型枠数量拾いは、工程や予算の根っこを支えます。ここが整うと見積の精度が上がり、現場の迷いが減ります。この記事では、型枠数量拾いの失敗原因と対策、手順と具体例を順に紹介します。やり方が定まると、手戻りがぐっと減ります。
なぜ型枠数量拾いでミスが出るのか(原因)
まず原因から見ていきます。型枠(コンクリートの外型)の数量は、図面と条件の読み違いでぶれやすいです。躯体図や展開図の整合、変更履歴、凡例の差に気づかないことが多いです。
図面の読み違いと整合漏れ
平面、断面、展開で記号が違うことがあります。たとえば壁厚や梁成が階で違うのに、標準階で拾ってしまうことがあります。最新版の図面か、雲マーク(変更指示)を必ず追います。
開口控除とロス率の扱い
開口(窓・扉・スリーブ)は控除の基準がまちまちです。小開口は控除なし、などの社内基準が曖昧だと差が出ます。面材(合板など)のロス率も、面積だけでなく割付次第で変わります。
単位・集計粒度のズレ
m²と枚数、面と辺、面積と回転部材など、集計の単位が混在すると混乱します。業者見積の単価体系と自社の拾いが噛み合わないと、差異説明に時間がかかります。
ミスを減らす具体策(仕組み化)
- 図面の優先順位を決めます。構造一般図→躯体図→詳細図の順で整合を確認します。
- 凡例辞書を作ります。開口控除の閾値、捨て型枠(外周の仮型)の扱い、ロス率の初期値を一枚にまとめます。
- 色分けルールを統一します。壁は青、梁は緑、柱はオレンジ、開口は赤など、視覚で漏れを防ぎます。
- 集計テンプレートを用意します。部位、階、仕上区分、面区分(片面・両面)を列で固定します。
- 見積単価と拾い単位を一致させます。業者の単価式を先に確認し、m²かmか枚数かを合わせます。
- ダブルチェックは必ず行います。別担当が合計値と抜き取りで3点を照合します。
型枠数量拾いの標準手順(段取りから集計まで)
- 最新図の確定:図面リストで日付を照合し、改定履歴を記録します。PDFならファイル名に版を追記します。
- 条件の固定:開口控除基準、ロス率、足場との取り合い、型枠工法(在来・メタル)を決めてメモします。
- 範囲の分割:階ごと、ゾーンごとに拾います。大梁で区切ると漏れが減ります。
- 壁の拾い:周長×高さ×2面が基本です。片面打ちの場合は片面で集計します。開口は控除基準で差し引きます。
- 柱の拾い:外周(四辺の合計)×高さで面積を算出します。角・丸柱は周長計算に注意します。
- 梁の拾い:側面(2面)+底面で計上します。スラブとの取り合いで底面の要否を図で確認します。
- スラブ周り:立上り・見切りの捨て型枠を別行で拾います。段差・開口補強の増しを忘れずに。
- 集計とロス:面割を想定してロス率を上乗せします。標準は3〜8%、割付が細かい部位は高めで見ます。
具体例で理解(壁と梁のサンプル計算)
例1:RC壁。長さ10.0m、高さ3.0m、厚200。窓0.9×1.0が2か所、扉0.9×2.1が1か所。両面型枠。
- 壁面積(両面)=10.0×3.0×2=60.0m²
- 開口面積=窓0.9×1.0×2+扉0.9×2.1×1=3.9m²
- 控除後面積=60.0−3.9=56.1m²
- ロス率5%を上乗せ=56.1×1.05≒58.9m²
例2:梁。スパン6.0m、梁成0.6m、幅0.3m。側面2面+底面を計上。支点納まりで底型要。
- 側面=6.0×0.6×2=7.2m²
- 底面=6.0×0.3=1.8m²
- 合計=9.0m²、ロス率5%で9.45m²
ポイントは、開口の閾値を先に決めることです。たとえば0.2m²未満は控除なし、など。現場の納まり(片面打ちや打継ぎ)で面数が変わるので、図中に面数を赤字で書いておきます。
注意点と安全・品質の視点
- 変更管理は最優先です。図面差し替えがあれば、拾いの版も即更新します。古い版はアーカイブに移し、取り違いを防ぎます。
- 部材ごとの差異に注意します。耐火被覆や断熱付きの面は、面材や手間が変わります。単価区分を分けておきます。
- 跳ね出し・開放端は転倒リスクがあります。施工計画に控え(サポート)を必ず入れます。安全は譲れません。
- 工程との整合を取ります。支保工の存置期間、打継ぎ位置で面数と手間が変わります。工程表に反映します。
- 見積照合は早めに。業者の積算書と単位・ロス率・控除基準を合わせ、差異は根拠をメモ化します。
まとめ(明日からの実践)
型枠数量拾いは、基準を固めて、見える化して、二重で確かめる。この3点で安定します。原因は図面整合、控除・ロス率、単位のズレに集約されます。手順どおりに拾い、例の形で計算根拠を残せば、説明も早くなります。
次のアクションとして、社内の凡例辞書と集計テンプレートを1枚ずつ作ってください。現場固有の開口閾値やロス率を明記し、全員で使うだけでも、手戻りは確実に減ります。安全と品質の要点もチェック欄に入れておきましょう。
- 要点まとめ:最新版図で整合→控除・ロス率を固定→部位別に手順で拾う→根拠を残す→ダブルチェックを徹底。
- 明日やること:テンプレ作成、色分けルールの共有、見積単位の事前すり合わせ。

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