結論とベネフィット:コンクリート打設 段取りの要
コンクリート打設 段取りは、前日の準備と当日の合図づくりでほぼ決まります。段取りがそろえば、スランプ(柔らかさの目安)や打重ね時間の管理がブレず、仕上げと強度が安定します。結果として、やり直しやクレームが減り、工期とコストも守れます。ここでは季節差の原因を整理し、実務の具体策と手順を丁寧にたどります。
原因:季節で変わる不良の出方
暑中は温度が高く、ブリーディング(水が上がる)が早く、凝結も早いです。締固めが追いつかず、打継ぎ面のレイタンス(白膜)や豆板(空隙)が出やすくなります。寒中は温度が低く、初期強度の立ち上がりが遅く、凍害や遅延による打重ね時間越えが起きがちです。どちらも共通する原因は、配合・人員・機材・指示の不足です。つまり、計画と合図が足りないことが不良の根っこです。
具体策:計画と体制を先に固める
打設計画書と配合計画をそろえる
- 配合は季節に合わせ、暑中は単位水量を抑え、寒中は早強や混和剤を検討します。
- スランプは部材と締固め余力に合わせて設定します。例:柱・梁は18±2cm、床は15±2cmなど。
- 打設計画書に打設順序、打重ね時間(例:30〜60分)、バイブレータ本数、圧送(ポンプ車)経路を図で入れます。
- 試験計画は受入検査の項目(温度、スランプ、空気量、塩分、試料採取と圧縮強度)を明記します。
人員と機材の配置を先に決める
- ポンプ車オペ、ホース先端、バイブレータ要員、コテ仕上げ、見回りの役割を固定し、交代要員も確保します。
- バイブレータ(締固め機)は余裕を持って2台以上、延長コードと予備を準備します。
- ホース先端の高さ合図、打込み層厚(30〜40cm目安)、打込速度(m³/h)を事前に共有します。
- 養生材(シート、散水器、断熱材)と温度計を季節に合わせて用意します。
受入検査と温度補正を徹底
- 受入時にコンクリート温度、スランプ、空気量を測定し、記録します。温度が高すぎ・低すぎなら即時連絡し、配合や混和剤を調整します。
- 試料採取は均等に行い、圧縮強度用供試体を作成します。番号管理と養生条件を明確にします。
- 不適合は妥協せず受入拒否も検討します。安全と品質を優先します。
手順:当日の流れを簡潔に
打設前のチェック
- 型枠と支保工の締め直し、鉄筋のかぶりとスペーサー位置、開口補強を最終確認します。
- 打設経路の障害物除去、合図を行う位置と担当者を決めます。無線機は予備電池を用意します。
- 型枠内の清掃と散水の要否を判断します。過度な水は禁物です。
打込み中の要点
- 層厚30〜40cmで段階的に入れ、バイブレータは垂直に入れ、10〜15秒、前層へ5〜10cm差し込みます。
- ホースの引き回しで鉄筋を傷めないよう配慮します。ホース先端の高さを一定に保ちます。
- 打重ね時間の管理者を置き、記録します。遅れそうな部位は先行して人を増やします。
締固めと仕上げ
- 隅角や密な鉄筋部は細径バイブレータを活用します。型枠を軽くたたき、気泡を抜きます。
- 天端はブリーディングが落ち着いてからトンボでならし、金ゴテ仕上げのタイミングを合わせます。
- 柱・壁の打継ぎ面はレイタンス除去を想定し、後日の処理計画も記録します。
養生と記録
- 暑中は散水やカーリング防止の被覆、寒中は断熱マットやシートで温度を保ちます。
- 温度計で部材温度を測り、早期の乾燥や凍結を避けます。初期24〜48時間を重点管理します。
- 打設数量、時間、気温、トラブル、是正を簡潔に記録し、次回の改善に回します。
例:夏と冬でこう変える(数値の目安)
夏の例です。開始時間を朝に寄せ、搬入間隔を短くします。スランプはやや低めを選び、空気量は3.5〜5.5%を維持します。表面は早めに被覆し、仕上げはブリーディング終了を見極めます。バイブレータは多めに配置し、打重ね時間は30分以内を狙います。
冬の例です。前日に配合の温度補正を打合せし、加温や早強材を検討します。打込みは日中に行い、部材温度5℃以上を維持します。打重ね時間は60分を目安に、遅延時は人員を追加します。脱型は強度確認後にし、断熱養生を延長します。
注意点:安全と品質を両立するコツ
- 安全は最優先です。打設中は足場の踏板を固定し、ホース下の立ち位置を確保します。
- バイブレータの過振動は segregation(材料分離)を呼びます。時間と位置を守ります。
- ポンプ車のアウトリガーは地耐力を確認し、敷板を使います。周囲の立入を制限します。
- 雨や風の急変に備え、シートと排水経路を準備します。判断は早めに共有します。
- 記録の抜けは次回のムダにつながります。写真と数値を同じフォルダで管理します。
まとめ:今日からのチェックリスト
- 配合と打設計画書に季節対応を反映したか
- 人員・機材・予備の配置と合図の確認をしたか
- 受入検査と温度の記録を整えたか
- 打重ね時間と締固めの担当を明確にしたか
- 養生計画と安全措置を全員で共有したか
次アクションとして、次回打設に向けた「段取りレビュー」を30分で実施しましょう。良かった点と改善点を1つずつ挙げ、写真と数値で残すだけでも、次の品質は確実に上がります。
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