型枠数量拾いの精度を上げる手順と例|梁・スラブで迷わない

型枠数量拾いが安定すると、見積や工程のブレが目に見えて減ります。まずは梁・スラブの基本を押さえ、拾い漏れと重複をなくすことが近道です。今日は現場でよく迷うポイントを、順を追って整理します。明日の積算と原価管理が、少しラクになりますよ。

なぜ「型枠数量拾い」で差が出るのか(原因)

差が出る一番の理由は、図面の前提の違いです。構造図と施工図で外周や梁成が変わると、面積がズレます。開口(穴あけ部)や段差、スリーブの扱いも、ルールが曖昧だと過不足につながります。

もう一つは、単位と係数の統一です。型枠面積m²、端部・小口(端の細かな面)の拾い方、拡大係数(安全側の上乗せ率)をチームで合わせないと、集計で食い違います。最後に、支保工(型枠を支える仮設)の数量を別物として扱いすぎると、手間(作業量の目安)と歩掛かり(作業効率)に歪みが出ます。

具体策:精度を上げる基本ルール

図面の優先順位と整合

  • 通り芯(基準線)と外周の確定を最優先。施工図が出ていれば施工図を主とし、構造図との差分をメモに残します。
  • 梁成・スラブ厚・柱サイズは階ごとに表にまとめます。展開図(立面の展開)で段差と開口の位置もひと目で分かるようにします。
  • 開口の定義を統一。300mm角以上は控除、以下は控除しないなど、閾値を決めて表記します。

単位・係数の取り決め

  • 型枠はm²、支保工は本数またはm²換算で統一。役物(端部の細工)や端太・根太(支え材)は手間として別計上します。
  • 拡大係数は新築で1.03〜1.05、改修で1.05〜1.10を目安に。理由は端部加工と手戻りの吸収です。
  • 拾い根拠はセルに注記。後から見直す自分へのメモだと思って、面倒でも書きます。

ダブルチェックの型を決める

  • 人が替わっても同じ結果になるよう、項目順を固定します。スラブ→梁側面→梁底→柱・壁取り合い→開口控除→端部の順です。
  • チェックは「面で見る」「線で追う」の2回。面積表と通り芯図で、見方を変えて確認します。
  • 安全関連は別枠。支保工の受け能力と解体手順は、数量とセットで計画します。ここは妥協しません。

手順:梁・スラブの数量拾い(ステップバイステップ)

  1. 範囲を決める:階ごと、ゾーンごとに区切り、通り芯でブロック化します。捨てコン(基準の薄いコンクリート)上の墨出し計画と整合させます。
  2. スラブ裏面を拾う:投影面積から大きな開口を控除。段差は高低差が20mm以上なら別途扱いにします。
  3. 梁側面を拾う:梁長×2×梁成で概算し、柱・壁取り合いで欠ける分を後で調整します。
  4. 梁底を拾う:梁長×梁幅。スラブ厚と梁幅の取り合いに注意します。
  5. 開口・スリーブを控除:規定以下はノーカウント、以上は周囲の小口も必要なら加えます。
  6. 端部・役物を加味:外周の小口、天端の面木(面取り材)など、加工手間は見落としやすいので別立てで。
  7. 支保工を算定:スパンと梁成から支柱ピッチを設定し、受け梁・根太の本数と合板(二次材)の枚数に変換します。
  8. 集計・拡大:内訳(スラブ、梁側、梁底、端部、役物、支保工)で小計を作り、最後に拡大係数を適用します。

例:25m×12mのフロアでの拾い方(数値のイメージ)

想定条件です。スラブ厚150mm、梁幅300mm、梁成600mm、梁長合計120m、開口は合計6m²(控除対象)。スパンは5m程度、支保工は1.2mピッチです。ざっくりの拾い方をお見せします。

  • スラブ裏面:25×12=300m² − 開口6m² = 294m²
  • 梁側面:梁長120m ×2 ×0.6m=144m²。柱取り合いで5%減として −7m² ≈137m²
  • 梁底:梁長120m ×0.3m=36m²
  • 端部・小口:外周(74m想定)×スラブ厚0.15m=約11m²(必要に応じて係数で調整)
  • 支保工:スラブ294m²を基準に、1.2mピッチで支柱約200本、受け材は流用率を見込み係数0.9で手配

小計は、スラブ294+梁側137+梁底36+端部11=約478m²。新築で拡大1.04を掛けると約497m²です。見積はこの内訳をそのまま出すと、後の照合作業がスムーズです。係数は現場条件で前後しますが、根拠を一行残せば十分説明できます。

注意点・リスクと回避策

  • 梁成の変更に要注意。施工図で100mm上がるだけで側面が増えます。入手次第、先に梁側面を直します。
  • 小さな開口の扱いを統一。控除しない基準なら、職方と見積で齟齬が出ません。
  • スラブ段差は別工区化。面積も手間も変わるので、歩掛かりを変えて計上します。
  • 支保工は荷重検討とセットにします。受け能力の確認と解体手順の合意がないまま施工してはいけません。
  • 改修は端部加工が増えます。拡大係数を上げ、役物と斫り(コンクリートの削り)を別費用で見ておきます。

まとめとチェックリスト(保存用)

  • 図面の優先順位と差分をまず整理する
  • スラブ→梁側→梁底→開口→端部→支保工の順で拾う
  • 開口の閾値と拡大係数をチームで固定する
  • 内訳と根拠メモを残し、後日も追跡できる形にする
  • 支保工は数量と安全計画をセットで決める

次アクションとして、あなたの現場の1フロアを上の順で試しに拾ってみてください。10分でも良いので、通り芯図に色分けをして、開口と段差だけ先に確定すると、作業が一気に進みます。

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