配筋検査チェックリストの狙いと、つまずきの原因
配筋検査チェックリストは、抜けを減らし、是正を早めるための小さな仕組みです。とくに若手のうちは、図面の読み違いと時間切れが重なりやすいです。だからこそ、見る順番と項目を固定し、迷いを減らします。
つまずきの多くは、図面間の差異、寸法の解釈ズレ、配管との干渉、写真不足から起きます。工程が詰まると、検査が駆け足になり、軽微な見落としが増えます。小さな見落としが、仕上げで大きな手戻りにつながりがちです。
原因がはっきりすれば、対策はシンプルです。見る順と記録の型を決めて、全員で共有します。言い切りますが、安全と寸法の確認は最優先です。ここは妥協しません。
具体策:チェックリストを設計し、チームで共有
チェックリストは、共通項目と部位別の2段構えにします。専門用語には一言注記を入れ、誰が見ても同じ判断になるように整えます。紙とデジタルの両方を用意し、現場では紙、事務所で共有はデータが扱いやすいです。
共通項目(用語に注記)
- 図面整合:意匠・構造・設備の差異確認
- かぶり厚(表面から鉄筋までの厚み):所要値とスペーサ
- 定着・継手(鉄筋のつなぎ長さ):位置と長さ
- ピッチ(鉄筋間隔):実測と端部の納まり
- 開口補強:スリーブ・ボックス周りの補強筋
- 支持材:スペーサブロック・サドルの数量と配置
- 清掃:型枠内のごみ・水抜き
- 安全:足場・踏み板・手すりの状態
部位別の追加
- スラブ:配筋の通り、折曲げ筋、配管とのクリアランス
- 梁:スターラップ(あばら筋)のピッチ、フック向き、定着
- 柱:帯筋の綴じ方、建込み直角、主筋の通り
- 壁:開口補強、増し配筋、端部の納まり
社内標準があれば、それに沿って用語や順序を合わせます。写真欄と是正欄を設けると、あとから追跡しやすいです。印刷は片手で持てるA5が現場で扱いやすいです。
当日の手順:5ステップで迷いを減らす
当日は段取りで決まります。見る順番は固定し、記録はその場で行います。安全確保と寸法測定は、必ず二人一組で行います。
- 事前確認:構造図・配筋図・設備図を突き合わせ、差異を付箋で可視化
- 基準の確認:墨(基準線)とレベル、かぶりブロックの種別と数量
- 全体→部位→抜き取り:全景を俯瞰し、部位別に順路を決め、要所をランダム実測
- 是正指示:口頭だけにせず、図面写しに赤で記入し、その場で担当と合意
- 写真整理:全景→中景→近景→寸法の順で撮影し、ファイル名をルール化
安全のポイントは言い切ります。足場の手すり、踏み板、開口の覆いは、先に確認します。結束線の飛び出しは目線で追い、足元の引っかかりを除きます。
具体例:梁とスラブのチェック要点
梁の例
梁主筋の定着は、呼び径の約40dを目安にします(設計で異なるため図面優先)。端部のスターラップは、柱面から100〜150mm間隔で締めます。フックの向きは交互が基本で、干渉があればズラしで対応します。
かぶり厚は屋内梁で40mm、外周で50〜60mmが一般的です(仕様書で確認)。スペーサの種類とピッチを見て、たわみで沈んでいないかを触って確かめます。ハンチ部はピッチが変わりやすいので、抜き取りで実測します。
スラブの例
上筋と下筋の通りを見て、交点での結束を確認します。ピッチは@100〜@200が目安ですが、スパンや荷重で変わります。トラス筋やサドルの高さで、かぶり厚が確保できているかを実測します。
スリーブと電気盤用のボックス周りは、補強筋の有無と定着を重点確認します。配管とのクリアランス不足は、かぶり厚の不足に直結します。干渉が出たら、その場で設備と調整し、補強案を図示します。
よくあるミスと、現場での対処
- スペーサ不足:数量不足は沈みの原因。即追加し、端部は密に配置
- 継手の集合:同一断面に集中は避ける。ずらし継手に変更し、割付図を更新
- 配管干渉:配管を先に通すと筋が浮く。通し順序を入替え、補強筋で補う
- 梁主筋の段違い:サドル高さの誤差。治具で高さを固定し、通りを再確認
- 開口補強忘れ:小開口ほど抜ける。開口リストと現場貼付でダブルチェック
是正は、写真と位置情報をセットで残します。赤入れ図面に是正期限と担当名を書き、翌朝の打合せで進捗を確認します。再検査は、初回と同じ順路で行い、同じ視点で照合します。
写真の撮り方と保存のコツ
写真は、全景→中景→近景→寸法→設計図写しの順が読みやすいです。近景では、スケールとレベルを入れ、誰が見ても寸法がわかるようにします。ブレと逆光は、その場で撮り直します。
- ファイル名例:202510-3F-梁B2-スターラップ@100-OK.jpg
- フォルダ例:現場名/2025-10/3F/梁/是正前後
- 台帳:チェックリストの項番と写真番号を対応づけ
後工程のための写真です。未来の自分が見て迷わない形に整えると、資料作成が早くなります。提出先の様式があれば、先に型を合わせます。
まとめと次アクション
配筋検査は、原因を断ち、手順を固定すれば落ち着いて回せます。チェックリストで見る順を決め、数値はその場で実測します。是正は書面化し、写真と紐づけます。安全は先行で点検し、二人一組で確認します。
- 今日の一歩:自現場の仕様に合わせたチェックリストをA5で作成
- 明日の準備:図面差異を付箋で見える化し、優先順を決定
- 週内の仕組み化:写真の命名とフォルダを全員で統一
まずは次の配筋で、ここに書いた手順を試してみてください。小さな改善でも、手戻りはしっかり減ります。
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