「コンクリート打設 段取り」を見直すだけで、高温期でも品質と安全はぐっと安定します。最初に結論です。原因を正しく押さえ、時間帯と人員、配合と養生を前倒しで固めること。この順で考えると、ムダとムリが減ります。
高温期に起きる「失敗の原因」
夏場は温度が高く、コンクリートの凝結(固まり始め)が早まります。打重ね時間の余裕が減り、コールドジョイント(打ち継ぎ不良)が出やすくなります。さらに風と日射で表面が乾き、ひびや色むらの誘因になります。
凝結が早い
外気温と部材温度が上がると、化学反応が加速します。現場では、バイブレーター(締固め機)や金ごての追い付きが遅れると、締固め不足が起こりやすいです。段取りでペース配分を先に決めておきます。
ブリーディングの偏り
ブリーディング(水が上がる現象)は風や傾斜で偏ります。早仕舞いすると、表面の水とセメントが分離して、豆板やすり傷が増えます。表面仕上げの開始時刻を、観察で判断する前提にします。
打重ね時間の短縮
運搬や待機がのびると、先打ちと後打ちの時間差が広がります。高温ほど許容は短くなり、目安は常温時より厳しめに見ます。配車とポンプのサイクルを、線でつなげて管理します。
品質を守る具体策(計画とリソース)
打設計画を前倒しで固定
- 打設時間は早朝帯や夕方にずらす。日射と風のピークを避けます。
- 打設ブロックを小さく分割。コールドジョイントのリスクを下げます。
- 要員に余力を持たせる。締固め、均し、押さえに増員を回します。
配合と受入検査を強化
- 単位水量とスランプ(軟らかさの指標)は事前協議。遅延剤やAE剤の使用可否も確認。
- 到着時のコンクリート温度を記録。規定値超過は受入れを再考します。
- 現場加水はしない。必要なら設計段階で配合を調整します。
機材とバックアップ
- ポンプ車は能力に余裕のある型式。万一にそなえホースと継手を予備準備。
- バイブレーターは台数+予備1台。コードと発電機の点検を前日完了。
- 散水器具、日除けシート、養生マットを先置き。動線を邪魔しない配置にします。
天候判断と代替案
- 風速とWBGT(暑さ指数)を朝夕で確認。閾値を超えたら順延の判断基準を共有。
- 搬入遅延時の順序差し替え案を台本化。待ち時間の最大値を決めておきます。
養生計画を同列で考える
- 散水養生、保水シート、被覆材の組合せを決め、誰がいつ始めるかを明記。
- 初期ひび対策は表面温度の上昇を抑えること。直射回避と風よけをセットにします。
現場での手順(チェックリスト)
- 朝礼で役割と合図を共有。非常停止と避難の動線を確認します。
- 受入検査:温度、スランプ、空気量を測り、記録。基準外は即連絡。
- 打込みは隅から順に。層厚は30〜50cmを守り、バイブレーターは垂直に均一に。
- 打重ねは先行層がまだ塑性(柔らかい)なうちに。表面は軽く粗し、続けます。
- 表面仕上げはブリーディング水が引いてから。早仕上げは避けます。
- エッジと貫通部は増員で重点管理。型枠の漏れや脈動をこまめに点検。
- 養生は終業前に開始。保水と遮熱を同時に行い、翌朝も続けます。
- 片付けと清掃を確実に。機材の不具合はその場で整備記録に残します。
- 翌日に打設範囲を巡回。ひび、たわみ、色むらを早期に拾い、対策します。
具体例と数値イメージ
たとえば床スラブ200m²、厚さ150mmで30m³を想定します。ポンプの実打ち能力を25m³/時とし、実働は休憩込みで1.5時間。締固めと均しは2班体制、仕上げは後追いで1班追加。この構成だと、先行層から後行層までの打重ねはおおむね60分内に収まります。
高温時はスランプ(軟らかさ)を少し下げるより、遅延剤でワーカビリティ(作業性)を保つ組み方が有効な場面もあります。現場加水無しで、受入温度は35℃を超えない運用を目標にします。表面温度が40℃を超えそうなら、散水と日除けで5℃程度の低減をねらいます。
仕上げ開始の判断は、靴跡が3〜5mm沈むくらいが一つの目安です。早すぎるとすり傷、遅すぎると押さえムラが出ます。観察係を置いて、区画ごとにタイミングを指示すると安定します。
安全と注意点(やってはいけない)
- 現場加水はしない。品質と耐久に直結します。
- 高所でのホース振り回しは厳禁。手元と合図者を必ず配置します。
- 型枠の締付け不足での漏れは即中止。増し締め後に再開します。
- 熱中症対策は休憩・水分・塩分を定時で確保。異変時は打設を止めます。
- 急な天候悪化は無理をしない。範囲を切って、養生を優先します。
まとめと次アクション
高温期の不具合は、段取りでかなり防げます。時間帯とブロック割、要員と機材の余力、配合と受入、そして養生。この順で組むと、品質も安全も安定します。現場ごとに今日の条件を書き出し、チェックリスト化しておくと再現性が上がります。
- 原因を把握し、先手で具体策を決める
- 手順は合図と役割で回す。安全は止める勇気
- 観察で仕上げ時期を決め、養生を前倒し
次は自現場の打設計画書に、気温別の対応表と役割分担を追記してみてください。明日の段取りが、きっと楽になります。
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