コンクリート打設 段取りの肝は「前日で勝ち、当日は流れを切らない」ことです。段取りが決まれば品質も安全も安定し、ムダな待ちと手戻りが減ります。今日の記事では、若手でもすぐ回せる実務の型をまとめます。迷ったらこの順番で見直せば大きな失敗は防げます。
なぜ段取りが品質と安全を左右するか(原因)
打設は生コン(工場で練ったコンクリート)の時間勝負です。受入から締固めまでの停滞が、コールドジョイント(打ち継ぎ不良)やひびを招きます。人と機械の待ちが出ると焦りが生まれ、災害も増えます。だからこそ、順序と動線を事前に固めることが最優先です。
もう一つは情報のズレです。図面、配筋、スリーブ(貫通管)に食い違いがあると現場が止まります。現場が止まるとスランプ(やわらかさの目安)が落ち、仕上がりに差が出ます。小さな齟齬を前日までにすべて潰す段取りが、品質の底上げになります。
具体策:図面読みと打設計画書の要点
打設順序と区画割を先に決める
打設計画書には、打設順序、区画、打ち重ね時間を必ず明記します。ポンプ車の立て位置とブームの届き、圧送(ポンプで送る)経路も図で示します。遠い場所から近い場所へ、薄い部材から厚い部材へ、壁→梁→スラブの順を基本にします。
打ち継ぎ位置は型枠(コンクリートを形作る枠)に墨(印)で表示します。止め打ち(その日で止める)なら縁切り材や目地材も手配します。温度管理(気温・コンクリ温度)と打設時間帯を記録し、日射や風の影響も見込みます。
人員配置と役割表を配る
最低限の役割は、受入検査、圧送オペ、シュート係、バイブレーター(締固め機)係、ならし、仕上げ、養生、交通・安全です。各担当の交代要員も決め、休憩を時計で割ります。口頭だけでなく、A4一枚の役割表を前日配布します。
資機材は数で管理します。バイブレーターは2台+予備1台、ホースは長短、トンボ(ならし道具)、レーザー(高さ確認)、散水、ブルーシート(雨・日よけ)、発電機、照明まで。足りない物が一つでもあると流れが止まるので、予備は必ず持ち込みます。
手順:前日〜当日のチェックリスト
前日までの準備
- 図面・配筋・スリーブの三者照合。干渉はその場で是正。
- 型枠の通り、締付け、セパ間隔、目違いを全数確認。角は面木(角を取る部材)挿入。
- 受入基準の確認。スランプ、空気量、塩化物、温度の許容値を共有。
- 生コン工場と配車時間を確定。台数、車間10〜15分、合計量+3%余裕。
- ポンプ車の設置位置と地耐力を確認。アウトリガー下に敷板。
- 動線の確保。人と圧送ホースの交差を避ける養生通路。
- 近隣と工程共有。騒音・車両の時間帯を掲示。
当日の流れ
- 朝礼で危険予知。合図、退避、転倒・巻き込まれ防止を復唱。
- 受入検査を実施。スランプ、空気量、温度、外観。基準外なら受入れません。
- 初圧送はモルタルでプライミング(ホース内の滑りづけ)。廃棄場所を決めておきます。
- 部材ごとに層厚30〜40cmで打ち、各層でバイブレーターを斜めに刺し、既打ちと重ねます。
- ならしはレーザーで天端管理。余剰モルタルやレイタンス(上澄み)を回収。
- 表面が乾き過ぎる前に養生開始。散水、シート、保温マットで温湿度を保ちます。
- 片付けと是正箇所のマーキング。写真整理、コンクリ受入票の保存。
例:スラブ150mm・200m²の夜間打設
条件は、配筋完了、スリーブ多数、気温28℃、生コン24N、スランプ18cmです。全体量は約30m³、配車は2m³車を15分間隔。ポンプ1台、バイブレーター2+予備1、仕上げ2、ならし2、受入1、安全1で回します。
順序は奥から手前、柱まわり先行でコールドジョイントを防止します。層厚は40cmで二段。ホースは人の背後を通さず、合図は旗と声の二重化にします。表面はドライシェイク(表面硬化材)を使わず、天端モルタルで軽整正に留めます。
この条件だと、打設は約2時間、仕上げ・養生含めて3.5時間が目安です。休憩は1回10分を2回、交代で取り、連続作業を避けます。写真は要所で6枚セット(全景、工程、機材、指示、検査、完了)を基本に撮ります。
注意点:雨天・高温・打ち継ぎ
雨天時は、受入でスランプ増加に注意。基準外は受入れません。ブルーシートの屋根を先に張り、打設面に雨水をためないようにします。仕上げは遅らせ、ブリーディング(水浮き)収まり後に軽く押さえます。
高温時は、コンクリ温度を30℃以下に保つ段取りが要点です。打設時間を朝夕に寄せ、打込みから締固めまでの時間を短くします。急な乾きには蒸発抑制剤や散水で対処し、早期のひびを防ぎます。安全第一で無理な継続はしません。
やむを得ない打ち継ぎは、目地位置を直線で明確化します。再開時はレイタンスを除去し、表面を洗い出して付着を高めます。再打設は既打ち側を先にぬらし、打ち重ね時間を守ります。ここは妥協しません。
まとめと次アクション
段取りは、順序、役割、動線、予備の四点で決まります。前日で9割を固め、当日は流れを切らさない。それだけで品質も安全も安定します。迷ったら今日のチェックを見返してください。
次は、受入検査の数値と写真の撮り方を深掘りすると精度が上がります。社内の標準様式に合わせて、検査〜報告の流れを整えましょう。
- 受入基準は現場で復唱する
- 役割表をA4で配布する
- 予備機材を必ず持ち込む
- 雨・高温の対策を前日で決める
- 写真と記録はその日のうちに整理
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