コンクリート打設 手順から始める現場の安定化|原因・具体策・当日の流れ

コンクリート打設 手順を最初に固めると、当日の迷いが減り、品質と安全が両立します。この記事は、なぜトラブルが起きるのかを整理し、具体策と当日の流れをやさしく示します。明日の打設にもすぐ使える実務の視点でまとめます。

なぜトラブルが起きるのか(原因の整理)

多くは計画の粒度不足と情報共有の欠落です。打込み順序(どの部位から入れるか)や台数計画が曖昧だと、待ち時間が増え、コールドジョイント(打重ね不良)を招きます。型枠・支保工(支える仮設)の点検漏れも、漏浆や変形につながります。

材料側の要因もあります。スランプ(やわらかさ指標)のばらつき、外気温による凝結(固まり始め)早まり、圧送距離の長さでのロスが重なると、予定速度が出ません。要員配置が薄いと、バイブレーター(締固め機)と均しのリレーが切れます。

具体策(打設計画の作り方)

まず打設計画(当日の進め方の書類)を一枚に集約します。打込み順序、ポンプ車位置、配管ルート、退避動線、非常時停止の合図まで、図で示します。役割表は誰が見ても一目で分かる表現にします。

数量と時間は数値で見える化します。目安は吐出20〜30m³/h(現場条件で変動)です。これに部位ごとの所要時間、打重ね限界45〜60分(気温で短縮)を重ね、リスク部位を赤でマーキングします。

材料条件を決めて共有します。スランプ18±2cm、空気量4.5±1.5%、温度は受入時10〜30℃など、現実的な範囲で合意します。気温が高い日は遅延剤(凝結を遅らせる混和剤)を検討します。

手順(前日まで〜当日の流れ)

1週間前〜前日

  1. 図面と配筋写真で打込み順序を確定。止水材や打継ぎ(次回とのつなぎ)位置を再確認。
  2. 型枠・支保工の強度と締付け点検。漏れそうな隙間はシーリング材で予防補修。
  3. ポンプ車の進入経路とベース設置地耐力を確認。電線・覆工干渉の有無を現地で見る。
  4. 生コン工場と配車計画をすり合わせ。スランプ、骨材最大寸法、出荷間隔を文書化。
  5. 役割表を配布。合図者、安全監視、締固め、均し、受入検査の担当を明確に。

当日(打設前)

  1. ツールボックスミーティングで危険予知を共有。合図と中断判断の基準を口頭で復唱。
  2. 受入検査(到着時の確認)を実施。スランプ・空気量・温度を記録し、外観を目視。
  3. 試験練りが必要な配合は、最初の荷で施工性を確認。無理はしない、戻しも検討。

打設中

  1. 打込みは高所からの落下を避け、シュートやホースを使い2m以内を目安に。
  2. バイブレーターは1点10〜15秒、間隔30〜40cm、前層に5〜10cm貫入。入れ過ぎは分離を招く。
  3. 梁・柱の隅部は先行充填。ジャンカ(豆板:空隙)を避けるため、層厚は30〜50cmで段階施工。
  4. 打重ね時間を必ず管理。気温30℃超なら45分以内を目標。遅れそうなら分割と合図で調整。
  5. 表面はトンボで均し(一次整正)→金鏝仕上げ(仕上げ工具)へ。テカリ待ちを焦らない。

打設後〜養生

  1. 天端レベルを確認。必要に応じてセメントペーストで微修正。
  2. 散水やシートで初期養生(乾燥を防ぐ)を開始。風と直射日光を遮る工夫を。
  3. 翌朝に打音・目視で初期欠陥を確認。早期補修は小さく早くが基本。

現場例でつかむ数量と時間の目安

例:柱・梁・スラブ一体で60m³、ポンプ吐出25m³/h、荷下ろし間隔15分、気温28℃。この場合、純打込みは約2.5時間、段取り・移動・確認を合わせ3.5〜4時間が妥当です。打重ね限界を超えやすい梁端は、先行充填の小隊を置くと安心です。

人員は最少で8名ほど。合図1、ポンプ口2、締固め2、均し2、安全監視1。初回は+2名の余裕枠が良いです。無理な省人は、後工程の補修コストを増やします。

品質確認は、受入検査に加え、抜き取りで供試体(強度試験用の試料)を採取します。打設中のスランプ低下が見える場合は、先行部と後行部で施工性が違うので、仕上げ負荷の配分を変えます。

注意点・チェックリスト(携帯推奨)

  • 受入検査値(スランプ・空気・温度)を全車記録。外れ値は無理せず是正。
  • 打込み順序の現場図は常に足元に置く。変更はマーカーで即時反映。
  • ホースの離脱防止を二重で。合図なしの移動・抜き差しは厳禁。
  • 隅部・かぶり確保に小径バイブレーターを準備。入らない所は棒での突きも併用。
  • 高温・低温日は開始時刻をずらす。遅延剤や温度補正は計画段階で決める。
  • 打継ぎ面はケレン(粗し)と清掃を確実に。次回の接着を左右します。
  • 仕上げタイミングは”指跡が2〜3mm”を目安。早過ぎはブリーディング閉じ込め。

まとめと次アクション

打設は「計画の粒度」と「当日の合図」が決め手です。原因を先に潰し、具体策を一枚に整理し、手順を時系列で共有すると、品質も安全も安定します。まずは次の打設で、受入検査の見える化と打込み順序の図面化から始めてみましょう。

この手順をチームで回すと、コールドジョイントやジャンカの発生が目に見えて減ります。小さな確認の積み重ねが、やり直しゼロに近づく最短ルートです。無理をせず、合図で止める勇気も準備の一部と考えてください。

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