型枠工事の数量拾いは、工程とコストの土台です。ここが早くて正確だと、見積と発注がぶれにくくなります。この記事では、型枠数量拾いの誤差の原因を洗い出し、具体策と手順、例、注意点までを一気にまとめます。明日からの拾い出し(数量計算)を、迷わず回せるように整えます。
なぜ「型枠数量拾い」で誤差が出るのか
誤差の多くは、図面の前提ずれと定義の曖昧さです。躯体図(コンクリート形状の図)と施工図(実際の納まり図)の差、開口の拾い漏れ、端部処理の考え方の違いが重なります。さらに、単位や見付面(実際に張る面)を混同し、型枠の重ねや端太角(端部の補強材)の扱いが抜けると、数%のずれになります。
時間の不足も影響します。図面をそろえずに拾い始めると、戻り作業が増えてミスが固定されます。現場寸法の更新が拾い表に反映されないことも多いです。最後に、ロス率(切り回しの余り)と歩掛り(作業量の目安)の前提がチーム内で合っていないと、見積精度が落ちます。
具体策:準備とルールを先に決める
図面と情報のそろえ方
最初に、最新版の躯体図、施工図、配筋図、開口一覧、仕上表をひと束にします。雲マーク(変更符号)を確認し、差分を付せんで指示します。現場で決まった納まり(端部割付や見切)と、変更予定の開口は、拾い前にメモで追記します。
単位・面積・数量の定義ルール
見付面積は、型枠に接するコンクリートの外周を基準にします。梁は三面、スラブは下面、柱と壁は四周で考えるなど、部位別ルールを表にしましょう。端部の巻き込み、欠き(逃げ:干渉回避の削り)、目地材の幅は、プロジェクト共通の数値を決めておきます。
ロス率と歩掛りの考え方
ベニヤ(せき板:面材)のロス率は、平面が素直なら3〜5%、小割りが多いと8%前後を目安にします。歩掛りは、外周型枠m²あたりの大工工数を、物件の高さや支保工(支えの架設)条件で補正します。前工事の実績をひとつ基準にすると、議論が早くなります。
手順:現場で使える拾い出しフロー
- 部位を分ける:スラブ、梁、柱、壁、階段、開口補強に区分します。拾い表は部位タブで分けます。
- 基準寸法を決める:通り芯ピッチ、階高、梁成、スラブ厚などを冒頭に記入します。
- スラブ下面から拾う:面が大きく通る所から始め、面積と端部長さを確定します。
- 梁三面を拾う:梁ごとに長さ×(側面2+下面1)で面積を出し、柱との交差部は重複を除外します。
- 柱・壁四周を拾う:階ごとに本数と高さをそろえ、開口や欠きを差し引きます。
- 開口・スリーブ調整:開口一覧に合わせて、周囲の補強と役物(小さな部材)を加算します。
- 端部・目地・役物まとめ:端太角、端木(端部の下地)、目地材を別行で積み上げます。
各ステップの最後に、小計を出し、Excelのチェック欄で「図面参照済」「重複除外済」を〇にします。数式はセル内で見える化し、他者レビュー用に注記を残します。これで、後日の修正も迷いません。
例:スラブ・梁・柱・壁の拾い
例として、スラブ200m²、梁20本(長さ6m、成600mm、幅300mm)、柱10本(400mm角、高さ3m)、壁40m(厚200mm、高さ3m)を想定します。スラブ下面は200m²です。ロス率5%を見込むなら、面材手配は200×1.05=210m²が目安です。
梁は三面で拾います。1本あたりの見付面は、側面(0.6×6×2)+下面(0.3×6)=(7.2+1.8)=9.0m²、20本で180m²です。柱は四周で、周長1.6m×高さ3m=4.8m²/本、10本で48m²。壁は両面で、長さ40m×高さ3m×2=240m²となります。
合計は、スラブ200+梁180+柱48+壁240=668m²。ここから、開口合計面積(例えば10m²)を差し引きます。端部処理や役物を別途5%加算し、最終手配は668−10=658m²、手配は約691m²(+5%)を基準にします。現物の割付で再調整します。
注意点:支保工・開口・端部処理
支保工は、根太間隔(面材の下地ピッチ)と大引(主材)のスパンで手間が大きく変わります。スラブ厚や荷重計画に合わせ、一般ピッチ450mm、局所で300mmなど、図に赤で記録します。安全は最優先です。支持力不足のまま作業はしません。
開口は拾い漏れが出やすいです。100mm未満の小スリーブも、集計欄を分けて合算します。補強枠や根太補強の手間は、見付面とは別に歩掛りで見込みます。端部は割付で端材が増えるので、ロス率の調整を忘れないようにします。
変更管理も大切です。設計変更が出たら、拾い表に変更番号と日付を残し、旧数値は打消し線で残しておきます。これにより、発注部材の差し替えや、協力会社との整合がスムーズになります。迷ったら、チームで短くすり合わせます。
まとめと次アクション
型枠工事の数量拾いは、定義をそろえ、順序で進めるだけで精度が上がります。スラブ→梁→柱・壁→開口→端部の流れで、小計とチェックを挟みます。ロス率と歩掛りは、物件特性で補正し、実績で見直します。安全と変更管理は、いつも表の先頭に置きます。
- 図面をそろえ、定義ルールを先に決める
- スラブから順に拾い、小計で自己検査
- 開口・端部・役物は別行で管理
- ロス率3〜8%を目安に割付で補正
- 支保工の安全条件は数値で指示
次の一歩として、現場用の拾い表テンプレを作り、部位タブとチェック欄を標準化しましょう。チームでレビュー枠を設けると、精度が底上げされます。
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