コールドジョイント防止は、やり直しや漏水のリスクを下げ、品質と工期を守る近道です。今日の打設からすぐ効く小さな工夫をまとめました。むずかしい理屈は最小限にして、現場で手が動く形でご案内します。
コールドジョイントとはと主な原因
コールドジョイントは、コンクリート同士の打ち重ねがうまく一体化しない境目のことです。目で見える筋や、見えにくい弱点として残ることもあります。主な原因は、時間の遅れと締固め不足、計画外の中断です。
- 打ち重ね時間の遅れ:前層が硬くなり始めた後に次層が来る
- 振動締固め(バイブレーター)不足:層間のなじみが足りない
- 打込み量の偏り:一か所にため過ぎて横流れが止まる
- 配車遅延やポンプ停止:計画外の待ち時間が発生
- 高温・低温や風:凝結や乾きが早まり段差ができやすい
打ち重ね時間の考え方
打ち重ね時間は、前の層がまだ可塑性を保つうちが目安です。一般には5〜20分が現実的な管理レンジです。部材厚み、温度、スランプ(やわらかさの指標)で前後します。
振動締固めの不足が招くこと
バイブレーターは、層間をなじませる最重要の道具です。挿し込みピッチは30〜40cm、深さは前層へ5〜10cm入れるのが基本です。抜き上げはゆっくり、毎秒5〜10cmを意識します。
配車と打設計画のズレ
ミキサー車の間隔がばらつくと、忙しいときと待つときの波が出ます。台数、運搬時間、荷下ろし時間を合算して、想定サイクルを決めます。余裕を10〜15%持たせると安定します。
現場ですぐ効く具体策
- 打設順序の段取り図を用意:部材ごとに層割りと移動経路を見える化
- 打ち重ね時間の目標を明記:壁に5〜20分の目安を貼る
- 人員配置を明確化:打込み、バイブ、均し、配筋保護で役割固定
- 受入れ検査の徹底:スランプ、温度、空気量をその場で記録
- 連絡手順を一本化:配車遅延時は即リーダー→ポンプ→打込み隊へ
- 予備機材の準備:予備バイブ1本、電源確認、ホースの予備継手
- 気温対策:暑い日は日よけと散水、寒い日は保温材と早めの養生
標準手順(チェックリストつき)
- 事前計画:配合、スランプ、打設順序、層厚、打ち重ね時間の基準を決める
- 配車手配:運搬時間と荷下ろし時間から台数とサイクルを算定
- 朝礼で共有:役割分担と合図、止める判断の条件を口頭+掲示
- 受入れ検査:スランプ、温度(10〜30℃目安)、空気量を確認し記録
- 打込み:層厚は30〜50cm、隅から順に。鉄筋や型枠を傷めない
- 振動締固め:ピッチ30〜40cm、前層へ5〜10cm入り、ゆっくり抜く
- 打ち継ぎ処理:やむを得ず中断なら、面を水平に整え、レイタンス(薄い脆弱層)除去
- 仕上げと養生:表面を均し、風避けと散水やシートで乾燥と温度を管理
- 記録:時間、台数、気温、写真。次回の改善に直結します
受入れ検査のコツ
試験値が仕様と外れる時は、現場での加水は避けます。配合、運搬時間、待機の有無を確認し、出荷元と即共有します。迷ったら一旦保留にして、先行ロットで回し、流れを止めない判断も有効です。
振動締固めのコツ
端部と密な配筋部は過密になりがちです。短めに刻んで確実に差し込みます。過振動は材料分離(砂利とペーストの分かれ)を招くので、長く入れ過ぎないようにします。
打ち継ぎ面の扱い
どうしても中断するなら、面を水平に整えます。固まる前に再開できる見込みが低い時は、後日の再打設を前提に、表面のレイタンスを除去し、目荒し(表面を粗くする)と清掃を丁寧に行います。
失敗と成功の具体例
失敗例です。壁の打設でポンプが40分停止し、1.2mの高さに薄い筋が残りました。圧縮強度は規定内でしたが、止水性能が落ち、止水材の追加施工が必要でした。配車の遅れと人員の再配置が間に合いませんでした。
成功例です。同規模の現場で、配車サイクルを2分短縮し、バイブ担当を2名に増員。層厚を40cmに統一し、打ち重ね時間を10分以内に収めました。記録では中断ゼロ、表面筋も出ず、翌日の型枠解体も計画どおりでした。
よくある注意点・リスク
- 安全最優先:足場と通路を確保し、合図を一本化。無理な突き出しはしない
- 増し水NG:ワーカビリティは化学混和剤で。現場加水は品質を不安定にします
- 気温の影響:暑い日は凝結が早いので小分けで回す。寒い日は保温と長めの養生
- 開口・隅部:材料がたまりやすいので、先に細部を満たし、後から面をつなぐ
- 記録不足:写真と時間を残さないと、原因追跡ができません
まとめと次アクション
コールドジョイント防止の肝は「時間を切らさない」「層をなじませる」「中断に備える」の三つです。今日できることから一つでかまいません。打設ボードに「目標の打ち重ね時間」と「合図の流れ」を貼り、現場全員で共有してみてください。
- 原因:遅れ、締固め不足、計画外の中断
- 具体策:段取り図、役割固定、受入れ検査、予備機材
- 手順:受入れ→打込み→締固め→養生→記録
- 数値目安:層厚30〜50cm、ピッチ30〜40cm、打ち重ね5〜20分
コメント