コンクリート打設 段取りの全体像と手順|品質と安全を両立する実践ガイド

コンクリート打設 段取りが決まると、仕上がりと安全が安定します。無理のない流れを作れば、手直しと待ち時間が減り、残業も減ります。今日は現場の先輩として、迷いがちな要点をやさしく整理します。

なぜ段取りが崩れるのか(主な原因)

よくあるのは「計画の粒度が粗い」ことです。開始時刻だけ決めて、配車間隔や人の配置まで落としていないと、場内が詰まります。

  • 配車遅延と渋滞読み違い:道路事情と待機場所の想定不足です。
  • 品質条件の共有漏れ:スランプ(やわらかさの指標)や空気量を全員が知らない。
  • 導線の交差:人とポンプ車が交差し、挟まれやつまづきの危険が増えます。
  • 合図不統一:手元とポンプの合図が食い違い、打込みが粗くなります。
  • 天候・温度の影響軽視:高温や風でブリーディング(水の上がり)やひびが出やすくなります。

具体策(見える化と基準づくり)

対策はシンプルです。計画を見える化し、基準を先に決めて、役割を固定します。ここは言い切ります。やりましょう。

  • タイムライン表を作る:配車間隔、1台当たりの打込み時間、休憩、写真撮影の時刻を1枚に。
  • レイアウト図:ポンプ設置、ホッパー、シュート、通路、退避帯を色分け。立入禁止テープ位置も記載。
  • 品質基準のカード化:スランプ、空気量、温度、試料採取頻度を書いた小カードを全員へ。
  • 役割分担:打設班、締固め(バイブレーター:締固め機械)、均し、仕上げ、写真、受入検査で班長を置く。
  • 連絡線:無線チャンネルを固定。合図用語を3語に限定(止め・弱め・強め)。
  • 安全先行:KYとTBM(朝礼での作業前ミーティング)で挟まれ・墜落・感電の想定と回避行動を具体に。

手順(前日→当日→打設中→打設後)

前日まで:計画と試し

  1. 打設計画の確認:数量、区画、打ち継ぎ位置、型枠・支保工の受け能力。
  2. 生コン手配:呼び強度、スランプ、AE・減水剤の指定、配車台数と間隔。試験練りが必要なら事前実施。
  3. 機械点検:ポンプ車、アジテータ(かくはん装置)、バイブレーターの予備と電源。
  4. レイアウト仮設:養生水、電源ケーブルの養生、落下防止の手すり、照明の影になりやすい所の補助灯。
  5. 資料準備:受入検査票、写真リスト、コーン、温度計、打設日誌。

当日開始前:共有と安全

  1. 朝礼:タイムラインと危険ポイントの読み合わせ。避難経路と非常停止の合図を全員で確認。
  2. 受入の段取り:試料採取の担当と場所、スランプ・空気量の測定器具を手元に。
  3. 気象チェック:気温・風・直射。高温時は散水、低温時は保温シートと早強の検討。

打設中:リズムを保つ

  • 受入検査:車ごとにスランプ、空気量、温度を記録。外れは現着で調整せず、原則は返却を検討。
  • 打込み:層厚は30〜40cmを目安。バイブレーターは垂直に、前層に10cmほど差し込み、過振動は避けます。
  • 圧送(ポンプで送ること)の速度:仕上げと均しの余裕を見て一定に。詰まりは無理をせず停止と清掃。
  • 打ち継ぎ:計画位置で面を粗し、レイタンス(脆い表層)を除去。遅延時はコールドジョイント(打ち継ぎ不良)防止を最優先。
  • 写真と記録:ロット番号、時刻、測定値、天気を都度。後の品質説明が楽になります。

打設後:仕上げと養生

  • 均し・仕上げ:コテ押えはブリーディング水が引いてから。早すぎると剥離やひびの原因です。
  • 養生(保湿・保温):散水やシートで乾燥と急冷を防ぎます。風がある日は特に手厚く。
  • 清掃:ホッパー、配管、場内の洗い出しは排水処理を守って実施。残コンの仮置き場所を事前に決めます。

中規模例:床スラブ150m³の段取り

床版で150m³、ポンプ1台、ミキサー車は7m³車で想定します。配車は12〜15分間隔、全体4.5〜5時間の計画です。

  • 人員目安:打設4、締固め3、均し2、仕上げ4、受入・写真2、誘導2、予備2。合計19名程度。
  • タイムライン:0:00受入開始→0:10打込み→1:00増員でペースアップ→3:30終盤ペースダウン→4:30打設完了→5:00仕上げ山場。
  • 品質管理:最初の2台でスランプ、空気量、温度を確認。差があれば即座に生コン工場へ連絡し、配合や温度の是正を相談。
  • 高温対策:直射面は散水、日陰用のシート、作業交代を短く。冷水を近くに。
  • 仕上げ連携:レーザーレベルで基準を出し、目地と逃げ勾配を先に確認。左官が追い付く速度に圧送を合わせます。

失敗しやすい点と対処

  • コールドジョイント:配車が途切れそうなら、面を小さく区切り、先行面の再振動を検討。焦って広げない。
  • 過振動:バイブレーターの入れすぎは分離の原因。1点5〜15秒が目安。重なりを意識します。
  • 雨天時:表面の雨打たれは早期のひびや粉化に直結。ブルーシートで屋根を作り、雨筋が落ちないように。
  • 寒冷時:凍結は強度欠損に直結。保温シートと早強、打設時間の前倒しを組み合わせます。
  • 安全:ポンプのブーム下は立入禁止。バック時は誘導二人、感電リスクがある送電線下は作業しません。

まとめ(今日からできること)

  • タイムライン、レイアウト、品質カードの3点セットを作る。
  • 役割を固定し、合図を3語に統一。無線チャンネルを決める。
  • 受入検査と記録を習慣化。迷ったら止めて、全員で確認。
  • 天候と温度を毎時チェック。養生は惜しまない。

次の打設までに、過去の写真と日誌を10分で見返してみませんか。自分の現場での「詰まり点」が見えて、段取りが一段と良くなります。

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