型枠工事 気を付けるポイントを押さえると、事故とやり直しがぐっと減ります。
先に答えを書くと、原因を見える化し、チェックリストで習慣化することです。
今日から使える手順と数値の目安を、やさしくまとめます。
なぜミスや事故が起きるのか(原因)
多くは段取りの抜けと、確認タイミングのズレです。
通り芯(建物の基準線)の再確認を飛ばし、墨出し(位置を床に写す作業)が曖昧なまま進むのが根っこです。
ほかに、支保工(支える仮設)のピッチ甘さ、セパレーター(型枠間隔を保つ金具)の計画不足も原因です。
打設中はバイブレーター(締め固め機)過多や偏りで、はらみ(膨らみ)やコールドジョイント(打継ぎ不良)が出ます。
すぐできる具体策(チェックと見える化)
- 通り芯・墨出しの二重サイン。書いた人と確認者の印を分ける。
- セパレーター割付図を壁ごとに貼る。現場マグネットで更新。
- 支保工ピッチの基準札を通路に吊る。1.0mや0.9mなど現場値を明記。
- 打設前にチェックリスト。開口・インサート(あとで使う金物)・胴縁(補強材)を声出し点検。
- スランプ(コンクリートのやわらかさ)と温度を受入時に唱和。
道具名は短いメモで補足します。
新人でも同じ基準で見られるように、写真付きサンプルを1枚作ると効果が出ます。
点検と打設までの手順(標準フロー)
1. 墨出し・通り芯確認
- 通り芯を基準に、壁・柱の芯墨を出す。レーザーは温度安定後に使用。
- 見え墨と隠れ墨を色分け。ずれは3mm以内を目安に調整。
- 第三者確認を記録。写真にスケールを入れる。
2. 型枠組立と支保工
- パネル(合板ユニット)割付に合わせ、胴縁の間隔を300〜450mmで均一化。
- 支保工は垂直と対角のくさびを効かせる。倒れ止めは2スパンごと。
- 足場板を主要通路に敷き、安全帯の掛け位置を先行設置。
3. 金物・開口・セパレーター
- 開口の寸法とレベルを通りで確認。型枠面からの逃げを10mm確保。
- セパレーターは450〜600mmピッチを基準。隅角は詰め気味に。
- インサートは種類ごとに色テープ。見落としを防ぐ。
4. コンクリート受入(試験練り・スランプ)
- 出荷票の呼び強度と配合を指差し確認。単位水量をチェック。
- スランプは設計値±2.5cmを目安。温度は30℃超で打設計画を見直す。
- レイタンス(上澄みの弱い層)対策として過振動を避ける。
5. 打設・締固め・仕上げ
- 打設区画をローテーション化。1層高さは50cm程度で段切り。
- バイブレーターは1点5〜15秒。重ね幅は1/2以上、型枠に当てない。
- 打継ぎ面は先行部が硬化前に追いかける。連絡係を置く。
6. 脱型・養生
- 脱型は試験体強度と気温で判断。角の欠け防止にコーナー当てを用意。
- レイタンス除去後に水養生。直射日光と風を遮る。
- 是正跡は早期申告。色むらは写真で共有し合意の上で補修。
具体例と数値の目安(ケースで理解)
壁厚200mm、H=3,000mmの区画で、セパレーターは@450mmで割ると、段3本×縦7列=21本/面が目安です。
支保工はスラブ厚150mmで@900mm、市中パイプサポートなら許容荷重を必ずカタログで確認します。
開口まわりは、角から150mm以内にセパを追加すると、はらみを大きく減らせます。
スランプ18cm指定なら、17.5〜20.5cmを許容とし、外気32℃では打重ね時間を10〜15分に短縮します。
よくある注意点・NG集
- 見える化の不足:図が現場にない。貼る場所と更新担当を決めます。
- 過振動:気泡ゼロ狙いでやりすぎ。レイタンス増と骨材分離の原因です。
- 打設動線の渋滞:ホース待ちで時間超過。階ごとに逃げ動線を設定。
- 脱型の早出し:角欠けや表面剥離。試験体強度で判断します。
- インサート抜け:色分けと声出しでゼロに。最終は指差し復唱。
まとめ(明日からの一手)
原因は「基準の曖昧さ」と「確認の遅れ」です。
通り芯と墨を二重サイン、セパと支保工は割付の見える化、打設は数値で会話。
この3点をチェックリストに落とし、毎回同じ順で回せば、事故とやり直しは確実に減らせます。
まずは次の打設で、受入唱和と1層高さの統一から始めましょう。
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