コンクリート打設の雨天対応は、品質と工程の天びんです。無理せず止める判断と、やると決めた時の備えが要になります。この記事では、雨の影響と具体策、当日の手順までをやさしく整理します。明日の現場で迷わず動けるようにしましょう。
雨が与える影響(原因と基本)
雨は表面水を増やし、ブリーディング(上水)やにごり水のまじりを招きます。表面気泡やラテンス(薄皮)の発生、打ち継ぎ(打設のつなぎ)の弱さにもつながります。さらに、配合水比が実質上がり、圧縮強度の低下リスクも出ます。だから、入れない雨は入れない。この一点をまず徹底します。
一方で、気温が高い日は雨が乾燥をやわらげ、ひび(初期乾燥)を減らす面もあります。雨量、風、気温の三つをセットで見ましょう。仕様書とミルシート(材料証明)の条件が優先です。
具体策の全体像(判断と準備)
判断は三段階で考えます。前日判断、当日朝判断、打設中の継続判断です。どれも工程だけでなく、品質と安全を同じ重さで見ます。迷ったら安全側に倒します。
- 天気予報は時間降水量と風を重視(1時間ごとの推移)
- 予備日を計画に入れる(施工計画書に明記)
- 仮設の用意:テント(簡易屋根)、ブルーシート(防水シート)、排水路
- 配合とスランプ(軟らかさの指標)の再確認。遅延剤(硬化を遅らせる薬)使用は事前承認
- リスクアセスメントを実施し、止める条件を合意
当日の手順チェックリスト(前日→当日→打設後)
前日まで
- 降雨レーダーで帯状の雨雲の動きとピークを確認。
- 打設可否の基準を共有。例えば「本降りの時間帯は中止」「風速が強いなら養生強化」など。
- 仮設材の数量を確保。テントは風対策の控えロープを必ず用意。
- 搬入時間を調整。ピーク雨量を避ける時間帯に寄せる。
当日朝
- 路面と型枠の濡れ具合を目視。水たまりは排水してから作業に入る。
- スランプと温度を試験で確認。外気温が低い日は遅延、暑い日は急結に注意。
- 打設中止の合図と連絡網を再確認。全員で合図を合わせる。
打設中
- 上面への降雨は直接当てない。テントやシートで覆い、縁からの落水も防ぐ。
- 締固め(バイブレーター)は過不足なく。過振動はレイタンス増の原因。
- にごり水がたまったらすぐ排水。表面水をモルタルに混ぜ込まない。
- 打ち継ぎ面は雨が入る前に処理。時間をあける場合は面を洗い出して再開。
打設後(養生)
- 表面をシートで保護。水たまりを作らないよう、軽く傾斜をつける。
- 風が強い日は固定を増やす。飛散は重大事故になる。ここは妥協しない。
- 翌朝に表面の状態を点検。ラテンスは除去してから仕上げや防水へ進む。
ケーススタディ(例で学ぶ)
小雨(0〜1mm/h)
小雨は覆いと排水があれば、条件次第で実施できます。ポンプ先端を覆い、落雨を直接当てないこと。仕上げは雨の切れ目に合わせ、表面水が引いたタイミングで行います。スランプは設計どおり、増し水はしません。
本降り(2〜5mm/h以上)
本降りは原則中止が安全です。やむを得ず実施するなら、全面テントと側面幕で風雨を切ります。排水路を先に作り、上流からの流入も止めます。それでも水が入るなら、品質を守れません。ここは思いきって延期します。
低温・高温と雨の組み合わせ
低温+雨は硬化が遅れます。遅延剤の追加は安易にせず、配合設計者と協議し、書面で承認を取ります。高温+にわか雨は急乾→雨→急乾のサイクルに注意。養生を厚めにし、直風を避けます。
注意点(品質・安全・コストの勘所)
品質
- 増し水はしない。ワーカビリティ低下は打込み段取りで解決。
- 表面のラテンスは確実に除去。仕上げ前に試し削りで確認。
- 養生期間は仕様書どおりに確保。寒い日は延長を検討。
段取り
- ポンプ位置は高低差と風向で決める。覆いのかけやすさを優先。
- 仕上げ班は余裕を持った人数に。雨待ちに備え、交代で休む。
- 打設順序は水がたまりにくい区画から。勾配で逃がす。
安全
- 濡れた足場はすべりやすい。通路にノンスリップ材を敷く。
- シートのはらみは落水事故のもと。中間支持と排水穴で対策。
- 雷注意報が出たら、打設を止め、退避します。ここは言い切ります。
まとめ(次に生かす)
雨の打設は、入れない雨を入れない工夫と、中止の勇気が柱です。天気と現場の条件を数字で確認し、判断を段階化しましょう。手順はチェックリストで確実に。養生は一手先を読み、固定と排水を強めます。工程は押さえつつ、品質と安全は落とさない。これが若手のうちからの大切な姿勢です。
次アクションとして、現場の施工計画書に「雨天時の手順」と「中止基準」を追記し、明朝のKY(危険予知)で全員に共有しましょう。明日の迷いが一つ減ります。
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