まず知ってほしい結論とベネフィット
コンクリート打設チェックリストを一枚持つだけで、当日の迷いとミスはぐっと減ります。
品質と安全、そして工期の三つを同時に守りやすくなります。
誰が見ても同じ判断ができる形にするのがポイントです。
今日から現場でそのまま使える項目を、やさしく順にまとめます。
なぜ抜けが起きるのか(原因)
抜けやムラの多くは、事前の段取り不足から生まれます。
配車の波、人数の偏り、機械の予備なしなど、小さな穴が重なります。
気温や風など気象の読み違いもあります。
仕様書の指示と現場の条件がずれると、判断が割れます。
- 計画の粒度不足:役割と時刻が曖昧だと現場が止まります。
- 情報共有の遅れ:配合やスランプ(軟らかさの指標)が伝わらないと迷います。
- 気象対応不足:暑中・寒中の対策が当日判断になると手遅れです。
- 機材リスク:バイブレータ(締固め器具)やホースの予備が無いと品質が落ちます。
具体策:チェックリストで抑える要点
チェックリストは「事前」「当日」「記録」の三本立てにします。
仕様書優先を前提に、現場の条件に合わせて目安を添えます。
安全と品質に直結する項目は太字や赤などで強調してください。
誰がやっても同じ順番で回せる形が理想です。
- 事前:配車間隔、ポンプ位置、打込み順、役割分担、代替手段を明確化。
- 当日:受入検査、打込み速度、層厚、締固め、仕上げ、養生を時系列で。
- 記録:受入データ、温湿度、写真、是正メモをセットで残します。
手順:当日のタイムラインで点検
搬入前(−60〜0分)
- 気象の確認:気温・風・直射の強さを把握。暑中・寒中は開始時刻を調整します。
- 動線と安全:車両誘導、退避帯、足場の滑り止めを再点検。ここは必須です。
- 機材・予備:バイブレータ予備1台、ホース予備、散水・被覆資材を近くに。
- 役割表の再共有:受入、打込み、締固め、仕上げ、記録の担当を口頭復唱。
受入検査(到着ごと)
- 書類照合:配合、呼び強度、スランプ、空気量、単位水量などを仕様と一致確認。
- スランプ試験:スランプ(軟らかさ)を現場で確認。指定範囲から外れたら受け入れません。
- 空気量・温度:空気量(耐凍害・ワーカビリティの指標)とコンクリート温度を記録。
- 到着時刻:ミキサ車ごとに記録。回転時間が延びた車は注意して扱います。
打込み(順序と速度)
遠い側から近い側、低い側から高い側へ、打込み順を事前計画どおりに進めます。
層厚は30〜50mm…ではなく、30〜50cmを基本目安にすると作業が安定します。
打込みは連続性が命です。中断はコールドジョイント(打継ぎの弱点)になります。
- 配車間隔:15〜20分目安で波をならすと、締固めと仕上げが追いつきます。
- 打込み高さ:自由落下は避け、ホース先端で静かに敷きならします。
- 勾配・型枠:たわみや漏れは即時に補強。安全は最優先です。
締固め(バイブレータの使い方)
締固めは品質の要です。ここは言い切ります。適切な方法で必ず行ってください。
1点あたり5〜15秒、前層に10cmほど差し込み、ピッチは40〜50cmを目安にします。
鉄筋や型枠に強く当てず、過振動で分離させないことが大切です。
- 層ごとの重ね:前層とよくなじませ、気泡を逃がします。
- 入射間隔:均一な間隔で確実に。根拠のあるリズムを守ります。
- 見える品質:表面のブリーディング(水浮き)を観察し、次の施工を判断。
仕上げと打継ぎ
表面仕上げはタイミングが肝心です。テカリ水が引いてからコテを入れます。
打継ぎ部は清掃・目荒し・再湿潤をセットで実施。必要に応じて処理材を使用します。
段差や勾配は通りを見ながら、測定と目視を併用してください。
養生(保護と水分管理)
打設後は養生で品質が決まります。
被覆・散水・保温で温度と水分を守ります。ここを省くとひび割れが増えます。
暑中は直射遮へいと初期散水、寒中は保温・凍結防止が基本です。
- 初期3〜24時間:乾燥・凍結を避ける対策を強化。風が強い日は特に注意。
- 歩行解禁:管理者が強度と表面状態を確認するまで立入禁止にします。
- 記録:養生方法と時刻、気温を写真と一緒に残します。
例:そのまま使えるチェックリスト項目
配布しやすい一枚にまとめると、みんなの足並みがそろいます。
以下を現場向けに編集し、太字や色で優先度を示してください。
数字は目安です。仕様書・試験成績書を常に優先します。
- 日付・工区・数量・開始時刻・天候・気温
- 配合・呼び強度・スランプ・空気量(受入)
- 配車計画:台数、間隔、予備の連絡先
- 機材:ポンプ、バイブレータ本体+予備、ホース、被覆材
- 役割:受入・誘導・ホース・締固め・仕上げ・記録・安全
- 打込み順序と層厚(30〜50cm目安)
- 締固め:1点5〜15秒、前層へ10cm差込、ピッチ40〜50cm
- 仕上げ:表面水引き後のタイミング、サンプル面の確認
- 養生:被覆/散水/保温の方法、開始・終了時刻
- 是正・特記事項:中断、雨、温度異常、代替対応
注意点:よくある勘違いと落とし穴
- 「スランプが柔らかいほど良い」ではありません。指定範囲外は品質低下に直結します。
- 中断は小さくても危険です。打継ぎの処理を省くとコールドジョイントになります。
- 早仕上げは禁物です。ブリーディングが収まる前のコテ当てははく離の原因です。
- 養生短縮はコスト減ではありません。後の補修費と信用低下の方が大きくなります。
- 写真だけでは不十分です。数値と時刻をセットで残さないと再現できません。
まとめ:現場での回し方と次アクション
チェックリストは前日までに配布し、朝礼で役割と優先度を声に出して確認します。
当日は受入→打込み→締固め→仕上げ→養生→記録を時系列で淡々と進めます。
数字と写真を残し、翌日に振り返りをします。改善は次の一枚に反映します。
次のアクションとして、配筋検査(鉄筋の確認)のチェックリストも整えると、打設前の不具合を早めに断てます。
現場の型に合わせ、今日の一枚をチームの共通言語にしてください。
コメント