コンクリート打設段取りで梅雨を乗り切る|見極めと実務手順

コンクリート打設段取りは、天候に左右されやすい工程です。ここが整うと手戻りが減り、仕上がりと安全が安定します。本稿では梅雨時期の見極めと実務手順を、現場で使える形に整理します。

梅雨時期に段取りが崩れる原因

原因は大きく、天気の読み違い、配車のムラ、打重ねの時間超過です。雨量の想定が甘いと、スランプ(軟らかさの指標)が変わり、仕上がりが不安定になります。配車が詰まると待ち時間が出て、打重ね時間(レイタンス発生前の許容)が超過します。結果として再振動のタイミングもずれ、打継ぎの肌が荒れやすくなります。

具体策|計画段階で整えること

天候のリスク評価を二段構えに

  • 前日16時時点の降水確率と雨量(mm/h)で一次判断をします。
  • 当日6時の最新レーダーで局地雨の帯の動きまで確認します。
  • 判断基準の例:連続雨量が5mm/h超が2時間以上続く予測なら延期を第一候補にします。

配車と打設順序の「短冊化」

  • 可動範囲で打設ブロックを細かく分割します。1ブロックは60〜90分で完了できる量にします。
  • 生コン車の配車間隔は7〜10分を基準にし、ポンプ車能力(吐出量)に合わせて微調整します。
  • 余裕便を1〜2台確保し、道路事情で遅延が出た時の穴を埋めます。

品質の事前すり合わせ

  • スランプは設計値の±1.5cmで受入れ、気温25℃超なら±1.0cm目標に引き締めます。
  • 打重ね許容時間は気温20℃で90分、30℃で60分を目安に短く見ます(現場標準として明文化)。
  • 試験体は温度ロガーと一緒に管理し、初期強度の把握に使います。

当日の手順|時系列チェックリスト

出社〜朝礼前

  1. 6時:雨雲レーダーで打設時間帯の降雨ピークを確認します。
  2. 6時半:生コン工場に配車再確認、出荷スランプと空気量(耐久性指標)を復唱します。
  3. 7時:型枠(コンクリートを受ける仮設)・配筋の見回り。溜まり水とごみを除去します。

朝礼〜打設開始

  1. 周知:打設順序、合図、避難動線、雨天時の中断判断者を明確にします。
  2. 試験受入:スランプ・空気量・温度を記録し、設計値との差を共有します。
  3. ポンプ圧送テスト:初期の離水を見て、バイブレータ(締固め器具)の本数を調整します。

打設中

  1. 打重ね管理:各ブロックの打ち始めと打ち終わり時刻を見える化します。
  2. 振動:振動棒はピッチ30〜40cm、深さは下層へ5cm食い込ませます。過振動は避けます。
  3. 雨対応:雨脚が強くなれば、直ちにブルーシートで覆い、仕上げ前の雨打たれを防ぎます。

打設後〜養生

  1. 初期養生:打設直後は散水ではなくシートで湿潤を保持します。風が強い日は蒸発が早いです。
  2. 翌朝点検:表面の洗い出し跡やレイタンス(薄いモルタル膜)を確認します。
  3. 強度確認:温度履歴から脱型時期を判断し、無理な脱型はしません。

具体例|判断と調整のコツ

雨で延期か実施かの線引き

たとえば午前中に3mm/hが断続、午後に7mm/hの帯が1時間続く予測なら、午前に小ブロックだけ打設する案が有効です。広いスラブなら周辺から中心へ短冊化し、高低差のある部位は後回しにします。無理をしないために、代替日と型枠延長のコストを朝の段階で共有します。

配車の遅延が出た時

配車が10分以上遅れたら、打設ブロックを一つ縮小します。バイブレータの増員で埋め合わせはしません。余裕便の前倒しと、別ルートからの搬入可否を工場に確認します。待機中の生コン車は日陰で温度上昇を抑えます。

スランプの微調整

現場加水は原則しません。どうしても必要なら監督と試験員立会いで、加水量・時刻を記録します。次便からの配合で調整を依頼し、現場でのつじつま合わせに流れません。

注意点|品質と安全で外せないこと

  • 打重ね面はモルタルで化粧しません。レイタンスはブラシで確実に除去します。
  • 足場と通路は濡れると滑ります。人・車・ホースの交差点は誘導員を必ず立てます。
  • 感電リスクに備え、延長コードの防水と漏電遮断器の動作を事前確認します。
  • 型枠の目地からの漏れは、早期に止めます。硬化が進むと補修跡が目立ちます。

まとめ|段取りで天候リスクは小さくできる

梅雨の不確実さは、情報の更新とブロック化でかなり小さくできます。判断の基準を紙一枚に見える化し、誰がいつ決めるかをはっきりします。無理をしない撤退ラインを先に決めておき、品質と安全を守ります。今日の工程会議で、配車間隔と打重ね時間の基準を全員で確認しましょう。

  • 天候は二段構えで確認する。
  • 打設は短冊化して90分以内で回す。
  • 配車は余裕便を入れ、遅延時はブロック縮小で対応。
  • 現場加水はしない。必要時は記録と次便調整。
  • 養生は湿潤保持を優先、安全動線を固定。

次の一歩として、現場標準の「打設チェックシート」と「雨天判断基準」をA4一枚で作り、朝礼で配ります。小さな準備が、仕上がりと心の余裕につながります。

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