コンクリート打設前チェックをきちんと回せると、やり直しやクレームを避けやすくなります。段取りがそろえば、安全と品質も上がります。ここでは原因から具体策、手順、実例、注意点までを一気にまとめます。
不具合はなぜ起きる?主な原因
多いのは、受入検査の抜けと、打設計画の甘さです。スランプ(やわらかさの指標)や温度の確認が曖昧だと、締固め不足やひびにつながります。配筋かぶり(鉄筋から表面までの厚み)や型枠のすき間の見落としも、仕上がりを弱くします。
天候の読み違いも起きやすいです。強い日差しや風で急乾燥、雨で表面が荒れることがあります。連絡不足でポンプ車や人員のタイミングが合わず、打継ぎ(途中の継ぎ目)が長く空くのも要注意です。
原因を断つための具体策
- 打設計画の見直し:配車間隔、打重ね可能時間、バイブレーター(締固め機)の台数を数字で決めます。
- 受入検査の標準化:スランプ、空気量、温度、塩化物量の記録表を用意し、誰が書くかを決めます。
- 配筋・型枠の事前検査:かぶりスペーサー、アンカーボルト位置、型枠の締付トルクをチェックします。
- バックアップ:ポンプ故障時の代替、雨天シート、散水・保水資材の予備を必ず準備します。
- 情報共有:開始・中間・終了の目安時刻を全員で合わせ、合図と無線の運用を決めます。
当日のチェック手順(現場用メモ)
1. 受入検査(トラック到着ごと)
- 納入書と配合報告書を照合します。呼び強度、スランプ、空気量、単位水量を確認します。
- 試験を実施します。スランプ、空気量、コンクリート温度は必ず測ります。結果はその場で記録します。
- 温度が高い・低い時は監督判断で受入を見直します。無理はしません。疑わしい時は返却します。
2. 配筋・型枠の最終確認
- かぶり厚さを実測します。スペーサーの数と位置を見て、足りなければ追加します。
- 型枠の継ぎ目、セパ穴、天端レベルを見ます。コーキング(すき間止め)や締め直しは今のうちに行います。
- 打込み経路とホースの動線を確保します。つまずきやすい物は片付けます。
3. 機械・人の段取り
- ポンプ圧送の圧試(圧送確認)を行います。吐出と戻り、リークの有無を見ます。
- バイブレーターは予備を含めて起動確認します。延長コードと発電機も点検します。
- 役割分担を再確認します。打込み、締固め、均し、誘導、安全監視を分けて声を出します。
4. 打設・締固め
- 打込みは層厚30〜50mm単位で進めます。深刺し過ぎと入れ過ぎは避けます。
- バイブレーターは1点5〜15秒が目安です。気泡が抜けて表面が光ったら移動します。
- 打継ぎ部は先にレイタンス(表面の薄い膜)除去を計画します。時間を空けないよう連携します。
5. 仕上げ・養生
- 初期の表面仕上げは踏み込みを避け、タイミングを見ます。早すぎる押さえは粉吹きの原因です。
- 風・日射が強い日は散水やシートで保水します。雨天はシートで養生面を守ります。
- 打設後は立入制限を明確にします。所定の強度が出るまで無荷重を守ります。
現場の小さな実例と対策
夏の午後にスランプが想定より低く、均しに苦労した例があります。受入時に温度が高かったのに、そのまま進めたのが原因でした。次回は午前打設に切替え、日陰の待機と散水で温度上昇を抑え、問題は解消しました。
別の現場では、ポンプ停止で打継ぎ間隔が延びました。予備のバイブレーターと人員を回して、継ぎ目周辺を重点締固めしました。以後は代替ポンプの待機と、区画ごとの完了時刻を事前に決めて対応しました。
安全と品質の注意点
- ホースの振り回し禁止。合図者を立て、人の頭上を通さないことを徹底します。
- 足場や端部は手すりを先行します。打込み中の転落は重大事故につながります。
- 暑中・寒中は材料温度と養生を優先します。温度が極端なら中止や時間変更をためらいません。
- コールドジョイント(打継ぎの不良)を避けるため、配車間隔と人員の密度を調整します。
まとめと次アクション
- 受入検査・配筋型枠・機械・打設・養生の5つを外さない。
- 数字で決め、記録で残し、合図で動く。迷ったら止めて確認する。
- 天候と温度はその場で判断を変える。無理はしない。
次の打設までに、自分の現場用チェック表を作りましょう。今日の内容をベースに、工区や季節に合わせて一枚にまとめると、チーム全員で使えてミスが減ります。
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