配筋検査 チェックリストを先に整えると、抜け漏れが減り、是正も早く回ります。短い時間でも質を落とさず、監理の指摘も軽くなります。この記事では、原因から具体策、手順と事例までをやさしく一気に整理します。
配筋検査の不具合の原因
不具合の多くは「図面読みのズレ」と「現場での共通言語不足」から生まれます。配筋図(鉄筋の配置図)と標準詳細の参照が抜けると、かぶり厚(鉄筋から外面までの距離)やピッチ(間隔)の差が見落とされます。さらに、写真や是正のルールが人ごとに違うと、再発が続きます。
もう一つは「時間の偏り」です。スラブや梁など面積が広い部位は、後半に一気に見ると精度が落ちます。朝イチで重点部を決めないと、開口補強(穴周りの補強)や定着長さ(鉄筋の効きに必要な長さ)が抜けやすくなります。
具体策:現場で効くチェックリスト作り
図面と基準のひも付け
項目名だけの表では弱いです。各項目に「根拠」を1行付けます。例)かぶり厚:外周=40mm、スラブ=30mm〈配筋図 A-12、標準詳細 S-03〉。数値は必ず図面優先、一般値は参考とします。この一手で現場判断がぶれません。
写真・是正のルール
写真は「全景→中景→寄り」の3枚セットを基本にします。全景は通り芯(位置の基準)入り、中景はスケール付き、寄りは刻印やピッチが読める角度で撮ります。是正は「指摘→対処→再確認→再撮影」を1チケットでつなぐ運用にします。
手順:チェックから是正まで
- 準備:前日までに配筋図と標準詳細へ付箋。重点は柱脚、梁端、スラブの開口、耐震壁の端部に設定。
- 朝会:職長へ検査順と安全ポイントを共有。足場の先行点検と墜落防止具(フルハーネス)の確認は必ず言い切りで。
- 墨(位置の印)確認:通り芯とレベルを最初に合わせ、以降のズレを防ぎます。
- かぶり厚:スペーサー(保持材)種類とピッチを面で確認。角部は二重確認。被覆ブロックの割付も写真化。
- 主筋・あばら筋:径、ピッチ、継手位置、定着長さを図面と突合。スターラップ(せん断補強)はフック向きも見る。
- 開口補強:スリーブ周りの補強筋、トラス筋の有無、切欠きの処置を近接で撮影。
- 継手:ガス圧接・機械式の刻印、抜け止め、重ね長さ。梁端部の継手禁止帯も忘れず。
- 写真整理:その場でファイル名を「部位_通り_項目」で統一。クラウドへ即時アップ。
- 是正:期限と担当を現場ボードに掲示。完了後は同じ角度で再撮影し、チケットをクローズ。
例:躯体別のチェック要点
柱:主筋径と本数、帯筋(せん断補強)のピッチ、定着長さ、柱脚のかぶり厚。柱頭・柱脚のスペーサー抜けに注意です。柱隅のフック向きや継手位置の分散も見ます。
梁:梁端部の定着、スターラップの密度変化、吊り筋(スラブ支持)の有無。スリーブや開口近傍の追加補強も重要です。端部は継手禁止帯の確認を徹底します。
スラブ:配筋ピッチ、支持方法、かぶり厚。トラス筋やサポートの間隔、開口補強の巻き込みを見ます。段差部や落とし込み部の補強は写真で残します。
数値例(あくまで例):外周のかぶり厚=40mm、スラブ=30mm、梁端スターラップ=100mmピッチ、平場=150mmピッチなど。必ず図面と特記仕様で確認し、現場の数値を優先します。
注意点:安全・工程・コミュニケーション
安全は先回りです。高所では三点支持での移動、開口部には先行手すりと蓋を入れます。足場の踏板欠けや段差は検査前に是正します。無理姿勢での撮影はやめます。
工程は「早めの一巡」が効きます。配筋完了80%時点で先行検査をして、残り20%で深掘りします。是正を打設前日までに収めるため、期限を日付で明示します。
コミュニケーションはシンプルに。指摘は「位置・理由・要求」の3点で短く伝えます。例)G-5通り梁端、定着不足、50mm延長を本日中。感情や主観を混ぜません。
まとめ:今日から回る配筋検査
- チェックリストに根拠と写真基準をひも付ける
- 重点部を朝イチで先行確認する
- 是正はチケット化し、期限と再撮影で締める
次アクションとして、現場用の「全景→中景→寄り」撮影テンプレを班で共有しましょう。週初めに重点部の見取り図を配り、検査の流れを合わせるだけで、指摘は目に見えて減ります。
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