アンカーボルト 位置出しは、最初の段取りで品質がほぼ決まります。結論から言うと、通り芯とテンプレートの管理、打設時の固定、この三つを外さなければ大きなズレは起きません。この記事では原因→具体策→手順→例→注意点の流れで、現場で迷わない実務の要点をやさしく整理します。明日からの検査と写真も、きっとスムーズになります。
なぜズレる?原因を先に押さえる(墨出し・テンプレート・打設)
ズレの多くは、事前の墨出し(基準線を床に印す作業)の読み違いと、テンプレート(位置決め板)のたわみ、そして打設中の流されです。どれも小さな差の積み重ねで、気づいたら10mm以上の偏心になってしまいます。許容差の勘違いもよくあります。柱脚金物の穴径に甘えてしまい、後で座金(ワッシャー)が当たらない、といった事態が出ます。
もう一つは固定方法の不足です。ダブルナット(上下で締めるやり方)やスペーサーの取り回しが弱いと、バイブレータで簡単に動きます。型枠のクリアランスや逃げ寸法を見ていないと、鉄筋との干渉も起きます。原因を分けて見るだけでも、対策の優先がはっきりします。
今日からできる具体策(事前準備とチェックリスト)
事前確認で外さない三点
- 通り芯・基準墨の再確認(二人で指差し呼称)。スケールとレーザーで十字を合わせてください。
- テンプレートの剛性確保。合板は厚さ12mm以上目安、金物なら補強リブ付きにしてください。
- 固定計画の明文化。ダブルナット+スペーサー+結束線の三段で、打設中も保持します。
チェックリスト(配布して使い回しOK)
- 型枠の内法寸法と通り芯の関係を朱書きで見える化。
- ボルト突出し長さの余裕。座金+ナット高さ+5〜10mmの遊びを確保。
- 鉄筋干渉の事前解消。スリーブ(配管用の穴)位置とも干渉しないか確認。
- 許容差の共有。中心±5mm、直立1/100程度を目安に現場で合意。
- 検査写真の指示。通り芯と寸法、鉛直の三点は必ず1ショットずつ。
位置出しの標準手順(番号で迷いゼロ)
- 通り芯を再墨出し。交点にスチール定規を当て、±0の基準をはっきりさせます。
- テンプレートを仮置き。穴ピッチと柱脚金物の図面値を声出しで照合します。
- アンカーボルトを仮挿入し、座金・ナットで軽く固定。上下ナットで高さも仮決め。
- レーザーで中心合わせ。芯からのオフセット寸法を四方で測り、±5mm内に調整します。
- ダブルナットで本締め。スパナで均等に締め、テンプレートとの面を密着させます。
- 鉛直を確認。下げ振りまたは小型レベルで1/100以内をキープしてください。
- 干渉と逃げ確認。鉄筋・スリーブと当たらないか、打設ルートも含めて確認します。
- 仮保護を施工。キャップやテープでねじ山を養生(保護)。曲げ防止の支えも入れます。
- 検査と写真。寸法、鉛直、通り芯の三点を撮影し、日付と方向をメモに入れます。
- 打設時の見張り担当を決める。バイブレータ接触禁止、流動で動かないか常時チェックします。
具体例でイメージ共有(S造・木造・後施工)
S造の柱脚(ベースプレート想定)
穴径が大きいからと油断しやすい場面です。許容差±5mm内に抑えれば、座金がしっかり座り、エポキシ系グラウトの充てんも均一になります。テンプレートは鋼製を使い、四隅に補強を入れて、打設後の沈みも防いでください。
木造の土台アンカー
通り芯よりも、土台の割付と柱位置との関係が重要です。土台欠き込みの逃げ寸法を見たうえで、突出し長さはナット二丁掛け(ダブルナット)に必要な高さを確保します。打設後は曲げに弱いので、早めに仮筋交いで保護してください。
後施工アンカー(ケミカル方式)
コア抜き(穴あけ)精度が肝心です。穿孔径・深さはメーカー仕様に合わせ、清掃はブロワ+ブラシで3回以上行ってください。硬化時間の管理も忘れず、気温と下地含水で設定が変わります。荷重をかけるのは養生後です。
許容差・検査・安全のポイント(数値で握る)
- 中心位置:±5mmを基本。木造なら±10mmまで現実的に運用することもありますが、柱脚金物の穴径と座金で要確認です。
- 鉛直度:1/100程度(高さ1mで±10mm)を目安。高層や架台は設計基準を優先してください。
- 突出し:ナット+座金+5〜10mmの余裕。ねじ山つぶれを避けるため、キャップ養生をしてください。
- 検査写真:通り芯と寸法、鉛直、全景、打設後再確認の計4カットを基本とします。
- 安全:打設中は人が当たらない位置にガード。バイブレータは直接接触させないでください。
よくあるつまずきと是正のコツ
打設後に5〜8mmのズレが出た場合は、座金の座面調整で吸収できるか、柱脚金物の穴径で逃がせるかを冷静に判断します。10mmを超えると無理は禁物です。是正は、後施工アンカーの追加や、ベースプレートのスロット加工も選択肢ですが、設計者と早めに相談してください。
ねじ山の傷や曲がりは、無理に矯正せず交換を基本とします。無理な力は破断の原因になります。写真と是正記録を残し、再発防止のチェックリストに追記しておくと、次回が楽になります。
まとめ(要点と次アクション)
- ズレの原因は「墨出し」「テンプレート」「打設中の固定」に集約されます。
- 通り芯の再確認、剛性のあるテンプレート、ダブルナット固定で大半は防げます。
- 標準手順10ステップと検査写真4カットを習慣化してください。
- 許容差は中心±5mm、鉛直1/100を目安に、現場で合意しておきます。
次のアクションとして、あなたの現場用にチェックリストを1枚作り、朝会で共有してください。打設日の担当者と合図のルールまで決めておくと、当日の判断がすっと楽になります。
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