コンクリート数量拾いを安定させる近道は、見落としの型を知り、決まった手順で拾うことです。これだけでミスが減り、見積の精度と現場の段取りがぐっと良くなります。今日は、先輩が横でメモを添える気持ちで、原因から手順まで通しでお伝えします。
なぜ見落としが起きるのか(原因の棚卸し)
まずは原因を分けて見ると、手当てがしやすくなります。ここでは「図面情報」「形状の複雑さ」「人の作業」の三つに分けます。言い切りますが、原因の見える化は最優先です。
図面の前提ズレ(意匠と構造の食い違い)
意匠図と構造図の寸法が微妙に違うことがあります。例えばスラブ(床の板)の厚さや段差、開口の位置です。最新版の確認漏れや、雲マーク(修正記号)の見逃しも定番です。版ずれは必ず直します。
開口・段差・勾配の拾い残し
小さな開口や設備スリーブ(管を通す穴)は、数が多くて漏れがちです。段差や勾配も要注意。スラブ厚150→180の切替え、小梁(細い梁)上の盛り上がりなど、面積×厚さの掛け直しを忘れます。ここはチェック欄を作って縦断で見ます。
端部・小口・立上りの数え方ブレ
立上り(床から立つ部分)や端部の処理は、型枠(コンクリの枠)と数量の関係が複雑です。壁厚変更や入隅・出隅で体積が微妙に変わります。端部の小口は、通り芯(基準線)で区切って数えるとブレが減ります。
具体策:チェックリストと視点の分割
対策はシンプルです。最新版図の管理、拾う順番の固定化、そして確認のダブルチェック。この三つでほとんどのミスは減ります。
図面束のそろえ方(最新版・差分管理)
- 配布日が最新の意匠・構造・設備の三点セットをそろえる
- 雲マークと変更履歴を見て、前版からの差分を付箋でマーキング
- 改定箇所は「再拾い」フラグを立て、旧数値を残して比較
PDFならファイル名に日付、紙なら表紙に版日を書きます。迷いは事故のもとです。
レイヤー別に拾う(スラブ・梁・壁・基礎)
- スラブ(床版):面積→厚さ→開口減算→段差加算の順で固定
- 梁:一本ごとに断面×長さ。ハンチ(端の厚み増し)は別計上
- 壁・柱:心去り寸法(仕上げを除く寸法)で体積を出す
- 基礎:フーチング(基礎の足)とベース・立上りを分けて集計
この切り分けだけで、拾い漏れのほとんどが表に出ます。BIM(3Dの設計モデル)があれば照合も早いです。
手順:5ステップで再現性を上げる
- 準備:図面の版確認、縮尺チェック、凡例の読み込み。スケールとPDF測長を合わせます。
- 通り芯ごとに範囲を区切る:A通り〜B通りなど、小区画に分けて拾います。
- スラブから着手:各区画で面積→厚さ→開口→段差の順。作業メモに根拠を残します。
- 梁→壁→柱→基礎の順:構造要素は上から下へ。ハンチや欠き込みは別行で記録。
- 検算:別日か別担当で逆算。体積合計の勘定合わせ、前回版との差分チェック。
安全のため、現場実測をする場合は、足場や開口部の転落防止を最優先にしてください。単独作業は避け、保護具を正しく使います。
ツール選び(PDF・表計算・BIM)
- PDF測長:縮尺固定とスナップ機能で誤差を抑える
- 表計算:拾い表(数量の記録表)に計算式を入れて再利用
- BIM/3D:モデル数量と手拾いの差を見て異常検知に使う
ツールは一度決めたらチームで統一します。形式(拡張子)もそろえると、引き継ぎが楽です。
具体例:RCマンション1フロアの拾い方
例として、スラブ厚150mm、床面積600㎡、開口合計8㎡、段差合計15㎡×30mmとします。スラブ体積は、600×0.15−8×0.15+15×0.03=90.0−1.2+0.45=89.25m³です。梁は断面0.3×0.6が20本×4mで、0.18×80=14.4m³。壁は厚200mm、延長120m×高さ2.8mで、0.2×120×2.8=67.2m³。合計は170.85m³となります。
ここでのポイントは、開口は厚さで減算、段差は差厚で加算という考え方です。梁のハンチや壁の欠き込みは別行で管理し、後の修正に強くします。数字は例なので、必ず自現場の図面で検算してください。
注意点:ここは強く意識する
- 版の混在を禁じます。版違いの図は作業台に置かない。
- 厚さの切替え線は通り芯で止め、区画ごとに面積を分ける。
- 設備スリーブは設備図の一覧表で総量照合を必ず行う。
- ロス率(施工ロス)は見積と現場で別管理。計上は混ぜない。
- 現場実測は二人一組で。墜落・切創のリスク対策を徹底する。
まとめと次アクション
コンクリート数量拾いは、原因を三つに分け、手順を固定し、検算で締める。たったこれだけで、ブレは安定します。今日の手順をチームの標準に落とし込み、拾い表のテンプレを整えてください。次回からは、開口と段差のチェック欄を最初に作るところから始めましょう。
- 原因は「図面ズレ・形状・人の作業」に分ける
- チェックリストと順番固定で再現性を上げる
- 検算は別日・別担当で実施する
- 安全を最優先に、現場実測は二人一組で行う
次アクションとして、あなたの現場版チェックリストを作り、次の拾いからチームで回し始めましょう。続けるほど、精度と速度は伸びます。
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