コンクリート打設 段取りを整えるだけで、品質と安全はぐっと安定します。事前チェックが甘いと、遅延や打継ぎ不良が起きやすいです。今日は現場で迷いがちなポイントを、やさしく整理します。すぐ使える要点だけ、手順で押さえます。
コンクリート打設の失敗原因を知る(なぜ起きるか)
よくある原因は、計画の粗さです。配車計画が曖昧で、ミキサー車の間隔が合わず、打重ねが遅れます。品質条件も、スランプ(やわらかさ)や呼び強度(設計強度)が統一されていないと、現場で迷いが出ます。
段取りの不足も大きいです。型枠や支保工(支え)が未確認で、打設途中に補修となります。動線が混線し、ポンプ車の設置と職人の作業位置がぶつかることもあります。安全が崩れると、作業は必ず止まります。
コミュニケーション不足も見逃せません。打設順序の合意が弱いと、バイブレータ(締固め機)や金ゴテ(仕上げ道具)の手が足りません。温度や天候の読み違いで、硬化が進み、打継ぎ部(境目)の接着が悪くなることもあります。
具体策:打設計画・品質・安全を一本化する
打設計画と配車計画を合わせる
先に「打設範囲・順序・人数・時間」を線で描き、そこに配車を当てます。ミキサー車の到着間隔は、ポンプ能力と打設速度に合わせます。余裕を10〜15%見て、遅延と渋滞の両方を避けます。
- ポンプ能力(m3/h)×稼働率で実力値を出す
- 1台あたり荷下ろし時間+往復時間=回転時間
- 必要台数=所要量÷(1台容量×回転/時間)
品質目標と受入検査を明確に
届いたコンクリートは、受入検査で確認します。スランプ、空気量、温度は基本です。記録は写真と帳票で残し、ズレがあれば即調整します。化学混和剤(性能を補う薬剤)の追加は、設計・製造者の指示がある時だけにします。
安全と動線の整流化
足場と通路は、ポンプブームの可動範囲を見て確保します。ホースの振り幅に合わせ、立入禁止帯を設定します。指揮者とホイッスルなど合図も決めます。誰が合図を出すかを先に決めるだけで、ヒヤリは減ります。
段取りと手順:チェックリスト
- 図面・配筋・出来形(寸法出来)を最終確認する
- 型枠・支保工の締め直し、漏れ止めの再点検をする
- 打設順序と区画、打重ね時間の目安を掲示する
- ポンプ車の設置位置と退避動線を張り出す
- 電源・照明・無線の確認、合図者を指名する
- 工具と予備(バイブレータ、ホース、延長コード)を準備する
- 受入検査の道具一式と記録用紙をセットする
- 配車の到着順・番号を共有し、誘導員を配置する
- 打込み厚さと打設速度を合わせ、締固めと見合う人員をつける
- 仕上げ・養生(乾燥を防ぐ保護)の手順と材料を最終確認する
具体例:スラブ300m²・厚150mmの打設計画
数量は300m²×0.15m=45m³です。ポンプの実力値を40m³/hとします。休憩や段取り替えで稼働率を80%と見て、実効32m³/hです。打設時間は約1.5時間が目安です。
ミキサー車は4m³車で計12台が必要です。1台の回転は、荷下ろし10分+往復20分で30分と想定します。到着間隔は4〜5分で3台同時回しにします。先行2台、後続1台のバトンで、打重ねの間延びを避けます。
品質条件は、呼び強度27、スランプ18cm、空気量4.5±1.5%の想定とします。気温が高い日は、到着温度が上がりやすいので、直射日光を避けた待機と、散水で周囲温度を下げます。受入検査でズレを見つけたら、早めに製造所へ連絡します。
注意点・NGを先取り
- 打重ね時間は、現場仕様と温度で変わります。一般に短めを意識し、連続打設で切れ目を作らないことが安全です。
- レイタンス(薄い弱層)の除去は、硬化前の表面整正と、硬化後の軽い目荒らしで対応します。打継ぎ部は特に丁寧にします。
- バイブレータは、差し込み間隔を1.5倍径以内にし、型枠や鉄筋に強く当てません。過振動は材料分離の原因です。
- 天候急変に備え、ブルーシートと風よけを待機させます。雨なら表面を守り、風なら急乾燥を防ぎます。
- 残コン(余ったコンクリート)は、事前に処理方法を決めます。受入削減や別打設への回し方を関係者で共有します。
まとめ:段取りが品質と安全を守る
打設は、計画・検査・安全の三本柱をそろえると、迷いが減ります。配車と打設速度を合わせ、受入検査でズレを早期に見つけます。動線を整え、合図を一本化すれば、現場の呼吸が合います。
今日のチェックリストを、次の現場でそのまま使ってみてください。数字を一つずつ当てはめるだけで、段取りの質が上がります。記録も残り、次回の精度がさらに上がります。
要点のチェック
- 配車はポンプ実力値に合わせ、10〜15%の余裕を持つ
- 受入検査はスランプ・空気量・温度を基本に即記録
- 打設順序と打重ね時間は現場で見える化する
- 動線と合図を一本化し、立入禁止帯を明確にする
- 養生計画と残コン処理を事前に決めておく
次アクションとして、自現場の数量とポンプ実力を当てはめ、配車間隔の試算表を作りましょう。チームで共有すれば、打設当日の不安が小さくなります。
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