のミニ版を作り、次の配筋検査で試してみてください。
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