コンクリート打設 段取りで品質と安全を両立する現場手順

コンクリート打設 段取りを整えるだけで、品質も安全もぐっと安定します。最小の手戻りで仕上げるための考え方と、明日から使える手順をまとめました。ポイントは「時間」「人」「物」を前日までにそろえ、打設中は打ち重ね時間を守ることです。

なぜ不具合が起きるのか(原因)

不具合の多くは、打設順序の迷いと配車のズレから生まれます。打ち重ね時間(層と層の継ぎ足し許容時間)を超えると、コールドジョイント(不良な打継)になりやすいです。ブリーディング(水が浮く現象)の見極めが遅いと、沈下や仕上げムラも出ます。

さらに、人員配置が曖昧だと、バイブレーター(締固め機)やホース操作が遅れます。結果としてジャンカ(豆板:充填不足)やはらみ(型枠のふくらみ)につながります。根っこは、段取りの見える化不足にあります。

具体策の全体像(計画で8割決まる)

まず打設計画書(手順書)を一枚で見える化します。開始時刻、打設順序、打ち重ね時間の基準、配車間隔、ポンプ車の配置を明記します。安全と品質の両面で、迷いを消しておくのが肝心です。

配車と数量の見える化

  • 必要数量+余裕分3〜5%を算出(歩掛りと余盛を含む)
  • 配車間隔は5〜15分で調整(交通とポンプ能力を考慮)
  • ポンプ能力(理論吐出量)と人員数で実勢能力を推定
  • 渋滞時のバックアップ便と最終便の締切時刻を設定

受け入れ検査の所要時間も配車間隔に織り込みます。スランプ(柔らかさの指標)や空気量、コンクリート温度の測定で、1台あたり3〜5分は見ます。ここが詰まると全体が遅れます。

打設順序とブロック割

打設は原則「遠い→近い」「低い→高い」「細い→太い」の流れが安定です。型枠の変形リスクと締固めの到達性を考え、ブロック割(区画割り)を設定します。各ブロックに担当者と合図方法を割り当てます。

品質管理項目(受け入れ検査)

  • スランプ:設計±2.5cmを目安(現場協議値に従う)
  • 空気量:4.5±1.5%(一般目安、仕様優先)
  • 温度:外気・材料で変動、30℃超は要注意
  • 塩化物量:規格値内を確認(鉄筋腐食防止)

異常が出たら、まず出荷元と即時協議します。現場での加水は原則しません。ワーカビリティ(作業性)は打設方法と締固めで補います。

段取りと手順(チェックリスト)

前日までの準備

  • 配合表と出荷証明の取り交わし(設計強度・スランプ)
  • ポンプ車・生コン車の配車確定と連絡網の共有
  • 型枠・鉄筋・インサートの自主検査、是正完了
  • 通路・足場・照明・養生材の準備、立入禁止の表示
  • バイブレーターの本体+予備機、延長コードの点検

この段階で写真帳用の撮影位置も決めておきます。停電や雨天の代替案(延期基準)も文書化しておくと安心です。安全は段取りのうちです。

当日朝の立上げ

  • KY(危険予知)と役割分担の復唱、指差呼称
  • 受け入れ検査の配置とサンプル採取手順を確認
  • 打設順序の合図(無線・ハンドサイン)を共有
  • 逃げ道・退避スペースの確保、誘導員の配置

ここで「止める権限」を誰が持つかをはっきりさせます。迷ったら止める。品質と災害を未然に防ぐ基本です。

打設中の要点

  • ホース先端は常にコンクリート内、落下高さは1.5m以内
  • バイブレーターは10〜15秒/点、重ね幅は半径の1.5倍
  • 打ち重ね時間は目安45〜90分(配合・気温で変動)
  • 上面のブリーディング水は引きを待ってから仕上げ

打設速度が落ちたら、すぐ配車を間引きます。遅延時は打継位置を前倒しで切り替え、無理な連続を避けます。合図は短く、判断は早めにします。

打設後の養生と確認

  • 初期養生(乾燥防止):散水やシートで湿潤を保持
  • 温度応力に注意:昼夜の温度差が大きい日は被覆
  • 打継面は粗面化し、レイタンス(薄膜)を除去
  • 仕上げ後24時間は荷重・振動を避け、立入管理

ひび割れを見つけたら、原因を「乾燥」「温度」「拘束」に分けて記録します。再発を防ぐには記録と振り返りが効きます。写真と数値が次回の助けになります。

具体例(数量と配車のシミュレーション)

例:スラブ100m²×厚さ150mm=15m³。余裕5%で15.75m³。4m³車×4台、3m³車×1台の計5便で組みます。ポンプ実勢8m³/hなら、所要約2時間です。

受け入れ検査3分/台、車移動5分、打設1台あたり20分と仮置きします。配車間隔は10〜12分で設定。遅れ時には第5便を待機に切替。終盤の仕上げ時間を確保します。

打ち重ね時間は気温30℃で短くなります。連絡を密にし、層厚を薄めにして進めるのが安全です。無理に厚く積むと締固めが甘くなります。

注意点とよくある失敗

  • 加水での調整:原則禁止。ワーカビリティは方法で補う
  • ホースの引きずり:鉄筋のずれや型枠傷を招く
  • 受け入れ検査の省略:小さな異常が大問題に直結
  • 連絡不足:配車と人員がちぐはぐになり、手戻り増

安全面では、バック走行の誘導と足場の滑りに注意です。打設中は声が通りにくいので、合図は事前に決めた形で統一します。疲労が見えたら小休止を入れ、質を落とさないようにします。

まとめと次アクション

打設の成功は、段取りの見える化と打ち重ね時間の管理にかかっています。数量・配車・順序・人の4点を一枚に整理し、当日は検査と合図で迷いを消します。終わったら必ず記録と振り返りを行います。

次は自現場の配車表と打設計画書を、今日のテンプレで書き出してみましょう。前日打合せで共有すれば、当日の判断が軽くなります。小さな準備が、大きな品質と安全につながります。

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