コンクリート打設 段取りを整えるだけで、品質も安全もぐっと安定しますよ。最初に原因を押さえ、すぐできる具体策と手順に落とすのが近道です。この記事では、現場で迷いがちな要点をやさしく整理し、今日の打設計画にそのまま使える形でまとめます。
なぜ段取りで品質差が出るのか(原因)
不具合の多くは、準備不足や情報の食い違いから生まれます。打設量と人員のバランス、圧送(ポンプで送ること)の能力、打ち重ね時間(コンクリート同士の許容重ね時間)などがずれると、一気に難しくなります。気温や風も影響が大きく、夏は早い凝結、冬は遅い硬化が起きやすいです。
典型的な不具合と背景
- 充填不足:バイブレーター(締固め機)の当て漏れや配管位置の不利
- 打継ぎ不良:打ち重ね時間の超過や人手不足
- ひび割れ:急な乾燥や温度差、養生(保護)の不足
- レイタンス(表面の弱い層):過振動やブリーディング水の放置
- 仕上がりムラ:スランプ(軟らかさ)のばらつき、トロウェルのタイミングずれ
すぐできる具体策(PLAN/DO/CHECK/ACT)
PLAN:打設計画の要点
- 数量と時間の見積り:圧送能力×時間で受入台数を算定。余裕枠を10〜15%持ちます。
- 人員配置:打込み2、締固め2、ならし1、仕上げ2、受入検査1を最少ラインに。
- 運搬ルート:ホース長と曲がり数を事前確認。圧送圧力の上限も共有します。
- 品質条件:スランプ、空気量、粗骨材寸法を発注書と同じ文言で掲示。
DO:当日の動き方
- 受入検査:スランプ、空気量、温度を測定し記録。外れは無理に使わないと決めます。
- 先行打設:柱・梁の隅角は先に充填。型枠(コンクリートの型)を軽く叩き気泡を逃がします。
- 締固め:バイブレーターは10〜20秒、挿入間隔は30〜40cmを目安に丁寧に。
CHECK:手戻りを防ぐ観察点
- 沈下と再振動:沈下が落ち着いたら再度軽く当て、空隙をなくします。
- 打ち重ね時間:気温20℃で概ね60分以内を目安に。長くなる部位は先行養生を。
- 仕上げタイミング:指で押して薄く跡がつく頃がコテの入り時です。
ACT:次回改善のために
- 台数配車と待機時間を見直し。5分単位で記録すると次が楽です。
- 写真と動画で振り返り。打ち出し・打ち止めの高さと順路を保存します。
段取りの手順(時系列チェックリスト)
前日まで
- 施工計画書の最終確認。強度、スランプ、打設順序を全員で共有します。
- 型枠・配筋の検査。かぶり、止水材(漏水を止める材)の位置、開口補強を確認。
- 資機材の準備。ホース、バイブレーター2台以上、予備発電、散水具を確保。
当日朝
- KY(危険予知)と役割分担。指差しで合図の統一をします。
- 受入スペースの整理。誘導員を配置し、バック走行は介添え必須。
- 試験器具の校正。スランプコーン、空気量計、温度計を点検。
打設中
- 受入検査をロットごとに実施。外れは即座に現場代理人へ報告。
- 打込み高さは50cm程度で層状に。前層へ10cmほど食い込ませます。
- バイブレーターは型枠や鉄筋に強く当てすぎない。先端の自重で入れる意識です。
- ホース移動は2人以上で。踏み抜きやつまずきに注意します。
打設後
- 天端整正と仕上げ。風が強い日は表面の乾きに合わせて霧吹き補助。
- 初期養生。散水やシートで保湿し、直射日光と風を避けます。
- 打止め部の処理。レイタンスは硬化後に確実に除去します。
翌日以降
- コア・シュミットなどは計画に従い実施。記録を写真付きで整理。
- 型枠解体の許容強度を確認。焦らず、損傷を避けます。
具体例:夏場スラブ100㎡の段取り
想定は気温32℃、厚さ150mm、設計スランプ18cm、圧送A号機です。必要量は約15m³、圧送能力は20m³/hなので、トラック3台を30分周期で回します。人員は計8名、打込み2・締固め2・ならし1・仕上げ2・受入1で回し、打ち重ね時間は45分以内を目標にします。
- 受入で温度が高い場合は日陰待機と散水で対処。無理はしません。
- 打出しは柱・梁端部から。隅角は先振りで空気を逃がします。
- 表面はブリーディング水が引いてからコテ入れ。早すぎは剥離のもとです。
- 養生はすぐ開始。蒸発が速いので散水+シートで保湿を長めに行います。
注意点(安全と品質)
- ホース先端は人に向けない。合図者の指示で移動します。これは徹底します。
- 高所の打設は手すりと親綱を先行。足場板の跳ね出しには乗らないと決めます。
- 電源コードとホースは交差を避け、養生板で保護。つまずき事故を防ぎます。
- 雨天予報は早めの判断。強い降雨は中止し、打継ぎ面は処理を明確にします。
- 配合変更の提案があれば、必ず設計者と製造所に事前確認を入れます。
まとめ(明日の打設を楽にするコツ)
段取りの良し悪しは、情報のそろえ方と人の動線で決まります。数量、圧送、スランプ、打ち重ね時間を同じ言葉で共有し、チェックリストで抜けを防ぎます。安全は最優先です。合図の統一と足場の確保は言い切って徹底しましょう。終わったら台数と時間の記録を残し、次回に活かせば、回を追うごとに楽になります。
- 次アクション:自現場の打設計画にこの記事のチェック項目を写し、所要時間と人員を5分刻みで見積もってみましょう。
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