コンクリート打設 気を付けるポイントを季節別にまとめます。先に結論です。季節で変わるリスクを押さえ、手順を固定し、数値の目安を持って運用するとムラが減ります。今日の現場でそのまま使えるよう、原因から具体策、手順、注意点まで順にたどります。
なぜ品質ムラが起きるのか(原因)
品質がぶれる主因は温度と時間です。外気温でスランプ(流動性)が変わり、輸送や待ち時間でワーカビリティ(扱いやすさ)が落ちます。夏はブリージング(水分上がり)と急乾き、冬は初期強度の立ち上がり遅れが出ます。
バイブレーター(締固め用機械)の入れ過ぎや不足も影響します。入れ過ぎは材料分離、少なすぎはジャンカ(豆板)を招きます。型枠や配筋の込み具合、圧送経路の長さも負荷になります。
打ち継ぎ(コールドジョイント)も要注意です。打込み間隔が空くと層が切れます。合図や人員配置がバラつくと、同じ計画でも結果が変わります。
季節別の具体策(夏・冬)
夏場の具体策
- 受け入れ検査を強化します。温度は10〜30℃の目安内に。スランプは設計値±2.5cmで確認します。
- 打設時間帯を前倒しします。朝イチ開始、昼の高温帯は避けます。待ち時間を短くします。
- 散水や日除けで型枠・鉄筋の表面温度を下げます。打込み前の直射はできるだけカットします。
- バイブレーターは短く確実に。1点3〜5秒、ピッチは30cm程度で重ね打ちします。過振動は避けます。
- 仕上げはブリージング収まり後に開始します。早仕上げはひび割れを招くので焦らないこと。
冬場の具体策
- 配合の温度補正を確認します。必要に応じAE減水剤(空気連行+減水剤)でワーカビリティを確保します。
- 受け入れ温度が低い場合は打設を見直します。夜間は避け、日中の暖かい時間に寄せます。
- 保温養生を準備します。シートやヒーターで5℃以上を維持します。初期3日を手厚くします。
- 打設速度を1〜2m/hに抑え、締固めを確実にします。凍結が予見される場合は延期判断をします。
- 打ち継ぎ部は余剰モルタル除去と目荒らしを確実に。遅延材の使用有無を事前合意します。
標準手順(現場での流れ)
- 打設計画を作ります。数量、圧送ルート、合図者、退避ルート、天候の代替案まで書面化します。
- 受け入れ検査を行います。スランプ、空気量、温度、塩化物を確認します。結果は記録します。
- 圧送準備をします。ポンプ車の設置、配管支持、漏れ・詰まりの点検を行います。合図を一本化します。
- 試し打ちで仕上がりを確認します。流動、充填、型枠からのにじみを目視します。異常があれば即調整します。
- 打込みは上流から下流へ一定速度で進めます。層厚は30〜50cmを守り、打継ぎ位置を計画通りにします。
- 締固めは規定間隔で確実に。挿入は垂直、前層に5〜10cm食い込ませます。型枠への当て過ぎは避けます。
- 仕上げはブリージング収まり後に。コテ圧は段階的に軽→中→仕上げ。水引き状況に合わせます。
- 養生は直ちに開始します。散水またはシートで湿潤を保ち、風・直射・凍結から守ります。
- 記録を残します。時間、数量、試験値、写真、異常の有無を整理します。次回の改善に使います。
安全面は言い切ります。合図者を必ず置きます。打設エリアは立入禁止とし、重機旋回範囲を明示します。足場の積載と転落防止は事前に点検します。
具体例と数値の目安
スランプ18±2cmの配合で梁・床を打つ場合、打設速度は1〜2m/hが無理のない目安です。バイブレーターはφ50で1点3〜5秒、ピッチ30cm程度。圧送距離が40mを超える場合は配管径と曲り回数を見直します。
受け入れ温度は10〜30℃が現実的な範囲です。外気35℃で直射が強い日は、開始を6〜8時台に。打込み休止は30分以内に収め、超える場合は打継ぎ処理を選択します。冬場0〜5℃では保温シートと温風で初期3日を重点養生します。
ひび割れリスクを数値で見ます。乾燥が強い日は蒸発量0.5kg/m²/h超で警戒帯です。風速5m/s以上+湿度40%以下は仕上げ遅延と散水が必要です。雨量1mm/h超では基本延期、やむを得ず打つ場合は雨除けと上面保護をセットにします。
よくある不具合と注意点
- ジャンカ:配筋が込み入る部位は先詰めと肌分かれ防止に留意します。開口・梁端部は人員を増やします。
- ひび割れ:夏は早期乾燥、冬は温度応力が原因です。散水・保温・打設時間の調整で抑えます。
- レイタンス:ブリージング水と微粉が上がる層です。仕上げは落ち着いてから行い、必要に応じ削り取ります。
- 打ち継ぎ不良:休止が長い時は目荒らし、洗い、接着剤の使用を徹底します。継ぎ位置は曲げ応力の小さい所へ。
- 安全:ポンプ配管の抜圧は合図後に実施します。ホース先は人が持ちすぎない。転倒・はさまれを防ぎます。
まとめと次アクション
季節が変わればリスクが変わります。だから打設計画と受け入れ検査、締固めと養生を「いつも同じ手順」で徹底します。数値の目安を班で共有して、迷いを減らします。合図は一本化し、安全は遠慮なく止めます。それが一番の近道です。
- 原因は温度・時間・締固めの偏り
- 夏は冷やす・早める、冬は温める・遅らせる
- 手順は計画→検査→打込み→締固め→養生→記録
- 数値の目安で会話する(スランプ、温度、速度)
- 安全は合図者配置と立入禁止を徹底
次の現場では、今日のチェック項目を朝礼で共有してみてください。小さな差が、仕上がりの大きな差につながります。
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