コンクリート打設 事前準備がしっかりすると、品質も段取りも安定します。ここでは原因から対策、手順までを一気に整理します。短いチェックで迷いを減らし、ムダな手戻りをなくしましょう。
なぜ不具合が出るのか|原因を先に知る
不具合の多くは情報の食い違いと段取り不足です。配合やスランプ(やわらかさ)の認識差、打設順序の共有漏れ、人数や道具の不足が重なります。天候や外気温の読み違いも意外と効きます。
もう一つは動線です。ポンプ車の設置や圧送経路、通路の確保が甘いと、コンクリートの滞留が起きます。運搬が止まると打ち重ね時間が延び、打継ぎ線が出やすくなります。
最後は検査の抜けです。型枠や鉄筋、かぶり、スリーブ位置の事前確認が薄いと、打設中に手直しが発生します。そこでリズムが崩れ、品質と安全へ悪影響が出ます。
事前準備の具体策|チェックリスト化する
準備は人に依存させず、紙と口頭の二段で確実にします。以下をチェックリストにして、前日までに関係者で読み合わせしましょう。
- 図面と施工計画の整合:配筋・スリーブ・打設順序の確認
- 配合とスランプ:例 18-8-20、スランプ12±2cmの指定
- 数量と車両手配:必要m³、車数、到着間隔(10〜15分)
- ポンプ車と圧送経路:設置位置、ホース長、予備ホース
- 人員配置:打込み、均し、バイブレータ(振動棒)、検査、合図
- 機材:バイブレータ径40mm×2台+予備1、トンボ、レーザー
- 天候対応:暑中・寒中の養生資材、散水・保温の段取り
- 試験体:採取本数、スランプ試験器具の準備
- 安全計画:足場、手すり、立入禁止、合図者の配置
口頭共有は短く回数多めに。3分ブリーフィングを開始前と中間で行い、変更点だけをはっきり言い切ります。標準用語も合わせましょう。たとえばレイタンス(白い粉状のうわずみ)やブリーディング(水上がり)などです。
当日の手順|時系列で迷わない
前日まで
- 型枠・配筋の最終検査:かぶり、スペーサ、セパレータ(金具)の確認
- 受入れ条件の共有:車間、スランプ、空気量、温度の基準
- 機材の動作確認:バイブレータ、レーザー、高周波機器
- 動線テープと看板:立入禁止と合図位置を見える化
開始30分前
- 3分ブリーフィング:打設順序、合図、退避場所
- 安全確認:足場幅、手すり、照度、開口の塞ぎ
- 受入れ試験段取り:スランプコーン、秤、温度計
打設開始〜中盤
- 受入れ試験:スランプ、温度、空気量を記録し合否判定
- 打込みは層厚30〜40cmで均一に。バイブレータは挿入間隔40cm目安
- ホース先の待ちを作らない。運搬と均しのバランスを合図者が調整
- 打ち重ね時間は原則30分以内。遅れそうなら区画を小さく切る
終盤〜直後
- 天端調整:レベラーやスクリー ドで素早く均し
- 仕上げ前の表面水は除去。レイタンスは削り取り
- 養生開始:散水、シート、保温。風と直射日光を遮る
- 片付けと清掃:ホース洗浄の排水処理をルール通りに
現場の具体例|30m³の床スラブ(夏場)
床スラブ150mm厚、面積200m²、計30m³、外気32℃の条件です。ポンプ吐出は25m³/hを想定。車間は12分で手配し、開始から70〜90分で完了を狙います。
順序は柱周り→梁落とし→広いスパンの順に。層厚は35cmを守り、バイブレータは40mm径2台体制。中間で一度3分の進捗共有を入れ、遅れ区画を応援します。
暑さ対策は開始1時間を勝負時間に。直射をシートで遮り、散水を薄く多回。仕上げ直前のブリーディングは拭き取り、レイタンスは必ず削ってから仕上げます。
注意点|安全と品質の赤信号
- 合図なき移動は厳禁です。ホースの急な振れは転落や打ち傷の原因
- バイブレータの引きずり走行はやめましょう。分離の元になります
- 試験体の採取忘れは後戻り不可。台帳へその場で記入
- 雨が来たら一時停止を判断。無理押しは表面不良と打継ぎのリスク
- 打設中の手直し配筋は原則禁止。前日に洗い出すことが最善
まとめ|明日の段取りに効く要点
- 原因は情報差と動線の詰まり。先に見える化でつぶす
- チェックリスト+3分ブリーフィングで共有を確実に
- 層厚・間隔・時間の基準を守り、迷ったら小さく刻む
- 暑さ寒さの養生は早め開始。表面水とレイタンスは処理
- 記録は現場で完結。あと回しはゼロに
次アクションとして、自現場用の打設チェック表を作りましょう。今日のリストをベースに、現場固有の道具やルートを書き足すと、次回の準備が半分で済みます。
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