コンクリート数量拾いで迷わないコツを先にお伝えします。拾いの基準を決めて手順を固定し、打設計画と合わせて検算します。これだけで発注ミスと残コン(余るコンクリート)をぐっと減らせます。今日から使える形で、原因から具体策まで一緒に見ていきましょう。
よくあるミスの原因
数量のブレには、だいたい決まった元がございます。図面読み違い、打継ぎの扱い、余裕率の幅、これらが重なると数%のズレが発注へ直行します。まずは「どこでズレるか」をはっきりさせましょう。
図面の読み違い(寸法・単位)
スラブ厚や立上り高さの指示が図面で散っていると見落としが出ます。縮尺や単位の混在も注意です。mとmmの換算は表にして机上に固定しましょう(換算表)。
打継ぎ・型枠まわりのロス
打継ぎ(打設を分ける継ぎ目)のすり付けやポンプ配管の立ち上がりで、わずかにロスが生まれます。型枠(コンクリートを形に保つ枠)からの漏れもゼロではありません。ここを無視すると残コンや不足が出やすいです。
余裕率のばらつき
余裕率(歩留まりの上乗せ)は現場や季節で変わります。一律で5%とすると、短い配管や小規模打設では過多になりやすいです。逆に配管が長い圧送(ポンプで送る作業)では不足します。
具体策(再発防止の考え方)
対策はシンプルです。基準化、単位の統一、打設計画との連結。この三つを習慣にします。書式とチェックの力で安定させましょう。
テンプレートで基準化
部位ごとに拾いのテンプレートを用意します。スラブ、梁、壁、基礎の順で入力欄を固定します。打継ぎ線や開口をチェック欄に入れ、抜けを防ぎます。
単位の統一と換算
拾いはm、mm、m³が混じります。単位列を必ず入れ、途中で換算しません。計算は「面積×厚さ=体積」で一本化。単位体積(1m³あたり)の配合(セメントや砂利の割合)もメモに残します。
打設計画と歩掛のリンク
数量だけでなく、圧送距離、運搬台数、打設時間を同じシートに並べます。歩掛(作業量の目安)を入れると段取りが見えます。数量の妥当性が時間と台数の感覚で検算できます。
数量拾いの手順(現場版フロー)
手順を固定すると再現性が出ます。下のフローをチームで共通言語にしましょう。迷いが減り、スピードも上がります。
1. 事前確認
- 最新図面か確認(改訂雲形をチェック)。
- 打継ぎ位置と施工区分をマーキング。
- かぶり厚(鉄筋から表面までの厚さ)と仕上レベルを確認。
- 配合とスランプ(柔らかさの指標)を仮決め。施工計画書のドラフトに反映。
2. 拾い出し(部位ごと)
- スラブ・土間:面積×厚さ。開口は減算。勾配は平均厚で。
- 梁・立上り:断面積×延長。ハンチは台形で処理。
- フーチング・基礎:平面×厚さ。捨てコン(下地の薄打ち)は別計上。
- 打継ぎ分割:日割りで分け、運搬台数と連動。
3. 検算と発注
- 計算書の逆算(体積合計÷平均厚=概算面積)で整合確認。
- 圧送ライン長と口径からロスを見積(目安0.2〜0.5m³)。
- 余裕率は現場条件で調整(3〜5%を起点)。
- 配合・スランプを再確認し、生コン工場と摺合せ。運搬時間の余裕を確保。
具体例で学ぶ(小規模基礎の拾い)
例でイメージを固めましょう。木造の布基礎を想定します。数値は一例ですので、現場に合わせて調整ください。
前提:布基礎 延長30m、幅0.4m、高さ0.5m。フーチングなし。立上り天端は同一。土間コンクリート 30m²、厚さ0.1m、開口2m²。
- 布基礎体積=0.4×0.5×30=6.0m³
- 土間体積=(30−2)×0.1=2.8m³
- 合計=8.8m³
- 圧送ロス見込=0.3m³(配管短め)
- 余裕率3%=0.264m³
- 発注数量目安=8.8+0.3+0.264≒9.36m³ → 9.5m³で調整
打継ぎがある場合は、日ごとに上記を分けます。たとえば土間を翌日に回すと、その分の圧送ロスは別扱いです。残コン対策として、最後の部屋はバケツ打ちや均し量で微調整するのも一案です。
注意点・リスク管理
数量だけでなく、品質と段取りのリスクも一緒に押さえます。小さな配慮で、やり直しを防げます。ここははっきり言い切ります。
かぶり厚と型枠の精度
かぶり厚は安全と耐久の根っこです。増し打ちが出ると数量が跳ねます。スペーサー(鉄筋を支えるブロック)を適正配置し、型枠の通りを事前に確認します。
配合・スランプの差異
配合やスランプが違うと、同じ体積でも打ち回しやすさが変わります。狭い梁や配筋がきつい部位は、スランプ高めを検討します。工場と早めに擦り合わせましょう。
残コンと洗い水の扱い
残コンはコストと環境の両面で重くなります。最後の0.3m³は、犬走りや捨てコンの増しで吸収する手もあります。が、事前の打設計画で台数と順序を詰めるのが先です。
積算との差の見える化
設計積算と現場拾いは前提が違います。差分は理由をメモに残し、次の現場へ回します。歩掛やロス率の更新は、月次で行うと安定します。
まとめと次アクション
数量拾いは、基準化と手順の固定で安定します。打設計画と同じ紙で考えると、数字に息づかいが通ります。今日からできることを、短く並べます。
- テンプレートを作り、部位順と単位を固定する。
- 打継ぎ・開口・ロスをチェック欄で見える化する。
- 圧送と運搬の段取りを同じシートで検算する。
- 余裕率は3〜5%を起点に、現場条件で微調整する。
- 差分の理由を必ず記録し、次現場へ回す。
次アクションとして、あなたの現場版「数量拾い標準シート」を1枚作ってみましょう。最初は簡単で大丈夫です。現場ごとに更新していけば、チームの資産になります。
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