コンクリート打設チェックリストがあると、朝の不安がすっと減ります。品質と安全を同時に守れますし、だれが見ても同じ段取りにそろえられます。今日は、現場で迷いがちなポイントをわかりやすく並べます。むずかしい場面も、手順を踏めば大きく整います。
ねらいと前提:チェックリストでぶれを減らす
ねらいは三つです。品質をそろえること、安全を守ること、時間を読み切ることです。この三つが揃うと、手戻りが減り、残業も小さくなります。前提として、配合と図面、打設計画は最新を必ず共有します。古い資料は現場から外します。
よくある不具合の原因を知る
不具合は、原因が重なって起きます。代表例は、充てん不足と締固め不足、コールドジョイント(打継ぎ不良)、ブリーディング(水上がり)の放置です。安全面では、足場の不備と連絡不足が事故を呼びます。段取り面では、配車の遅れや人員不足が品質にも跳ねます。
原因を三つに分類する
- 品質の源:材料(配合・温度)、打込み速度、バイブレーター(締固め機)の使い方
- 安全の源:通路・手すり・養生、合図の系統、重機まわりの立入
- 段取りの源:配車間隔、人数と役割、道具・電源の事前確認
具体策:事前準備で7割決まる
前日までに、打設計画を一枚にまとめます。位置図、数量、配車台数、ポンプ車の立ち位置、避難経路まで載せます。関係者で読み合わせをし、疑問はその場で解きます。口約束にせず、図でそろえます。
受入検査の基準を共有する
- スランプ(やわらかさの指標):設計±2.5cmを目安。外れる時はすぐ相談します。
- 空気量(含まれる空気の割合):4.5±1.5%が一般的。寒冷地や仕様に合わせます。
- コンクリート温度:5〜35℃を目安。高温時は打込み速度と養生を強めます。
- 塩化物量:仕様内か確認。記録を写真と数値で残します。
人員と役割分担
- ホース先端:流し手1、ならし手1
- バイブレーター:2台運用で持ち替え要員1
- 受入・記録:1(検査票・温度・写真)
- 誘導・安全:1(重機・第三者保護)
- 仕上げ:スラブならトンボ(仕上げ道具)と金ゴテ班
当日の手順:タイムラインで合わせる
- 朝礼:危険予知を3点に絞る。落下・はさまれ・転倒を具体に共有します。
- 受入検査:スランプ、空気量、温度を測り、写真と時刻を残します。外れたら無理をしません。
- 打込み開始:周辺の不要な人を下げ、合図を一つに統一します。声と手旗を重ねると伝わります。
- 締固め:層厚30〜50cmで垂直に挿し、既打ちへ10cmほど食い込ませます。抜きはゆっくり行います。
- 仕上げ・養生:レイタンス(薄い膜)の除去、散水やシートで乾燥を防ぎます。初期ひび割れを避けます。
打込みと締固めのコツ
- 打込み速度は、締固めが追いつく範囲に抑えます。追いつかない時は止めます。
- ホース先で練り混ぜをしない。分離の元です。ならしで面を整えます。
- バイブレーターの挿入ピッチは30〜40cm。型枠や鉄筋に軽く当てる程度で。
- 打継ぎは水平面で粗面化し、レイタンスを除去してから再開します。
実例:スラブt=150mm・ポンプ車の段取り
面積200㎡、厚さ150mm、設計スランプ18cm、普通ポルトランドを想定します。総量は約30m³です。配車は6m³車を5台、間隔20〜25分で手配します。ポンプは5インチ級、配管は曲がり最小にして、先端はゴムホースでコントロールします。
- 人員:流し手1、ならし1、バイブ2、受入1、誘導1、仕上げ2の計8名
- 目安速度:8〜12m³/時。高温時は8m³/時に下げて締固め重視
- チェック:1スパンごとにレベル(高さ基準)とかぶり(鉄筋上の厚さ)を確認
- 仕上げ:ブリーディング水が収まってから金ゴテ。早すぎる押さえは禁物です。
注意点とリスク管理
- 天候:雨天はブルーシートで覆い、溜まり水は排水。強風は乾燥ひび割れに注意。
- 高温・低温:高温は散水・日陰・遅延剤。低温は保温と凍害対策。温度計を現場に常備します。
- 残コン:洗い水・残材の処理場所を事前に決めます。仮置きは環境と通路に配慮します。
- 近隣:騒音・振動・車両の出入りを事前通知。誘導員を要所に立てます。
- 安全:足場の床抜け、開口の塞ぎ、手すりの連続性。ここは「必ず」事前確認します。
まとめ:今日から使えるチェックリスト
- 受入検査は数値と写真で記録。外れは無理をしない。
- 打込み速度は締固めに合わせる。迷ったら止める。
- 役割と合図は一つに。第三者保護を優先する。
- 天候と温度で養生を変える。初期ひび割れを避ける。
- 図で共有し、現場に貼る。口約束を減らす。
次のアクションとして、あなたの現場用に数値と配置を書き込み、朝礼で3分共有してみてください。小さなそろえが、打設全体の安定につながります。
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