コンクリート打設 段取りの基本と当日運用術|天候別チェックと失敗回避

先に結論:段取りを整えれば打設は安定します

コンクリート打設 段取りは、前日の確認と当日の流れを押さえるだけで品質と安全が上がります。
ムリのない配車と人員配置、天候に応じた養生(保護・保温)で、コールドジョイント(打継ぎ不良)を確実に防げます。
小さな手戻りを減らし、残業も抑えやすくなります。
今日から使えるチェックと手順をまとめました。

なぜ段取りが崩れるのか(原因)

原因はシンプルで、計画の粗さと情報の食い違いです。
数量の見誤りや、ポンプ能力と配車の不一致、型枠や配筋(鉄筋の組み)干渉の未解消が重なりがちです。
天候・気温の読み違いも大きく、夏は初期ひび割れ、冬は凝結遅延、雨は仕上げ遅れを招きます。
さらに、指揮系統が曖昧だと合図が遅れ、打込みが間延びします。

安定させる具体策(設計図より現場に効く3本柱)

1. 計画テンプレの固定化

  • 打設計画書の型(テンプレ)に、部位・数量・配合・スランプ(柔らかさの指標)・目標サイクル・人員を必ず記入。
  • 合図系統と緊急停止の手順を1枚図に。誰でも一目で分かる形にします。
  • 型枠・配筋・設備孔の写真付き承認欄を追加し、前日までにハンコで確定。

2. 数量と時間の見える化

  • 総数量m³÷実効打込み能力(m³/h)で所要時間を算出。実効はポンプ能力×0.7で保守的に。
  • 配車間隔は「受入→打込み→締固め(バイブレータ:締め固め機)→均し→仕上げ」の最遅工程に合わせます。
  • 要所にチェック時刻を設定。30分遅延で赤ランプ、60分で打設方法の切替を決めます。

3. 天候・気温別の標準化

  • 夏(気温30℃超):打設開始を前倒し。散水・遮熱シート、急結材は要検討。仕上げは薄塗りで早めに。
  • 冬(5℃未満):予熱水・早強型の採用、保温養生。仕上げ遅れを見込んで人員を厚めに。
  • 雨:ブルーシートで落下水遮断。表面のレイタンス(薄いモルタル)除去を前提に段取り。

前日までのチェックリスト(保存版)

  • 構造図と配筋図の最終差し替え有無を確認。干渉箇所はマーキングして現地で合意。
  • 型枠の通り・締付け・セパレーター(締結金物)のピッチ確認。漏れそうな目地に止水テープ。
  • コンクリート配合・スランプ・空気量・温度の指示書を生コン(レディミクスト)へ確定連絡。
  • ポンプ車能力とホース径、圧送経路の安全確保。逃げ場と退避動線を実線で表示。
  • 人員配置表(受入、ホッパー、打込み、バイブ、均し、仕上げ、清掃、合図係)を配布。
  • 試験(スランプ・空気量・塩分・温度・供試体)の測定者と場所を決め、機器を前日点検。
  • 天候シナリオ(晴・猛暑・小雨・本降り・低温)別の代替手順と終了判断を用意。

当日の手順(タイムラインで迷わない)

  1. 開始2時間前:全員KY(危険予知)と役割確認。緊急停止合図と退避場所を声出しで復唱。
  2. 開始1時間前:型枠・足場・通路の最終点検。ホースの擦れ対策と落下防止を完了。
  3. 生コン到着:受入検査。スランプ・温度・空気量を記録。合わなければ受入中止をはっきり伝えます。
  4. 打込み開始:部位の高い所から一定速度で。層厚は30〜50cmを目安。バイブは挿入間隔40cm程度。
  5. 進捗管理:30分ごとに出来高m³を掲示。遅れは配車間隔の調整か打込み点の追加で吸収。
  6. 仕上げ:表面の泌み水とレイタンスを待ち、必要なら軽く除去。強くこすり過ぎない。
  7. 養生:夏は散水・遮熱、冬は保温。風が強い日は急乾燥に注意し、早めに被覆。
  8. 清掃・撤収:圧送配管の洗浄を安全に。残コン処理は指定場所で。周辺道路も必ず清掃。

具体例と目安(壁180mm×高さ3.0m×長さ30m)

この壁の概算数量は約16.2m³(0.18×3.0×30)。
ポンプ実効能力7m³/hなら所要約2.5時間、配車は30分間隔で5〜6台が目安です。
バイブレータは25mm径×2台でローテ。打込み層厚40cm、1層あたりのサイクルを15〜20分に設定します。
夏日なら開始7:30、冬は9:00開始にして職人の疲労と凝結タイミングを合わせます。

よくある失敗と注意点

  • コールドジョイント:配車遅延で発生。合図係が遅延を検知したら、打込み点の追加か層厚の一時変更でつなぎます。
  • 締固め不足・過剰:ハチの巣は不足、分離は過剰。1点5〜10秒、上下で重ねる基本を守ります。
  • 打込み高さが過大:自由落下は1.5m以内。長いシュートやホース延長で衝撃を減らします。
  • 雨天の仕上げ遅れ:表面水が抜けるまで待つ。無理にこするとレイタンス膜が残ります。
  • 安全:配管抜けは重大事故。クランプの二重確認、立入禁止のコーン設置は必ず行います。

まとめと次の一手

  • 段取りは「テンプレ固定・見える化・天候標準化」で安定します。
  • 前日チェックと当日タイムラインで迷いを無くします。
  • 数量と能力の保守計算で、ムリとムダを削れます。
  • 安全合図と退避動線は声出しで統一します。

次の一手は、あなたの現場用にチェックリストを10分でローカライズすることです。
天候シナリオと配車表を添えて、朝礼で共有しましょう。

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